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本編

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 ダークエルフ…。かつて仲間だった、神々のことを裏切り堕とされた者達の称号。既に子孫もいて、代は代わっても許されざるもの。

 神々に頼んで、生き返りの魔法を使うに当たり、排除される者。

 私の様な神の力を借りる者にとっては、敵のような存在であり、本来であれば姿を謀り、私達の事を裏切っていたともとれなくはなえない。

「ダークエルフ……?」

「そんな……」

「ヘルメスを生き返らせる方法はないの?」

 大事な仲間だったのだから、生き返らせたいだろう。けれどそれを受け入れてくれる教会はない。

 私の目から、透明な雫が流れ出す。どうして……。騙すなら、騙し続けて欲しかった…。いつも少し居なくなるのは、肌と髪色に魔法をかけていたからなのね……。

 涙は止まらない。どんどんと熱を失っていく体に、悲しさが増して、とめどなく涙が溢れ続ける。


 泣きつかれて放心した私。遺体から離れたがらなかった、私の気持ちを優先して近くの部屋を拠点にし、ヘルメスの遺体を運び込んだ。

 時間がどれだけ過ぎたんだろう。人の気配がして振り向くと、ネーレウスが立っていた。

「ちょっとお時間いいですか?」

 こくりと頷く私に、ゆっくりと隣に座ったかと思うと彼は口を開いた。

「ずっと好きでした。貴女が泣いている時につけ込むみたいで申し訳ないが…。私と結婚して、こんな危険な場から足を洗ってくれないでしょうか…?」

 魅了にかかっただけでしょう? 今すぐ断ろうかと思ったけれど、その気配を感じたのか。

「明日の朝にお返事を聞かせてください」

 それだけ言うと、離れて行ってしまった。

 またしばらくして、偵察から帰ってきた、オイジュスに声をかけられた。

「少し良いだろうか?」

「なんの御用ですか?」

 私の心は疲弊していて、八つ当たりかもしれないけれどきつい言い回しをしてしまったかもしれない。

 けれど、空気も読まずに彼も言うのだ。

「俺と結婚してくれ」と。

『私にはそんな気はありません』

 そう言おうと口を開くと、「明日の朝返事をくれ!」そういい、そそくさと立ち去っていった。

 私にどうしろというのだろうか。初めて好きになった方は、ダークエルフ。生き返りの魔法を使ってくれる神々はいない人。

 だから、私との距離を取っていたのかな。特にエルフ族が、彼らを侮蔑すると言うし……。

 けれど、私が見た彼は…、不器用でも誠実で
ぶっきらぼうに見えても優しくて……。

 ダークエルフだからといって、種族だけで見捨てられる、命があっていいのだろうか。
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