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プロローグ「ワケあり商品は最安値で娶られる」
しおりを挟むワケあって最安値で売られていた私を買ったのは、魔族領にお住まいの貴族様だった。
「なんだ、この生き物は」
「お前の嫁」
「はぁ!?」
「だってお前、いつまで経っても嫁探してこないんだもの。ワケのわからん疳癪で良家のお嬢さん殺されても堪んないし、仕方ないから替えの利く奴隷を買って来た。とにかく早く孫の顔を見せろ、この親不孝者」
「だからってなんで人間の女買ってくるんだよ! そこはせめて魔族にしろよ!」
「魔族の奴隷なんて居るワケ無いじゃん。同族の売買は魔王様から禁止されてんじゃん」
「奴隷じゃなくて普通にそんじょそこらの平民魔族を捕まえて来いって話だよ! 察しろ!」
「無理。お前の悪評が轟きすぎて誰に声かけても顔真っ青にさせて拒否られたんだよ。300件回りに回って心折れたわ」
「300件!?」
コントだ。見ていて楽しい。
半ばというかほぼ全力で現実逃避をしていたら、旦那様(仮)と目が合った。
綺麗な赤色。浅い知識に間違いが無ければ、あれは臙脂色というやつではないだろうか。畏れ多い高貴の色だ。
「おい、奴隷」
「はっ、はい!」
「何か変なことしたら殺すからな」
「……分かりました!」
ああ、今すぐ返品してくれないかな。
元気よく決死の返事をしながら、眦からちょっぴり涙がこぼれてしまった。
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