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白い肌の一族へ

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 早速、翌日にラルフは白い肌の一族とやらのいる場所へ行くことにした。
 ちなみにタリアとは同じ家で眠ったけれど、特に何もなかった。ラルフも多少疲れていたのもあったし、今まで森の中で雑魚寝をしていたために、久しぶりに屋根のある場所で休めることが嬉しく、ぐっすり眠ってしまった。
 そして、今タリアはラルフの前で、白い肌の一族のところへの道案内をしてくれている。
 もっとも、言い出したときから不満そうだったし、現在も乗り気ではないのだが。

「ラルフ、どうしてィフゥ白い肌の一族エティフゥ・ニクス・エビルト会いたいテェム・ツナゥ?」

「ん……テェム・ツナゥ……会う、欲しい、だから、会いたいってことか? えーと……何て説明すれば通じるんだろ」

白い肌の一族エティフゥ・ニクス・エビルト弱い戦士カエゥ・レイドロス
 ラルフは強い戦士グノルツス・レイドロス
 会わなくてもいいテェム・オン・ドォグ

「いや、戦士だから会うとかじゃなくてだな……」

 ある程度、彼らの言語は習得した。
 だけれど、その言語において『同じ国から来た人かもしれないから会ってみたい』とタリアに伝えるのは、現在のラルフの技量では無理なのだ。そもそも、タリアたちに国という概念があるのか分からないし。

白い肌の一族エティフゥ・ニクス・エビルトこっちシフト

ああセイありがとうゥオィ・クニフト

タェム渡すドナゥ
 今回エミト・シフト葉と実ファエル・ツンいらないデェン・オン

「タェム……ああ、抱えてる肉を渡すってことか。しかし、割と食い込むんだよなこれ……」

 ラルフが背負っている籠――木の蔓で作られたそれには、生肉がどっさりと入っている。
 重さ自体は大したものではないのだが、木の蔓で作られているため肉に食い込んでくるのだ。
 こういうのは、手懐けたエソン・グノルに運んでもらうのが良かったのだが――。

「さすがに、象は山には入れないもんなぁ」

「……? ラルフ、タフゥ?」

「いや、こっちの話……ええと、何でもグニフトンないオン

「……?」

 不思議そうに、こちらを見てくるタリア。
 ちなみにエソン・グノル――『ジャック』と名付けた彼は、現在東の獅子一族の集落に飼われることとなった。象は知能が高いという話――眉唾物として聞いたそれは本当だったようで、特に抵抗することもなくラルフの言うことを聞いてくれる。
 今朝起きたときも、ちゃんと集落の近くにいた。そして長老曰く――分かりやすく解読してくれたのはタリアだが――エソン・グノルが一頭集落の前を縄張りにすると、他の危険な獣が近付いてこなくなるらしい。本来はエソン・グノルも災害のようなものであるため、住み着いたら集落を移さねばならない事態らしいが、ジャックはラルフに従っている存在であるため、丁度いい番犬のような役割になったのだ。
 もっとも、その代わりに集落の男衆が、ジャックの食べ物を大量に取ってこなければならなくなったらしいが。

「ジャック、大丈夫ッラ・トフギル? 部族エビルト殺すルリクないオン?」

「ジャックは大丈夫ッラ・トフギル
 ラルフに忠誠を誓っているィトラヨル・ラエゥス・エブ
 鼻長はエソン・グノル己の認めた戦士だけエノ・ティムダ・レイドロス・ィルノ背中に乗せるというクキャブ・エディル・ヤス。ラルフは認められたティムダ・エブ

「……とりあえず、大丈夫だって認識でいいのか? 根拠が分からん……」

 タリアとの会話でさえ、これだけ苦労する。より難解な長老の言葉など、全く分からない。ラルフが願うのは、これから会う白い肌の一族がラルフの同郷で、ラルフの言葉が通じるかつタリアたちの言葉をほぼ理解している存在であることだ。
 もっとも、そんなに都合の良いことはないだろうけれど――。

「ラルフ、そこタフト白い肌の一族エティフゥ・ニクス・エビルト

「お……ああ、あそこ?」

そうセイ
 白い肌の一族はエティフゥ・ニクス・エビルト木を切って森を拓きエェルト・ツク・トセロフ・ネポ別の物を植えるレフト・グニフト・トナルプ
 葉と実を世話しファエル・ツン・エラク採取しレフタグ東の獅子一族に来るツナゥ・ノイル・エビルト・エモク
 だからオス交換しているエグナフク・エカム

「……」

 思わず、ラルフは言葉を失った。
 巨大な獣たちが闊歩し、人間が居場所を追われる、この原始的な島。武器といって出されたものが石器や骨器、挙げ句には石の棍棒くらいしかない、この島で。
 そこに――畑が、あった。

「畑……」

「……? ラルフ?」

「やっぱり、白い肌の一族は、農耕をしている……」

 そして、そんな畑で作業をしている老人が一人と、少女が二人。
 どちらも日に焼けてはいるものの、褐色肌のタリアと比べれば、その肌は白い。
 どう考えても彼らが――白い肌の一族。

おいィエフ! 白い肌の一族エティフゥ・ニクス・エビルト!」

 そんなラルフの衝撃など、全く気にしないとばかりにタリアがそう声を上げ。
 びくっ、と老人が肩を震わせてから、こちらを見てきた。
 特にタリアは気にすることなく、ずいずいと歩いて老人たちのところへと歩き。

「……東の獅子一族ツサェ・ノイル・エビルト? 何故ィフゥここにエレフ?」

集落にエガッリヴ鼻長の肉がエソン・グノル・タェム大量にある・ィナム・エブ
 長老がレドレ少し分けてやれとウェフ・エディヴィド・エヴィグ
 今回エミト・シフト葉と実はいらないファエル・ツン・デェン・オン
 肉だけ受け取れタェム・ィルノ・テグ

「……あちらの男性はタフト・ナム・ォフゥ?」

我々の新しい族長だエゥ・ウェン・エビルト・レダエル
 彼はエフ鼻長を七匹もエソン・グノル・ネヴェス倒した偉大な戦士だンウォド・タェルグ・レイドロス
 失礼なことをトセプセルシド言わないように・グニフト・ヤス・オン

分かりましたドナツスレドヌ

 流暢に喋っているが、当然ラルフには何を言っているのか分からない。
 ただ、「肉」という言葉だけは分かったから、とりあえず肉を運んできたことは伝えたのだろう。
 背中の籠を持ち直し、ラルフもまた老人たちのところに近付く。
 そうすると、その向こう――随分と広く、畑があった。そして、それぞれ作業をしている人間たちが見える。
 こほん、とラルフは軽く咳払いをして――。

「……えーと。俺の言葉、分かるか?」

「――っ!!」

「分かる、のか……?」

「おめさ……帝国の……?」

 そう答えた老人の言葉は、間違いなくラルフと同郷のもの。
 激しい訛りはあるけれど、なんとか聞き取ることはできる。その事実に、ラルフは心中だけで喝采を上げた。
 初めて、この島に来て、言葉が通じる相手に出会えた。
 それだけで、心から感激してしまう。

「えーと……俺は、数日前にここに来たばかりなんだ」

「そ、そうなんけ……? な、何故……」

「少し、話をさせてほしい」

 戸惑っている老人。
 そして、不思議そうな目でそんな老人とラルフを見るタリア。
 怯えている、二人の白い肌の一族の少女。

「とりあえず、焼き肉でも食わないか?」

 そう、背中の肉を示し。
 そんなラルフの言葉に対して、老人が微笑を浮かべた。
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