精霊宿る人々の有り様

 万を超える年月を経て、雲を突き抜けた大樹〝万年樹(まんねんじゅ)〟の根が張る大地。
 その大地で生きる人々は、自己の価値を守護する精霊(せいれい)の霊力(れいりょく)だけで計っていた。
 それに変化が訪れたのは、今から二百年前の話……。

 『命あるモノはそれぞれ異なる精霊に守護されている』という知恵は精霊を信仰する人々が根付かせた。
 精霊を信仰する人々の多くは『生物の格は身に宿す精霊の霊力で決まる』そして『己より霊力の高い物には敵わない』と教わった。
 そこから生まれた思想が『生物の序列は霊力の程度で決まる』という霊力至上主義(れいりょくしじょうしゅぎ)。
 霊力はA>B>C>D>Eの位(ランク)で大きく区分されている。
 E位の猫がA位の鼠をひっかいてもA位の鼠は傷つかないが、A位の鼠がE位の猫をひっかいたらE位の猫は傷つく事から、霊力は自然と序列を決める要素になった。

 霊力が高いほど強いのは正しくても、鍛錬や勉学を怠けた者は真面目に学び鍛えた者に劣る。
 それは、時として、霊力の優劣と相反する結果を起こした。
 その結果から生まれた『霊力の程度は人々の序列を決める唯一の要素ではない』という思想を掲げ、建国された千王国(せんおうこく)は『人命の価値は等しい』とする思想を二百年もの間、守り続けている。


 これは千王国の国立学校に在学する怠惰な少女が見ている人々の有り様。ただそれだけの話。


※フィクションですから、現実と混同しないでください。
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