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第2章 食事会
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「すまないな、アプリコット公爵令嬢、他の令嬢たちを送るのに手間取ってしまった」
ペリウィンクル殿下が、食事会の会場に戻ってくる。
「どうしてもそなたに伝えたいことがあってな。今日の食事会では、私の管理が悪く申し訳なかった。まさか、あのようなことをする者がいるとは……」
ペリウィンクル殿下は、紅茶の件を言っているのだろう。
「でも、あれはペリウィンクル殿下がお命じになられたのではなかったのですか?」
私は、敢えて何にも知らないふりをする。
「そなたが、そう言ってくれると助かる。あの侍女も、そなたに助けられたのだ。あのままでは、あの侍女は、罰を受けていただろうからな」
あの侍女は、何も悪くないのである。
だが、貴族の令嬢に紅茶を掛けただけで、正確には、紅茶を掛けさせられただけで、罰を受けさせられるところだったのだ。
だから、私はあの場でペリウィンクル殿下にお願いをしたのだ。
そして、私の願いを受けて、ペリウィンクル殿下はあのような嘘を付いてくれた。
だから、あの侍女が罰を受けなくて済んだのだ。
あの侍女が罰を受けなくて済んだのは、ペリウィンクル殿下のお陰なのである。
実際、私が願い出ただけでは、あの侍女を助けることは出来なかったであろう。
「そこでだ、受け取って欲しい物がある。持って入れ」
ペリウィンクル殿下は、部屋の外に声を掛けた。
扉が開き、あの時の侍女が白い何かを抱えて入ってくる。
侍女は、ペリウィンクル殿下に会釈をした後、私に深々と頭を下げた。
「本人も、そなたにはとても感謝しているようだ」
ペリウィンクル殿下は、侍女を見た後に私に微笑んだ。
侍女の手には、白いドレスが抱えられている。
私は、今も紅茶の染みが付いたドレスを着ていた。
「アプリコット公爵令嬢、このドレスをそなたに贈ろう。受け取ってくれ」
私は、何度もそのような物は頂けないとお断りしたが、ペリウィンクル殿下は受け入れてくれなかった。
侍女が、ドレスを抱えたまま私の方を見ている。
私は、ペリウィンクル殿下に諦めてもらうために、はっきりと言った。
「私は、ペリウィンクル殿下から、このような物を頂く立場にはございませんので、受け取ることは出来ません」
ペリウィンクル殿下は、私の言葉を聞いて笑う。
「では、その様な立場になれば、受け取ってくれるのだな」
私は、ペリウィンクル殿下の言っている意味がよく分からなかった。
ペリウィンクル殿下は、侍女に向かって言う。
「そなたは、今から私の言うことの証人である。良いな」
いきなりペリウィンクル殿下から証人だと言われた侍女は、ペリウィンクル殿下に向かって何度も頭を縦に振る。
「あっ」
侍女が、声をあげる。
突然、ペリウィンクル殿下が私の前にひざまずいた。
ペリウィンクル殿下は、私に手を差し出しながら言う。
「アプリコット公爵令嬢、いや、マグノリア、私の伴侶になってくれ。私は、そなたを必ず守り抜く」
私は、驚きのあまり、何も答えることができなかった。
ペリウィンクル殿下が、食事会の会場に戻ってくる。
「どうしてもそなたに伝えたいことがあってな。今日の食事会では、私の管理が悪く申し訳なかった。まさか、あのようなことをする者がいるとは……」
ペリウィンクル殿下は、紅茶の件を言っているのだろう。
「でも、あれはペリウィンクル殿下がお命じになられたのではなかったのですか?」
私は、敢えて何にも知らないふりをする。
「そなたが、そう言ってくれると助かる。あの侍女も、そなたに助けられたのだ。あのままでは、あの侍女は、罰を受けていただろうからな」
あの侍女は、何も悪くないのである。
だが、貴族の令嬢に紅茶を掛けただけで、正確には、紅茶を掛けさせられただけで、罰を受けさせられるところだったのだ。
だから、私はあの場でペリウィンクル殿下にお願いをしたのだ。
そして、私の願いを受けて、ペリウィンクル殿下はあのような嘘を付いてくれた。
だから、あの侍女が罰を受けなくて済んだのだ。
あの侍女が罰を受けなくて済んだのは、ペリウィンクル殿下のお陰なのである。
実際、私が願い出ただけでは、あの侍女を助けることは出来なかったであろう。
「そこでだ、受け取って欲しい物がある。持って入れ」
ペリウィンクル殿下は、部屋の外に声を掛けた。
扉が開き、あの時の侍女が白い何かを抱えて入ってくる。
侍女は、ペリウィンクル殿下に会釈をした後、私に深々と頭を下げた。
「本人も、そなたにはとても感謝しているようだ」
ペリウィンクル殿下は、侍女を見た後に私に微笑んだ。
侍女の手には、白いドレスが抱えられている。
私は、今も紅茶の染みが付いたドレスを着ていた。
「アプリコット公爵令嬢、このドレスをそなたに贈ろう。受け取ってくれ」
私は、何度もそのような物は頂けないとお断りしたが、ペリウィンクル殿下は受け入れてくれなかった。
侍女が、ドレスを抱えたまま私の方を見ている。
私は、ペリウィンクル殿下に諦めてもらうために、はっきりと言った。
「私は、ペリウィンクル殿下から、このような物を頂く立場にはございませんので、受け取ることは出来ません」
ペリウィンクル殿下は、私の言葉を聞いて笑う。
「では、その様な立場になれば、受け取ってくれるのだな」
私は、ペリウィンクル殿下の言っている意味がよく分からなかった。
ペリウィンクル殿下は、侍女に向かって言う。
「そなたは、今から私の言うことの証人である。良いな」
いきなりペリウィンクル殿下から証人だと言われた侍女は、ペリウィンクル殿下に向かって何度も頭を縦に振る。
「あっ」
侍女が、声をあげる。
突然、ペリウィンクル殿下が私の前にひざまずいた。
ペリウィンクル殿下は、私に手を差し出しながら言う。
「アプリコット公爵令嬢、いや、マグノリア、私の伴侶になってくれ。私は、そなたを必ず守り抜く」
私は、驚きのあまり、何も答えることができなかった。
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