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おまけ「悪名高き魔女はかく語りき」
しおりを挟む────迂闊にも、似ているなと思ったのだ。
母を殺されて泣く少女に、母を殺した張本人どもが「お前が殺した」などと宣っている。
ひどく滑稽で腹立たしいその光景に、かつての自分の姿を重ねて見てしまった。
「よぉ」
意味のない、無駄でしかない呪いの言葉を吐く少女に、手を差し出して囁きかける。
「お前を貶めた奴らを、お前の母を殺した奴らを、殺しに行こうぜ」
躊躇い無く少女は私の手を掴み取った。
狂っているな。私は少女の目を見て冷静に分析する。
直接手を下したわけではないものの、母を詰り殺した島民たち。彼らに対する殺意は確固たるもので、島国が津波で沈んだそのときも、一切の後悔を見せなかった。
そして、その後の身の委ね方も異常だった。奴隷として売り飛ばすとはっきり伝えたというのに、静かに受け入れた。恩人という理由だけで、彼女は魔女である私にどこまでも律儀についてきた。
「なあラシーヌ。ここまで良い子でついてきた礼に褒美をやるよ。何がいい?」
試しにそう唆してみるも、何も要らないと微笑みを返された。
つまらない。そう思う一方でいじらしいと思ってしまう自分に嗤いが止まらない。
この私が毒されている。この娘は確かに厄持ちだと再認識した。
────ラシーヌならば、魔族領の奴らも魅了してしまうだろう。
想像しただけで可笑しくて堪らない。踊りたくなるほどに愉しくなる。
一癖も二癖もある魔族を引っ掻き回して、きっと面白いものを見せてくれるに違いない。
多大な期待を寄せて、彼女の希望通りに最安値で叩き売る。
ワケあり貴族に買い取られて連れて行かれるラシーヌを、内心で舌なめずりをしながら見送った。
「最高に面白い見世物を頼むぜ、ラシーヌ」
恍惚と嗤う魔女を横目で見ていた使い魔の竜は、人知れず溜息を吐いたのだった。
【了】
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