上 下
53 / 173
第3章 (元)魔王と勇者は宇宙樹の種子と

14話2Part 大悪魔と堕天使の話し合いはここで終わるのか...?本編第2章本格スタートです!

しおりを挟む
 

「......五月蝿いなもう......」

「うるさいなじゃないよ!!そんなに考え込んでどしたの!?聞きたいことがあるならもっと手短で単刀直入に......」

「わ、わかったよ......あと1つだけお前に聞きたいことがある」

「......なに?」


 未だ不機嫌そうに瑠凪の方に視線を向ける葵雲に、瑠凪は本日最後の質問をした。


「......お前はフレアリカとその両親......を殺した?」


 ......それは大昔、瑠凪が1代目魔王·サタンから告げられた言葉の確認の意を持っていた。


 ───────『あの幼女の仇は、お前の"大事な友達"だぞ』


 その言葉を告げられた当時は瑠凪はほとんど眠っていて何を言われたのかなどははっきりとは覚えていなかったし、そこまで大事な事も言っていなかっただろうと流していた。

 しかし皆にフレアリカのことをよく知ってもらう、そして何より自身がフレアリカという"宇宙樹ユグドラシル天界の所有物"の果実があそこまで完璧に寄生出来た少女の出自と最後を確認するために、フレアリカとサタンの記憶を何とか復元して3人称視点で流した時に内容をはっきり確認した。

 フレアリカという名の少女は聖銃の暴発、または誤発で死亡。その母親は流すとして、父親である聖銃勇者 カレブ·K·レヴグリアは"レヴィアタンとの戦闘で惨殺された"事になっている。しかしサタンは瑠凪の"大事な友達"......つまり"アスモデウス"の手によってカレブは殺されたと言っていた。

 ......これまでもが矛盾している。葵雲がやってきた事の周りは全て"矛盾"という一見は弱そうな、でも誰も超えることの出来ない強固な壁で囲まれているのだろうか。瑠凪は深く考えて未だに言葉を紡がずにいる葵雲の言葉の続きを待った。


「............いや?殺してないけど......」

「っ......」


 葵雲の返答に瑠凪は思わず息を呑んだ。軍の記録よりも目の前の"大事な友達"や今は故人となっているであろう"大切な人"の言うことの方が信じてしまう、信じてしまいたくなるのは当たり前だ。でも......

 ......その"大事な友達"と"大切な人"の言うことが相違している、相違してしまっている。

 2人とも、両方のことを信じたいのに......サタンの言うことを信じて"フレアリカはアスモデウスに殺された"事にしてもいい。でも葵雲の言うことを否定はしたくないし、かといってサタンの言うことも否定したくない......

 念には念を押して瑠凪は葵雲に再度確認したが、答えは分かりきっていた。


「............本当に?」

「本当に」

「......っ、なら、お前は一体......」

「僕は魔王軍最高火力で"空天の覇者"の、凶獣族頭領 アスモデウスだよ?」

「そう、だよね......」


 しかしその答えが改めて音に、そして葵雲のしっかりとした意思になっていざ自身の前に啓示されると、やはりそうなのだろうと今まで以上に意識してしまう。そしてそれが肩に重くのしかかり、思わず座り込んで俯いてしまった。

 ......ねえ、僕はどうしたらいい?どっちを信じればいい?

 そう頭の中で、今は亡き"大切な人"に聞いても答えなど返ってこない。それでもやっぱり問いかけてしまう。頭の中で自問自答しては"まあいっか"と一旦は流すのだが、肩に重くのしかかった"矛盾点"という小さくて大きな問題は現実を真表にはっきりと映し出して現実逃避などする余裕もない。


「......うー、なんからしくないよ?元気だして!!」

「え、うん......」


 ......と、そんな瑠凪の様子に、葵雲は元気づけようと周りをくるくる回ってはあーとかうーとか言ってひょこひょこ動き回っている。......視界の中でひょこひょこ動く葵雲の幼稚でいといけない動作に自然と頬がほころんでいくのが分かった。

 人間相手に名前を言っただけで大抵の人間はガタガタ震えだして、酷い時には失神やら慌てすぎて怪我したりする奴もでちゃうくらい恐れられている悪魔が、こんなガキっぽくていいのかよ?と考え込んでいたことが馬鹿馬鹿しくなってくる。


「ほらほらぁ~、望桜が帰ってきたら心配するでしょ?いつも通り憎まれ口をたたいてればいいの!」

「な、なんか軽くディスられ......」

「ディスってないよ!!まあ重い課題は少なくとも日本にいる間は肩からおろして、一緒にから揚げ食べに行こ!!」

「はあ......まあいっかぁ」


 瑠凪は気分転換のために大きくため息をつくと、


「......よし、葵雲は今日どこ行きたい?」


 そう葵雲に声をかけた。葵雲はそれを聞いて直ぐに歎声をあげて飛び跳ねた、全身で喜びをありありと表現している。


「ニッシーの唐揚げ屋さん!!」

「わかった。ここからだと......三宮店ね、買ったらすぐ店出て近くの公園で食べよう。東遊園地でいいだろ?」

「うん!!!」

 ────────『暗すぎるのは、お前らには似合わねえよ』

「っ!......」


 ......ふと誰かの声が聞こえ、瑠凪は勢いよく振り返った。しかし間違いない、あいつの声だ......と視線をぐるぐるとさせて姿はないかと探してみるが"大切な人"の姿は見受けられなかった。

 それは葵雲の心配そうな顔が眼前に覗き込むまで続いていた。


「瑠凪?どしたの?」

「今、あいつの声が......」

「誰も何も言ってないけどなぁ......あ、窓閉めとかないと的李に怒られる」


 そう言って急いで窓を締めに行く葵雲の姿を後目に、瑠凪はとりあえず財布内の残金を確認しほっとため息をついた。



 ───────────────To Be Continued──────────────



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

処理中です...