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本編

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 そして時間は流れ、アレク様は、街の一つ一つ、村の一つ一つに、妖精の石像を置き、豊作の時には感謝の祈りを忘れないように指示を出した。だからといって、すべての人が精霊様に感謝する様に、なるわけではないと思う。

 だけど、確実に日々の糧に感謝する人も増えてきたのか、精霊様の声を聞く機会も増えてきた。

 試作とはいえお酒も、いろいろな種類が完成し、アレク様や、両親、セイルにミリさんにも喜んでもらい、大きなお酒の完成の祭りをする事になった。

 私自身、醤油や味噌やお酢といった未知の食材にワクワクとしていた。

 そして、私は彼の事を、やっと呼び捨て出来るようになった。

 幼めな顔を見上げると、ニコリと微笑む彼がいた。

 私より若くみえるけれど、140年も生きてる彼。彼を取り残したまま、私は年老いていくのだろうか……。そんな思いが過り、悲しくなった。

 置いていく私も、置いていかれる彼も…。

 そんな思いを振り払い、私は失敗した笑顔かも知れないけど……、笑って言う。


「アレク、お祭りのお料理は何がいいかしら?」

 アレクは少し考えた様にして口を開く。

「リルが作ってくれるものは何でも好きだけど、この間、ニンニクとショウガで作ってくれたカラアゲとか、チラシズシとか美味しかったな。サンドイッチとか気軽に摘めるものがいいんじゃないかな」

 スレイブ領民に馴染んだ、マクレーンの人々も、協力して祭りを作り上げた。

 お酒が好きな人は米や小麦やイモ、リンゴ、ブドウで作ったお酒を。

 飲めない人や子供は、フルーツをふんだんに使ったジュースと食事に舌鼓を打った。

 準備をし疲れたけれど、楽しかった日の翌日の事。
 平和だったスレイブ城に、突如として嵐は訪れた。


 執務室の窓から見える、金色のストレートロングの髪に、グレーの瞳を持つあの方、もといクリストフィン王子。

「リフィルを出せ! ここにいるのはわかっているんだ!」

 そう言って、押しかけてきたからだ。

 冤罪をかけられて、「死ねばいい」そんな事をしておいて、今更なんの用があるというのだろうか。

 アレクは「アレが例の元婚約者か?」そういうと、苦虫を噛み潰した様な顔をした。

「そのようですね…。一体なんの用なのでしょう…。縁は切れたというのに」

 私としては2度と会わないだろうと思ったし、会いたくない人物だ。それに、今はもうアレクという大切な人がいる。

 何を言われてもこの先を生き延びて、少しでも長くアレクと添い遂げたいと思っている。
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