続きは第一図書室で

蒼キるり

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30.気になる人

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 朝起きてリビングに向かうと母の姿は見えなかった。
 多分、まだ寝てるんだろうな。
 お酒飲んだ次の日の朝は遅いからなー。
 てか俺も眠い。昨日あの後話したし。その後もなんとなく寝付けなかったから。

「あ、お兄ちゃん。おはよー」

 珍しく俺より早く起きていた美奈がにこやかに挨拶してくる。
 ……朝はこいつ大体眠そうで不機嫌なんだが、どうした?

「お兄ちゃんも食パンでいいよねー?」

「……おー」

 鼻歌を歌いながらトーストにマーガリンを塗ってくれる。ついでにコーヒーも作っている。
 有難いがまだ足が治りかけで足を引きずってるのが気になって座っとけと言いたい気分だ。

「……なんでそんなご機嫌なんだよ」

 考えてるのが馬鹿らしくなって尋ねてみたけど、美奈は小さく笑っただけで返事はなかった。
 まあいいかと電気ケトルのお湯を注いだだけのコーヒーを手に取る。
 ……作ってくれて文句は言いたくないが、すげー薄いんだけど。
 こいつ紅茶しか飲まないからなぁ。量わかってないんだろうと納得する。

「いっただっきまーす!……これ、美味しい!」

「……いつものマーマレードジャムですけど」

 うわー、ご機嫌過ぎて怖いな。
 トーストに手を伸ばしてかじる。
 ……そういえば、母さんが美奈に趣味の事を話したとかどうとか言ってたっけ?
 バラさないで!言ってたもんな。
 隠さないで良くなったから機嫌が良いんだろうか。それともこれから色々語り合えるって事で喜んでるんだろうか。
 まあ、不機嫌なよりは良いよな。

「そういえばお兄ちゃん昨日、お母さんと話したりしてた?下で話し声聞こえたけど」

「あーまあ、ちょっとな」

 昨日の事を丸々話すのはなんとなく憚られて、何て言おうかと迷う。
 だってお前が泣いた話とか聞いてさって言えるか?
 絶対、不機嫌になる。ていうか泣いた話とかあんまり知られたくないだろうし。俺が美奈の立場だったら口止めくらいするけどな。
 してなかったとしたら甘いな……いや、母さんの事だから口止めされてもペラペラ話した可能性も高いけど。

「……お前に好きな人とか気になる人がいるのかなって話もした」

 これくらいなら良いだろうと話すと、キョトンとした顔で首を捻っている。
 あー、この顔は居ないんだろうな。
 ……じゃあ、浩也の事も好きじゃないのか。
 何故かほっとすると、美奈があ、と小さく言って続けた。

「……気になる、人はいるかも」

「は?まじで?」
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