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君の為に僕はいる
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僕は伯爵家の嫡男として生まれた。けれど緑がかった黒髪と血の滴るような紅い瞳のせいで、他の家の者たちには悪魔のようだと言われていた。
けれど、両親は僕を大切に育ててくれていた。隠れて使用人に冷たくされても、優しい両親がいたから耐えられた。
なのに、僕の大切な両親は呆気なく、馬車の事故で僕を置いて逝ってしまった。
あなた達さえいてくれれば。僕は幸せを感じられていたのに。
それからあまり間を開けずに、見たこともない分家を名乗る人達が僕の家を荒らしていく。両親を亡くして立ちすくむ僕を悪魔と呼び、蔑む人々に呆然としている内に、僕は施設に送られそうになった。
それはそうだろう…。僕を引き取ろうとする人たちなんていなかったから。
あと数日で施設に送られる…、そんなタイミングで僕を引き取ると言う公爵様が現れた。領地にいた事で、今回の事を知るのが遅かったという話だったけど、その頃には、人にどう思われようとどう扱われようと、どうでもいいし関係ないと感じるくらいには、心が壊れかけていたと思う。
きっと僕を引き取るって人にとって何か旨みでもあるのだろう。そう思った。
いざ引き取られてみると、「すぐに迎えられなくてすまなかった」なんて謝られ、抱きしめられた。
「僕…、悪魔なのに……、どうして?」
僕がそう言うと、公爵様はつらそうな顔をして、黙って僕をさらに強く抱きしめた。
なんだか公爵様の体温で温かい。抱きしめられたのはいつぶりだろう。そんな事を思っていたら、涙が溢れそうになった。
しばらく抱きとめられたあと、公爵様はある部屋へと案内をしながらいった。
「私には11になる娘がいる。君の義妹になる。このあと紹介するつもりだが仲良くしてやってくれ」
そう言って紹介されたのは、ローディアという黒髪に碧い目をした女の子だった。
美しくカーテシをする。
「わたくしはローディア・ルーシニアと申します。貴方がお義兄様ですか?」
「僕は、クィールと申します。伯爵家から追い出されてしまいましたので家名を名乗れず申し訳ありません」
「あら、大丈夫ですわ! お兄様は今後ルーシニアを名乗るのですもの」
そう笑ってくれたのに、曖昧な笑顔を浮かべてうまく対応ができていない。
公爵家に来て何日か経ったある日、僕は母様や父様が恋しくて泣きそうになってしまった。そんな感情はもう忘れてしまったと思ったのに。ここの人達に優しくされるたびに息が詰まる。優しかった両親が頭を過る。そんなタイミングでローディアは僕の部屋を訪ねて来てしまった。
「お義兄様! 美味しいお菓子を作って頂きましたの! 一緒に食べましょう。……お義兄様?」
部屋の隅で縮こまってる僕を見つけると、彼女は「ご両親が亡くなって、間もないのですもの…。もっと泣いていいのですわ…」そういって頭を撫でてくれる。僕の方が歳上なのに情けない…。
「僕は悪魔なのに、どうして君も君のご両親も優しくしてくれるの?」
温かい居場所は相応しくないのに。ごめんなさい。そう思うと、涙をとどめることが出来なかった。
「悪魔? 何方がそんな事を? どんな理由で…?」
「僕の髪が黒いから……。僕の瞳が血のように赤いから……」
「その理屈ですと、黒い髪を持つわたくしは、悪魔ですわね…。先祖返りらしいですが……」
あっけに取られて何も言えないでいると、「その宝石のように赤い瞳も美しいですのに…。言いたいものには言わせておけば良いのです。わたくしやお父様、お母様、お義兄様のご両親が違うとわかっていますもの、ね」
そう言って泣きじゃくる僕を小さな体で包んでくれた。
それからだろうか。ローディアを見ると頬が熱くなる。彼女の為にできる事はなんだってしてあげたくなる。誰にも渡したくない…。
そんな気持ちを、恋と呼ぶ事を今の僕はまだ知らない。
けれど、両親は僕を大切に育ててくれていた。隠れて使用人に冷たくされても、優しい両親がいたから耐えられた。
なのに、僕の大切な両親は呆気なく、馬車の事故で僕を置いて逝ってしまった。
あなた達さえいてくれれば。僕は幸せを感じられていたのに。
それからあまり間を開けずに、見たこともない分家を名乗る人達が僕の家を荒らしていく。両親を亡くして立ちすくむ僕を悪魔と呼び、蔑む人々に呆然としている内に、僕は施設に送られそうになった。
それはそうだろう…。僕を引き取ろうとする人たちなんていなかったから。
あと数日で施設に送られる…、そんなタイミングで僕を引き取ると言う公爵様が現れた。領地にいた事で、今回の事を知るのが遅かったという話だったけど、その頃には、人にどう思われようとどう扱われようと、どうでもいいし関係ないと感じるくらいには、心が壊れかけていたと思う。
きっと僕を引き取るって人にとって何か旨みでもあるのだろう。そう思った。
いざ引き取られてみると、「すぐに迎えられなくてすまなかった」なんて謝られ、抱きしめられた。
「僕…、悪魔なのに……、どうして?」
僕がそう言うと、公爵様はつらそうな顔をして、黙って僕をさらに強く抱きしめた。
なんだか公爵様の体温で温かい。抱きしめられたのはいつぶりだろう。そんな事を思っていたら、涙が溢れそうになった。
しばらく抱きとめられたあと、公爵様はある部屋へと案内をしながらいった。
「私には11になる娘がいる。君の義妹になる。このあと紹介するつもりだが仲良くしてやってくれ」
そう言って紹介されたのは、ローディアという黒髪に碧い目をした女の子だった。
美しくカーテシをする。
「わたくしはローディア・ルーシニアと申します。貴方がお義兄様ですか?」
「僕は、クィールと申します。伯爵家から追い出されてしまいましたので家名を名乗れず申し訳ありません」
「あら、大丈夫ですわ! お兄様は今後ルーシニアを名乗るのですもの」
そう笑ってくれたのに、曖昧な笑顔を浮かべてうまく対応ができていない。
公爵家に来て何日か経ったある日、僕は母様や父様が恋しくて泣きそうになってしまった。そんな感情はもう忘れてしまったと思ったのに。ここの人達に優しくされるたびに息が詰まる。優しかった両親が頭を過る。そんなタイミングでローディアは僕の部屋を訪ねて来てしまった。
「お義兄様! 美味しいお菓子を作って頂きましたの! 一緒に食べましょう。……お義兄様?」
部屋の隅で縮こまってる僕を見つけると、彼女は「ご両親が亡くなって、間もないのですもの…。もっと泣いていいのですわ…」そういって頭を撫でてくれる。僕の方が歳上なのに情けない…。
「僕は悪魔なのに、どうして君も君のご両親も優しくしてくれるの?」
温かい居場所は相応しくないのに。ごめんなさい。そう思うと、涙をとどめることが出来なかった。
「悪魔? 何方がそんな事を? どんな理由で…?」
「僕の髪が黒いから……。僕の瞳が血のように赤いから……」
「その理屈ですと、黒い髪を持つわたくしは、悪魔ですわね…。先祖返りらしいですが……」
あっけに取られて何も言えないでいると、「その宝石のように赤い瞳も美しいですのに…。言いたいものには言わせておけば良いのです。わたくしやお父様、お母様、お義兄様のご両親が違うとわかっていますもの、ね」
そう言って泣きじゃくる僕を小さな体で包んでくれた。
それからだろうか。ローディアを見ると頬が熱くなる。彼女の為にできる事はなんだってしてあげたくなる。誰にも渡したくない…。
そんな気持ちを、恋と呼ぶ事を今の僕はまだ知らない。
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