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出逢い 雪視点

雪視点5★

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 僕の鳴き声とともに、木々が揺れいろんな、知り合いが飛んでくる。

「うわぁ~~!!」

 目を輝かせ知り合いを熱く見つめる樹里じゅりさん。

 呼んだ~?とばかりに、飛びながら僕に戯れる雀たち。足元まで飛んできて体を擦り寄せたり肩にとまったりする鳩。地面で尻尾をピコピコ上下するかと思えば、忍者のようにシタタタタっという素早い足取りで、僕に走り寄ってきてくれるセキレイ。

 ん? 樹里じゅりさんの瞳が輝いてるのは嬉しいけど、セキレイに釘付けすぎじゃないかな……?むむ…。
 ちょっとモヤッとしたけど、すごく嬉しそうに彼らを見てる樹里じゅりさんを見て溜飲をのんだ。

「今近くにいるのは彼らだけみたいですね…」

 そうして彼女をみてると、やはり視線はセキレイに釘付けな気がする…。

「む……、僕よりセキレイのがお好きですか!?」

 思わず我慢できなくなって詰め寄る僕。僕だって見て欲しいし、構って欲しい!いっそ僕も文鳥の姿になれば!?そんな対抗心から、姿を変えてやろうかと思ったその時。

「ふぇ?いえ、裏庭をこんな素敵な楽園にしてくれるせつくんは凄いなぁと思ってました」

「何か……、誤魔化されてる気もしますが、あなたが喜んでくれたなら良しとしましょう」

 ちょっと納得いかないけど。

せつくん、ありがとう」

 そう言って、僕の頭を撫でてくれた。なんか樹里じゅりさんの傍は幸せだ……。
 そう思いなごんでいると、聞き慣れた声が耳に響いてきた。

「せーーつ!」そういって僕に抱きつく詩紋しもんは親戚だ。鳥になるとシナモン文鳥になる。そのせいもあってか、詩紋しもんの瞳は赤い。


「可愛い……!」

 樹里じゅりさんがすごく詩紋しもんを見て頬を染めている。小声でひらひらのメイド服可愛すぎる~…とか服装も含めてお気に入りのようだ。 

詩紋しもん!この近くにいたの??」

 まぁ、話しかけない訳にもいかないので、詩紋しもんを引き剥がしながら問いかけた。


「あ、樹里じゅりさん……。こいつ仲間のあやかしの詩紋しもんです。遠縁だけど親戚筋なんだ」

「あれ?…人形ひとがたってことは、あるじ決めたの?」

 流石に一族なだけあってわかるよな。
 なるべくしてなったとも言えるけど、僕にとっては幸せな偶然だ。

「アイツラに襲われて駄目だと思ってたときに助けてくれた恩人なんだ…」

 僕らの話がわかるはずもないので、ぼんやりと話を聞き流してるふうな樹里じゅりさんのためにも早く話を変えなきゃな…。

「アイツラまだつきまとってるんだ……。せつの生み出す種は特殊だからね。これからは気をつけてね」

 そう言うと、樹里じゅりさんの方を向き、言葉を続ける詩紋しもん

せつの遠縁の詩紋しもんです。私シナモン文鳥なあやかしなの……。せつを助けてくれてありがとう!仲良くしてね…」

「私はさかき 樹里じゅりと言うの。仲良くしてね」

 挨拶する詩紋しもんを見ていたが、普段はそんなにあいつも愛想が良いわけではない。
 それなのにニコニコと微笑む詩紋しもんなにか感じるところがあるのかもしれない。
 あぁ、詩紋しもん樹里じゅりさんの持つ空気に落ちたな…、そう感じた。

樹里じゅりさん友達呼びましたけどなにかしたいことがあったのでは??」

 ハッとした顔で焦る僕のあるじも可愛かった。
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