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本編

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 夕刻になった頃。
 私はまた厨房へと行く。混ぜるのをお願いして置いた料理人の皆さんとアイスを確認する。

「こちらの器も温度が変わらないのですか?」

「はい。食品の温度を保ちます」

 そう食器の確認しつつ、アイスに空気が含まれているか確かめる。

 溶け出す恐れがないことを確認して、スプーンで器に盛り付ける。念の為もう一杯ずつになるようにアイスをとって置いてもらって、料理人さん達に「残りは食べて下さい」とお願いすると嬉しそうにしつつも夕飯の準備があるので、我慢したらしい。

 先日レイス様に頂いた可愛らしいポーチの様なアイテムバッグに、アイスクリームを入れる。

「公爵家の皆さんの口に合いそうだったら、レシピお伝えしますね」

「「「「ぜひお願いします!」」」」


「ではチキンソテーとポテトサラダを作りましょう」

 見本で作ったように、チャカチャカと鶏肉の繊維を壊すようにフォークを刺し、岩塩、胡椒、ミックスハーブをつけていき、クリームシチューも温めてもらう。

 料理長さんに手伝って貰って、ハーブ、塩胡椒大体の分量を教え、作り方を伝える。
焼き方なども自身のなんとなくの拘りを伝えると驚きつつ感心していた。

 次はポテサラだ。皮付きのままのじゃがいもをやわらかく煮て、串を刺して中まで火が通ったか確認し、皮を剥く。

 なんとなく味が濃厚になる気がするのでと、火傷に気をつければ、皮剥きが楽なので昔からそうしていた。
 じゃがいもが温かい内に皮を剥き、きめ細やかになるまで潰していく。

「手伝います」

 そう言ってくれたのは、料理人のミランさんだ。頻繁に足を運んでいるうちに名前を聞いた。

 料理長がラフェルさん、メインの料理人はミランさん、クレイ、ファルトの三人いるそう。


 ミランさんのお言葉に甘えて、茹でておいた卵をみじん切りにする。

 そして玉ねぎを千切りにして水につけて、辛さを取る。

 程よく潰したじゃがいもに、前に作ったマヨネーズ、みじん切りにしたゆで卵、コーンの粒、水を切った玉ねぎを混ぜわせながら、塩胡椒で味を整える。

「オリーブオイルとかはないですよね…」

 ラフェルさんが前に取り寄せて、使い道に困ったものが残っているそうなので、クレイさんに持ってきて貰う。

「こちらです」

 持ってきてもらったオリーブオイルを味見すると、オリーブの主張が強めで、ヴァージンオイルだとわかる。癖があるだけに、使い道に困るのもわかる。私は好きだけど。

 そんな事を考えつつ、具や調味料と混ぜたじゃがいもにオリーブオイルを入れていく。

 香り付けの意味もあるし、舌触りがマイルドになるのだ。

「こちらもお皿に、葉野菜を乗せて、このポテトサラダを乗せれば完成なんだけど、飾るならキュウリやトマトといった野菜を盛り付けると華やかになると思います」

「飾り付けや焼きは任せて下さい。そろそろ着替えられて、お席につかれても良い時間では?」

 そうラフェルさんに言われ、その場を辞した。

 着替えても髪についた料理の匂いは落ちないけどなとか、まだ少し早いのになぁと思っていたのだけと…。

「お風呂の準備は出来ています」

 そうティーファさんに言われ、大人しくされるがままになっていた私だった。
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