続きは第一図書室で

蒼キるり

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46.浩也への感謝

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 あれはどういう意味だったのだろう。
 放課後、図書室に向かいながら考える。

「佐武にじゃなきゃしないよ」

 確かに浩也はそう言った。
 その応えの意味を尋ねる前にチャイムが鳴ってしまい教室に戻ってしまった。
 結局窓ガラスが割れたのは受験勉強にイライラした先輩の仕業だったらしい。
 昼休みに由紀先輩にお礼に行くと「お礼はあの子に言ってあげて」と言われた。
 俺が疑われている事に気づいて放課後一緒だった由紀先輩を呼びに行ってくれたらしい。

「あの子、目立つのあんまり好きじゃないから私と姉弟だってバレたくなくて教室なんか絶対行かないって言ってたのにね」

 それなのに走りながら由紀先輩を呼びに行ったらしい。
 どうしてだろう。
 どうしてそこまでして、俺を助けようとしてくれたのだろう。
 第一図書室の前に着くと、本当に入って良いのだろうかと不安になる。
 もう来ないつもりだったのに、ほんの一日でそれを破っている。
 浩也にお礼を言わないととか立派な理由はある。
 でも、それよりも何より……俺が浩也に会いたいのだ。
 意を決して戸に手をかける。
 ガラガラと聞き慣れた音を聞いて中を覗き込むと、すぐには浩也の姿が目に入らなかった。
 居ないのだろうかと中を見渡すと、カウンターの中で作業をしていた。
 カウンターの中にいるのは珍しいなと思っていると声をかけられる。

「佐武?」

 何か書き込んでいたのか、右手に持っていたボールペンを落とした。
 ……そんなに驚くか?

「えっと……あー」

 何から言おう。
 戸を開けたまま話す事でもないと思って、中に入って戸を閉じる。

「カウンター、入っても大丈夫?」

「……うん」

 そういえば入るの初めてだな。
 本が重ねて置いてあったりダンボールが置いてある、こと第一図書室の中で一番散らかっているであろうカウンター内にはなんとなく近寄る気にも今まではなれなかった。
 用もなかったし。
 カウンター内はそこそこ広くて、端の方にいる浩也とはまだ距離がある。
 近すぎたら緊張してうまく話せないかもしれないから、今はこのくらいの距離がちょうど良いのかもしれない。

「……今日の朝、来てくれてありがとう」

「誤解を解いたのは姉さんだから」

 ふいと目を逸らして言うのは、一見不機嫌そうに見えるけど、もしかしたら拗ねているんだろうかと何故か唐突に思った。

「浩也が来てくれて嬉しかった」
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