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穴
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穴を、掘っている。
何の為にそうしているのか、何時までそうしているのか、何ひとつ定かではない。
それでも、男は穴を掘り続けている。
何度も何度も泥を掻き分けていると、時折妙な物を見つける事がある。
山鳥の爪。縞栗鼠の首。野犬の尾。
それらを見つける度に、何かに近づくような。それでいて、何かを忘れてしまうような。そんな不思議な心地だった。
男は、穴を掘っている。
ここは何処だっただろう。
見慣れた自宅の庭だったような。それとも何処か遠くの山だったような。
いずれにせよ、私は掘り続けなくてはならない。
そうでなくては、許されないのだから。
そうだ。許されなくてはいけないのだ。
一体、誰に?
分からない。分からないから、手を止める事が出来ない。
私は、穴を掘っている。
また、何かを見つけたようだ。
それは、古びた機械のようだった。土の中に埋まっていたにも関わらず、汚れひとつなく、妙にぴかぴかと輝いている。
これは一体、何の機械なのだろうか。
私がそれを見つめていると、不意にそれが口をきいた。
「誰かいますか」
私は何も答えなかった。此処には私以外、誰も居ないから。
それきり機械は話さなくなった。
いつの間にか雨が降っていた。機械は壊れてしまったのだろうか。
いずれにせよ、私には関係のない話だった。
穴を、掘っている。
こうして続けていれば、また何かを見つけられるだろうか。
何か。誰か。
そうだ。私は、誰かを探しているのかもしれない。
きっとこの土の下に居るのだ。私が求める“誰か”が。
私はようやく、目的を見つけた。
土を掻き分ける。この土の下から見つけ出すのだ。私の、私だけの……
穴を、掘っている。
男は期待に濁った目を輝かせ、何度も何度も泥の中に手を伸ばす。
その傍らには、呼びかけ続ける声があった。
誰かいますか。
誰かいますか。
誰か……
何の為にそうしているのか、何時までそうしているのか、何ひとつ定かではない。
それでも、男は穴を掘り続けている。
何度も何度も泥を掻き分けていると、時折妙な物を見つける事がある。
山鳥の爪。縞栗鼠の首。野犬の尾。
それらを見つける度に、何かに近づくような。それでいて、何かを忘れてしまうような。そんな不思議な心地だった。
男は、穴を掘っている。
ここは何処だっただろう。
見慣れた自宅の庭だったような。それとも何処か遠くの山だったような。
いずれにせよ、私は掘り続けなくてはならない。
そうでなくては、許されないのだから。
そうだ。許されなくてはいけないのだ。
一体、誰に?
分からない。分からないから、手を止める事が出来ない。
私は、穴を掘っている。
また、何かを見つけたようだ。
それは、古びた機械のようだった。土の中に埋まっていたにも関わらず、汚れひとつなく、妙にぴかぴかと輝いている。
これは一体、何の機械なのだろうか。
私がそれを見つめていると、不意にそれが口をきいた。
「誰かいますか」
私は何も答えなかった。此処には私以外、誰も居ないから。
それきり機械は話さなくなった。
いつの間にか雨が降っていた。機械は壊れてしまったのだろうか。
いずれにせよ、私には関係のない話だった。
穴を、掘っている。
こうして続けていれば、また何かを見つけられるだろうか。
何か。誰か。
そうだ。私は、誰かを探しているのかもしれない。
きっとこの土の下に居るのだ。私が求める“誰か”が。
私はようやく、目的を見つけた。
土を掻き分ける。この土の下から見つけ出すのだ。私の、私だけの……
穴を、掘っている。
男は期待に濁った目を輝かせ、何度も何度も泥の中に手を伸ばす。
その傍らには、呼びかけ続ける声があった。
誰かいますか。
誰かいますか。
誰か……
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