続きは第一図書室で

蒼キるり

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21.妹の迎え

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「お兄ちゃん、皐月ちゃんのせいじゃないの。私が本を取ろうとして椅子に乗って降りようとした時に、古い椅子だったからバランス崩して捻っただけだから」

 そういえば文芸部は図書室で活動してると言っていた気がする。

「あ、あの……本当にすみません」

 美奈がそう言っても気にしているのか俺に謝ってくる。

「いや……美奈が鈍臭いだけだから……えーと、田辺さんは気にしなくても大丈夫っていうか。わざわざ残っててくれてありがとう」

 本当になんでもなかったんだし、と応えると安心したのか頰を赤く染めてありがとうございますと返して来た。

「私、美奈ちゃんにお兄さんの話はたまに聞いてて……あの、趣味とかも嫌がらないって。あ、私何言ってるんですかね、すみません」

 まだ混乱してるのか口早にそれだけ言うと俺達に挨拶して美奈には手も振ってかえっていった。
 まだ顔が赤かったけど、ショックで熱とか出さないかが心配だ。
 美奈は鈍臭い割に意外と頑丈だからさほど今は心配してないけど。
 考え事をしてると浩也が小さく呟く。

「……意外と年下キラーだよね」

「は?なんの話だ?」

「別に。年下にはなんだかんだ優しくするなって思っただけ」

 そんな事もないと思うんだが。美奈がいるから多少の節は認めるけど。

「おーい」

 二人で話し込んでいると半分忘れかけていた人が声を掛けてくる。

「お兄ちゃん達、私の事を忘れてない?あとあとあと、もしかしてもしかするともしかしなくても、その人浩也さんじゃない?」

 興奮気味の声で言われ、浩也が一瞬身を引いたのを俺は見逃さなかった。

「初めましてー!私、佐武美奈って言います。お兄ちゃんがいつもお世話になってます」

「お前、まだ名乗ってないんだから早々に浩也だって決めつけるなよ」

「だってお兄ちゃん、浩也さん以外に友達いないじゃん」

 しれりと痛い所を突かれて返す言葉が見つからない。
 隣で浩也が笑ってる気がする。あとで覚えとけ。

「……まあ、浩也なんだけど。わざわざ迎えに来てくれてたんだから、お礼を」

「そうそう。保健の先生がね、いま会議中だから居ないんだけど先生が帰って来る前に、帰っとけよって言われてるから帰らないと」

「お前、それ早く言え」

 そういえばそこそこ遅い時間だ。
 結局話は後回しにして美奈に手を貸しながら連れて帰る事にした。
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