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始まり

8【改稿】

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 美味しくクリームだらけのプリン・ア・ラ・モードもどきを頂いて家族で舌鼓をうった後、私は一人で部屋に戻ってきた。

 いつもならルカも一緒だけど、今日はやり遂げたい事があった。
 お料理をもっと楽しみたいけれど、お好み焼き用の甘いソースやらチリソースやらお醤油やお味噌など、自分で作れるとは限らない。

 お店から勝手に持ってくるわけには行かないけど、元の世界から調達する術はないか。私はそんな事を考えたわけだ。

 多分、小説で読んだ事のある、式神みたいな生物を作り出して、闇の魔法を上手く使いこなせればきっと出来るはず。式は…、私の姿に因んで文鳥とか? 喋ったり動いたりしたら可愛いなぁ。
 私本当は前世で頬黒文鳥を飼いたかったのよね。出会う機会がなかったけれど。

 名前はクロムとつけたかったなぁ。ぬいぐるみみたいにボリュームがあったら絶対に可愛い!

 イメージを固めていき、魔力を捏ね上げる。フォルムは可愛くできたと思うの! 30センチはありそうなぬいぐるみみたい!

 この子が動いて喋ったらどんなに可愛いだろう。レベル設定つけて、可愛がったらいつか褐色おショタになれば良いのに!

それは願望でしかないけれど、いつか実現したい。

 私の呪いだって、半日だけなら弾き返せてるんだもの! いつかこの子もルカと一緒に遊べる弟分にしたいなぁ。

 ぬいぐるみみたいな身体に魔力を少しずつ 少しずつ込めていく、けれど途中から魔力をグーンと吸い取られるような感覚がし、部屋が眩しい光に満たされた。

「お嬢様!?」

 漏れ出ていた光に驚いたみたいに、ルカが申し訳程度のノックをして部屋に飛び込んで来た。

 魔力を使いすぎたのか、私はシルバー文鳥の様な姿に戻り、作りかけのぬいぐるみ、もといのちのクロムの前に、佇んでいる。

「うぬー、悔しいなぁ。まだ魔力足りなかったのかなぁ……。魔力量には自信あったのに…」
「夕食まで大人しくしてるかと思えば! 何をやっていたのですか!?」

 身体に異変がないか、文鳥の姿になった私を手のひらに乗せて確認するルカ。

「とりあえずシェフに、アンジェ様は今晩の夕食はお食べになれないとお伝えしなければ……。今日はおとなしく粟穂でも食べて下さい?」

 心配の為か少しお怒り気味なルカ。

『はぁい』

 別に小鳥用のご飯も嫌いじゃないもの。
 以前はもっと、呪いの影響で鳥の姿から戻れなかったのだし、頻繁に口にしていたのだから。
 そう思い、風の魔術に乗せて言葉をルカに返す私。


あるじ…』

 ぬいぐるみみたいな、丸い形をした物から聞こえた気がする。
 眩く光った後、私の姿が呪いの姿に戻ったから、失敗したかと思ってた。頬黒文鳥の様なフォルムをした式は、普通に動いて喋っているようだ。


 私のそばへと雀やフィンチのみたいにぴょんぴょんと飛び跳ねながら、こちらへと向かって来る。魔法の1段階目は成功していたみたいだ。

『我が名はアンジェ……。式として我が命に従え。汝の名はクロム…』


 嬉しさのあまり何も考えずに契約を果たしたは良いけれど、そこからの記憶がない。魔力を使いすぎて倒れたみたいだ。

 その後。意識を取り戻し家族やルカにすごく怒られた事だけここに印しておこうかな…、はぁ。
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