The Doomsday

Sagami

文字の大きさ
上 下
2 / 103
Too late

0: 過ぎ去りし日の記憶 水無月トオルの場合1

しおりを挟む
ハッ
規則正しく、力をこめて竹刀を振る。
打ち込みを始めて30分ほどだろうか、足元は汗で濡れている。
日々の日課、剣道部の朝錬。最後の大会が終わり自分たちが練習する意味はあまりない。大会は1回戦負け、いつものことだ。
正式な部員は自分とタツマだけ、他は助っ人にすぎない。
「しっかし、よくやるねぇ」
胴着を着たタツマは呆れ声だ。律儀な悪友は自分に付き合って朝錬に来ている。
もっとも、開始10分で壁にもたれ欠伸をしているが。
「兄さんは、真面目ですから」
タツマにタオルを手渡しながら、アマネが笑みを浮かべる。
自慢の妹、文武両道、唯一の家族。
実の両親は物心つく頃にはいなかった。
遠縁に当たるという人が月々の仕送りをしてくれ、何とか生活をしている。
「奨学金のためか?」
タツマに以前問われたことがある。
「半分正解だな」
もう半分は、妹を守るため。
両親が居ないという特異性、苛められていた小学生の妹を守ろうとして守れなかった苦い記憶。
どうやって解決したのかは覚えていない。
ただ、守れなかった後悔だけが残っている。
「これが、どこまで役に立つかはわからないけどな」
呟き、竹刀を再び振る。
「ところでアマネちゃん、生徒会にはまだ行かなくても?」
「はい、まだ時間はありますし」
武道館の壁に掛かった時計を一瞥する。
そろそろ切り上げるか。
「兄さん、どうぞ」
「ありがとう、アマネ」
タオルを受け取り、笑みを向ける。
「相変わらず仲がよろしい事で」
タツマが苦笑を浮かべる。
「アマネちゃんがお嫁に行ったら、発狂しそうだなお前」
「五月蝿い」
軽く竹刀で、親友の頭を叩く。
アマネが結婚か、いつかはそんなこともあるのか、そのときは幸せな家庭を築いて欲しいと思う。
そして、伴侶と共に幸せに老いて行って欲しい。
「どうかしましたか、兄さん?」
アマネが不思議そうに首をかしげる、兄の欲目ではあるだろうが可愛い限りだ。
思わずアマネの方を見続けていたようだ。
「いや、何でもないよ。アマネ」
その幸せな未来のためには、何だってする。
それが俺の唯一の存在理由なのだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...