15 / 57
目的地へ
しおりを挟む
本当にこの地点には茸の化け物――マタンゴしか出現しないようで、時折襲いかかってくるマタンゴをヒルデガルトが蹴り飛ばし、爆散させては大量の胞子が飛ぶ、そんな繰り返しだった。
ウィルはひたすら自分の口元をハンカチで押さえながら、ヒルデガルトの後ろをついていく。先程の第一地点――草原と比べて、こちらは森のような場所だ。複雑に生えている木々の間を獣道が走っているような、少し離れただけでヒルデガルトを見失うのではないかと思う環境である。
そして、ヒルデガルトとはぐれたら間違いなく死ぬ――その未来が分かっているからこそ、ウィルは必死にその後ろをついて行くのだ。
「さて……目的地はもうすぐだよ」
「う、うす……」
ヒルデガルトは後ろを振り返ることなく、しかしウィルがちゃんと追ってきていなければ、少しばかり速度を落とす程度の優しさを見せてくれる。その優しさを、もう少し最初から出してくれないものかと思ってしまうけれど。
しかし、そんなヒルデガルトの優しさもあって、ウィルもある程度周囲の状況に気を向ける程度の余裕はできていた。
例えば、この森――マタンゴはそれこそどこからでも出現するが、それよりも妙に茸ばかり生えているな、とか。
「第二階層の第二地点は、茸の楽園さ。マタンゴはそこら中にいるし、ポイズンマタンゴもたまにいる。ハイマタンゴもマタンゴキングも稀に見かけるが、今日は出ないね」
「……マタンゴ、そんなにいるんすか」
「逆に言や、ここを超えればもうマタンゴは出ないよ」
「……それは、ありがたい情報っす」
ずっと鼻と口を覆い続けるのも、正直息がし辛くなってきたところだ。
これが戦闘中なんかであれば、もっと息が苦しくなるだろう。そう考えれば、次の地点からハンカチを外すことができるという情報はありがたい。
もっとも、次の地点は次の地点でまた何か問題があるんだろうなぁ、とは予想しているのだが。
「でも、茸めちゃくちゃ多いっすね。何か、希少な茸とかあるんすか?」
「この地点の茸には触んな。というか、マタンゴしか出ないここは、狩りをするにも実入りがしょっぱいんだよ。せいぜい胞子くらいしか手に入れらんない場所で、誰が好んで狩りをするもんかい。それに加えて、ここに自生してる茸は全部毒入りだ。さっさと冥土に行きてぇってんなら、止めやしないよ」
「……毒あるんすか」
「即死級の毒もあれば、幻惑系の毒もある。あたしの知ってる馬鹿が一人、ここの茸を食べたことがあったけどねぇ……そいつは三日三晩、笑い転げながら踊ってたよ」
「……」
絶対に食べないでおこう。そう誓った。
「まぁ、食料が尽きたときには、素直に戻るのが一番さ。絶対に大迷宮のものを口に入れんな。死にたくなけりゃね」
「うす。気をつけます」
「いい返事だ」
にやっ、とヒルデガルトが笑みを返す。
しかし、三日三晩も笑い転げながら踊ったとは、どんな毒なのだろう。そして、ヒルデガルト曰くその知ってる馬鹿は、今でも生きているのだろうか。
「さて、ここが目的地だ」
「うす」
少し前から見えてはいたが、やはり大迷宮の第二階層は区画ごとに壁で遮られているらしい。
恐らく天井が光っているのは、先の第一地点と同じくヒカリゴケが自生しているからなのだろう。しかし第二地点は鬱蒼と茂る森であり、至る所で降っている雪――胞子のせいで、少しばかり薄暗く感じるほどだ。そのため、ウィルの目が壁を視認したのは、つい先程だった。
第一地点と変わらず、そこにはやはり聳え立つ壁と、そこに金属でできた扉がある。
「第二階層は、何地点まであるんすか?」
「第二階層も、第一階層と同じく第十地点までさ。第三階層はもうちょい短くて、第八地点までしかない。第四階層になると割と長くて、第十八地点まであるね」
「うげぇ……」
ヒルデガルト曰く、第四階層は地獄の具現。
それが第十八地点――もう、ウィルには想像すらできない領域の長さだ。
しかも第十八地点が最奥ということは、恐らくそこが火龍イストリアとやらが根城にしていた炎の沼なのだろう。炎の沼と聞いても、全くぴんとこないけれども。
「さて……まぁ、依頼の場所はここだ。ようやくあたしも、足手まといを守る役目から解放されるよ」
「第三地点のどこにいるかは聞いてないんすか?」
「そいつは分からんよ。ギルドだって、ハンターがどこにいるのかは把握してない。第三地点までって申請して、帰ってこなかったから第三地点まで探しに行くのさ。先走ったハンターの場合、亡骸が次の地点で見つかることもあるよ」
「……なるほど」
確かに、ウィルも第二地点までと申請しておいて、第五地点まで行ってたし。
そう考えると、この広大な大迷宮を隅から隅まで探す羽目になるのではなかろうか。
さすがにヒルデガルトといえ、ハンターの場所までは――。
「ああ、いるね。第三地点の中央あたりに三人組だ」
「……なんで分かるんすか」
「そりゃ、お前さんと比べりゃ年季が違うよ」
「……」
そういう問題じゃないと思う。
どうして扉もまだ超えてなくて、壁の向こうに広がる迷宮にいる、三人組の気配が分かるというのか。
相変わらず凄まじいババアの謎パワーである。
「んじゃ、行くよ」
「うす」
第一地点と同じく、ヒルデガルトが扉を蹴り飛ばす。
鍵のようなものの見当たらない。押して開く扉だ。だけれど、恐らくその重さは尋常でないのだろう。ヒルデガルトの蹴りと共に、ぎぃっ、と振動してゆっくりと開き始めた。
そして、もう何度ウィルは驚かされるのだろう。
「ったく、第三地点はあたしも嫌いな場所なんだよ。歩きにくいからねぇ」
「ほんと、大迷宮ってどうなってんすか……」
扉の向こうに見えた第三地点――そこは、まるで密林のような様相だった。
開いただけでむわっとした蒸し暑さが襲ってくるほどに、温度が違う。マタンゴの胞子が飛び交うような場所よりはマシかもしれないが、それでもヒルデガルトが『大陸が違う』と称した意味がよく分かるほど、もうウィルの知っている景色ではない。
むしろこれは、もっと南の方の気候なのではないか。
「行くよ」
「うす」
扉を潜るヒルデガルトに追随して、ウィルも扉を抜ける。
それと共に、意思を持っているかのように扉が自動的に閉まった。本当に、この大迷宮はどんな過程を経て作られたのだろうか。
「ああ、小僧。ちょいと危険な目に遭うかもしれんが、ちゃんと助けてやるから安心しな」
「……へ?」
「ここの魔物は、待ち伏せしてくる奴が多くてね。あたしの察知になかなか引っかからないのさ。まぁ、姿が見えりゃ助けてやるから――」
そう、ヒルデガルトが言った瞬間に。
ウィルの視界が、そのまま百八十度反転した。
「――――っ!!」
片足に何かが巻き付くと共に、空に引き上げられたと理解したその瞬間に。
まるで罠にでもかかったかのように、片足で宙づりにされてしまっていた。それでも右手に持ったヒルデガルトの革袋とコート、左手に持ったハンカチを落とさなかった自分を褒めてやりたい。
ただ、ヒルデガルトが遥か眼下に見えるほどの高さ。
「ひっ、ひぃぃぃっ!?」
「早速の歓迎だねぇ。ま、安心しな。すぐに助けてやるよ」
「グォォォォォォッ!!」
そして、恐らくウィルの体を吊り上げたのだろう張本人。
大地を割るかのように現れた巨大な樹木――魔人樹を相手に、ヒルデガルトは不敵に笑みを浮かべた。
ウィルはひたすら自分の口元をハンカチで押さえながら、ヒルデガルトの後ろをついていく。先程の第一地点――草原と比べて、こちらは森のような場所だ。複雑に生えている木々の間を獣道が走っているような、少し離れただけでヒルデガルトを見失うのではないかと思う環境である。
そして、ヒルデガルトとはぐれたら間違いなく死ぬ――その未来が分かっているからこそ、ウィルは必死にその後ろをついて行くのだ。
「さて……目的地はもうすぐだよ」
「う、うす……」
ヒルデガルトは後ろを振り返ることなく、しかしウィルがちゃんと追ってきていなければ、少しばかり速度を落とす程度の優しさを見せてくれる。その優しさを、もう少し最初から出してくれないものかと思ってしまうけれど。
しかし、そんなヒルデガルトの優しさもあって、ウィルもある程度周囲の状況に気を向ける程度の余裕はできていた。
例えば、この森――マタンゴはそれこそどこからでも出現するが、それよりも妙に茸ばかり生えているな、とか。
「第二階層の第二地点は、茸の楽園さ。マタンゴはそこら中にいるし、ポイズンマタンゴもたまにいる。ハイマタンゴもマタンゴキングも稀に見かけるが、今日は出ないね」
「……マタンゴ、そんなにいるんすか」
「逆に言や、ここを超えればもうマタンゴは出ないよ」
「……それは、ありがたい情報っす」
ずっと鼻と口を覆い続けるのも、正直息がし辛くなってきたところだ。
これが戦闘中なんかであれば、もっと息が苦しくなるだろう。そう考えれば、次の地点からハンカチを外すことができるという情報はありがたい。
もっとも、次の地点は次の地点でまた何か問題があるんだろうなぁ、とは予想しているのだが。
「でも、茸めちゃくちゃ多いっすね。何か、希少な茸とかあるんすか?」
「この地点の茸には触んな。というか、マタンゴしか出ないここは、狩りをするにも実入りがしょっぱいんだよ。せいぜい胞子くらいしか手に入れらんない場所で、誰が好んで狩りをするもんかい。それに加えて、ここに自生してる茸は全部毒入りだ。さっさと冥土に行きてぇってんなら、止めやしないよ」
「……毒あるんすか」
「即死級の毒もあれば、幻惑系の毒もある。あたしの知ってる馬鹿が一人、ここの茸を食べたことがあったけどねぇ……そいつは三日三晩、笑い転げながら踊ってたよ」
「……」
絶対に食べないでおこう。そう誓った。
「まぁ、食料が尽きたときには、素直に戻るのが一番さ。絶対に大迷宮のものを口に入れんな。死にたくなけりゃね」
「うす。気をつけます」
「いい返事だ」
にやっ、とヒルデガルトが笑みを返す。
しかし、三日三晩も笑い転げながら踊ったとは、どんな毒なのだろう。そして、ヒルデガルト曰くその知ってる馬鹿は、今でも生きているのだろうか。
「さて、ここが目的地だ」
「うす」
少し前から見えてはいたが、やはり大迷宮の第二階層は区画ごとに壁で遮られているらしい。
恐らく天井が光っているのは、先の第一地点と同じくヒカリゴケが自生しているからなのだろう。しかし第二地点は鬱蒼と茂る森であり、至る所で降っている雪――胞子のせいで、少しばかり薄暗く感じるほどだ。そのため、ウィルの目が壁を視認したのは、つい先程だった。
第一地点と変わらず、そこにはやはり聳え立つ壁と、そこに金属でできた扉がある。
「第二階層は、何地点まであるんすか?」
「第二階層も、第一階層と同じく第十地点までさ。第三階層はもうちょい短くて、第八地点までしかない。第四階層になると割と長くて、第十八地点まであるね」
「うげぇ……」
ヒルデガルト曰く、第四階層は地獄の具現。
それが第十八地点――もう、ウィルには想像すらできない領域の長さだ。
しかも第十八地点が最奥ということは、恐らくそこが火龍イストリアとやらが根城にしていた炎の沼なのだろう。炎の沼と聞いても、全くぴんとこないけれども。
「さて……まぁ、依頼の場所はここだ。ようやくあたしも、足手まといを守る役目から解放されるよ」
「第三地点のどこにいるかは聞いてないんすか?」
「そいつは分からんよ。ギルドだって、ハンターがどこにいるのかは把握してない。第三地点までって申請して、帰ってこなかったから第三地点まで探しに行くのさ。先走ったハンターの場合、亡骸が次の地点で見つかることもあるよ」
「……なるほど」
確かに、ウィルも第二地点までと申請しておいて、第五地点まで行ってたし。
そう考えると、この広大な大迷宮を隅から隅まで探す羽目になるのではなかろうか。
さすがにヒルデガルトといえ、ハンターの場所までは――。
「ああ、いるね。第三地点の中央あたりに三人組だ」
「……なんで分かるんすか」
「そりゃ、お前さんと比べりゃ年季が違うよ」
「……」
そういう問題じゃないと思う。
どうして扉もまだ超えてなくて、壁の向こうに広がる迷宮にいる、三人組の気配が分かるというのか。
相変わらず凄まじいババアの謎パワーである。
「んじゃ、行くよ」
「うす」
第一地点と同じく、ヒルデガルトが扉を蹴り飛ばす。
鍵のようなものの見当たらない。押して開く扉だ。だけれど、恐らくその重さは尋常でないのだろう。ヒルデガルトの蹴りと共に、ぎぃっ、と振動してゆっくりと開き始めた。
そして、もう何度ウィルは驚かされるのだろう。
「ったく、第三地点はあたしも嫌いな場所なんだよ。歩きにくいからねぇ」
「ほんと、大迷宮ってどうなってんすか……」
扉の向こうに見えた第三地点――そこは、まるで密林のような様相だった。
開いただけでむわっとした蒸し暑さが襲ってくるほどに、温度が違う。マタンゴの胞子が飛び交うような場所よりはマシかもしれないが、それでもヒルデガルトが『大陸が違う』と称した意味がよく分かるほど、もうウィルの知っている景色ではない。
むしろこれは、もっと南の方の気候なのではないか。
「行くよ」
「うす」
扉を潜るヒルデガルトに追随して、ウィルも扉を抜ける。
それと共に、意思を持っているかのように扉が自動的に閉まった。本当に、この大迷宮はどんな過程を経て作られたのだろうか。
「ああ、小僧。ちょいと危険な目に遭うかもしれんが、ちゃんと助けてやるから安心しな」
「……へ?」
「ここの魔物は、待ち伏せしてくる奴が多くてね。あたしの察知になかなか引っかからないのさ。まぁ、姿が見えりゃ助けてやるから――」
そう、ヒルデガルトが言った瞬間に。
ウィルの視界が、そのまま百八十度反転した。
「――――っ!!」
片足に何かが巻き付くと共に、空に引き上げられたと理解したその瞬間に。
まるで罠にでもかかったかのように、片足で宙づりにされてしまっていた。それでも右手に持ったヒルデガルトの革袋とコート、左手に持ったハンカチを落とさなかった自分を褒めてやりたい。
ただ、ヒルデガルトが遥か眼下に見えるほどの高さ。
「ひっ、ひぃぃぃっ!?」
「早速の歓迎だねぇ。ま、安心しな。すぐに助けてやるよ」
「グォォォォォォッ!!」
そして、恐らくウィルの体を吊り上げたのだろう張本人。
大地を割るかのように現れた巨大な樹木――魔人樹を相手に、ヒルデガルトは不敵に笑みを浮かべた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる