重くて甘い愛の証

蒼キるり

文字の大きさ
上 下
2 / 3

中編

しおりを挟む
「んんっ」

 ジェーンはいきなりキスをされた驚きのあまり目を見開く。必死で身をよじるが、ヴィルは気にも留めない様子でジェーンの両手首を強く掴んで動けないようにする。
 せめてキスだけでもやめさせようとして唇を掻き分けて入って来る舌を押し出そうとする。それでも優しく舌を絡められてしまう。
 ジェーンは初めての感覚に思わず体の力が抜けてしまい、ヴィルのされるがままになってしまう。
 微かな水音にジェーンは小さく身を捩るが、舌を吸い上げられて鼻にかかる甘い声があがってしまう。

「僕はずっと前から、ジェーンが好きだよ」

 唇をようやく離されると、息も乱さずにヴィルが言う。
 ヴィルの唇が微かに濡れているのが、先程までの激しい口付けの唯一の証だった。

「だからジェーンが僕の事を嫌いでも、僕は君を抱くよ。僕だけのジェーンになって」

 抱く、という言葉にジェーンは頬を赤く染める。
 その反応に気を良くしたヴィルは片方の腕でジェーンを押さえたまま、体を軽く起こしてジェーンの白く細い足を抱える。

「綺麗な足をこんなに傷だらけにして……」

 優しい表情を見せられ一瞬力を抜くジェーンを見過ごさず、その隙にヴィルはその足に口付けを落とした。

「や、やめて!」

 その声は無視し、ヴィルは傷に唇を寄せる。ちろちろと赤い舌を出して、舐め上げる。痛いはずなのに、甘く痺れる感覚にジェーンは戸惑った。
 おかしい、こんな事やめさせないといけないはずなのに。
 そんな思いを抱えるジェーンの体は心とは裏腹にその行動をやめさせることが出来ない。
 ヴィルが傷に軽く歯を立て甘噛みした途端、「んぁっ」と自分から出たとは信じられない程の甘ったるい声が響いた。
 ジェーンが困惑しているのに気づき、「感じてるんだ」とヴィルは嘲りを混ぜた声で言う。

「僕の事なんか嫌いなくせに、傷を舐められて感じるなんて。君って淫乱だったんだね」

 そんな事言わないで、と言葉にする前にネグリジェに手を掛けられてあっという間に剥ぎ取られてしまう。
 ジェーンが寒さに身体を震わせる。その時ジェーンはここが森の中であることと自分の淫らな格好を思い出して激しい羞恥心に襲われた。
 その間にもヴィルが体中にキスを落とす。無理矢理の行為のはずなのに優しささえ感じる行動にジェーンは困惑を隠せず辛うじて小さく「やめて」と囁く。
 そんなジェーンの拒絶には構わずヴィルの唇は緩やかにジェーンの下肢へと滑り落ちていく。つ、と辿り着いた淡い茂みに軽くキスをする。

「……濡れてるよ?本当はやめて欲しくないんじゃないの?」

 そんな事ない、とジェーンは首を振る。その姿を見て薄く笑みを浮かべた後、ヴィルは指を秘部の中に埋め込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる

春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。 幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……? 幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。 2024.03.06 イラスト:雪緒さま

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

そんな目で見ないで。

春密まつり
恋愛
職場の廊下で呼び止められ、無口な後輩の司に告白をされた真子。 勢いのまま承諾するが、口数の少ない彼との距離がなかなか縮まらない。 そのくせ、キスをする時は情熱的だった。 司の知らない一面を知ることによって惹かれ始め、身体を重ねるが、司の熱のこもった視線に真子は混乱し、怖くなった。 それから身体を重ねることを拒否し続けるが――。 ▼2019年2月発行のオリジナルTL小説のWEB再録です。 ▼全8話の短編連載 ▼Rシーンが含まれる話には「*」マークをつけています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫

梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。 それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。 飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!? ※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。 ★他サイトからの転載てす★

処理中です...