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本編

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 手のひらがとても温かい…。心地いいな……。あれ? と思い目を開けるとレイス様の、麗しき寝顔が視界に入ってくる。ぬくもりを感じた手の方に視線を向けると、ガッシリとたくましいレイス様が手を握ってくれていた。

「起きたの?」

「はい…。私…、長い時間寝てましたか?」

 そう聞くと…。

「1時間くらいかな。可愛い寝顔を堪能させてもらったよ…」

「うぅ……」

 なんと言ったらいいのか、唸るしかできない私。


「あ…、そういえば…、父上と母上が頼みたい事があるって言ってたよ。その前に…。レイの為と料理長達が改良を重ねたパンで、腹拵えした方がいいよ」

 なんて、レモンピールとくるみのパンとパンチェッタを、アイテムバッグから取り出すレイス様。

「あ~ん」

 そう言って一口サイズにちぎったパンを、レイス様は口元に差し出してくる。

「レイス様は、そんな事しない人では…?」

 真っ赤に染まる頬から気を反らし、苦し紛れに問う。

「そうかもしれないね。だけど、レイにはしたいんだよ。駄目?」

 整ったお顔で上目遣いとか……。ずるい…です。言い返せるわけないじゃないか。好きなのに…。やっと好きになっても、迷惑かけないとわかったばかりなのに…。

「うぅぅ~…」

「それに、さっきはレイスと呼んでくれたのに……、戻ってる……!」

「うぅ…、呼び捨ては勇気がいるんです!」

「じゃあ、代わりに食べてくれるよね、はいあ~ん」

 勝てる気がしないと、仕方なく口を開けて咀嚼する。

「あ…、クルミ入り……。柔らかくて美味しい…」

「レイのレシピから、アレンジしたんだって。試行錯誤しながら作ったみたいだから、褒めてあげたら喜ぶと思うよ。ハイあ~ん」

「話の切れ間にあたり前のように、食べさせるのはどうなんでしょう、レ…イス…」

 私は頬を膨らまさせ、自分で食べれるとアピールするけど、レイス様はどこ吹く風という体だった。

「膨れてても可愛いよ」

「もう…、意地悪です…」  

 レイス様は、恋愛初心者にはハードルが高いのに、普通にあ~んどころか恋人繋ぎとかしてきそう…。

「なんかそんなキャラじゃなかったですよね……?」

「うーん。そうだな…、誰かに奪われたりしない内に、こっち見て貰わないとなって思って…」

「そうですか……」

 いままでと態度をあからさまに、変えてきているレイス様に、翻弄されている内に、お腹はそれなりに満たされた。

「まずは、ウシやニワトリの召喚かな。数匹召喚して繁殖させる案が濃厚かな。じゃあ裏庭に行こう!」

 そういったレイス様に、私の手はガッシリと恋人繋ぎされ、部屋から連れ出される。

 嬉しい反面で、『手汗とかかいてないかな…』などと、居心地悪い思いの中、ついて行った。
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