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第2章 食事会
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「今日は、私の招きに応じ、集まってくれて感謝する。最後まで、楽しんでくれ」
ペリウィンクル殿下の挨拶で、食事会は始まった。
大きなテーブルに、私たちは座席を1席づつ空けて座っている。
乾杯を終えると、侍女たちが料理を運んできた。
テーブルの上には、豪華な料理が並ぶ。
ペリウィンクル殿下は、端に座っている令嬢から順に話し掛けている。
私は、他の令嬢が手を出さないテーブルの上の料理に、遠慮をせずに手を付けていく。
「アプリコット公爵令嬢は、私と会っても緊張しないみたいだな」
ペリウィンクル殿下が、笑って言う。
「私も、変に畏まられない方が楽でいい。アプリコット公爵令嬢、そのままでいてくれ」
ペリウィンクル殿下は、ホークとナイフを置こうとした私に微笑む。
私との話を終えたペリウィンクル殿下は、次の令嬢に話し掛ける。
ペリウィンクル殿下との食事会は、何事もなく進んでいた。
侍女たちが、デザートの準備を始める。
私たちの前に、パイが置かれた。
それぞれのカップに、侍女が紅茶を注いでいく。
私の横に、ティーポットを持った侍女が近付いてきた。
「きゃっ、……も、申し訳ありません」
侍女がつまずいたことにより、私のドレスに紅茶が掛かる。
私の横にいた令嬢が、にやけた口許を手で隠している。
私の白いドレスが、紅茶の色に汚れた。
幸い、隣の令嬢と1席空けて私たちは座っていたので、紅茶は私にしか掛からなかった。
私に紅茶を掛けさせられた侍女は、泣きそうな顔で、何度も私に謝ってくる。
「大丈夫、何か拭くものをもらえる?」
私は、出来るだけ侍女を怖がらせないように、優しく言った。
他の侍女たちも、慌ててテーブルや床にこぼれた紅茶を拭いていた。
「気にしなくてもいいわ、大丈夫だから」
私は、とうとう涙を流し始めた侍女を慰める。
「ペリウィンクル殿下、私は大丈夫ですので、この侍女を罰したりしないで下さい。お願いでございます」
ペリウィンクル殿下は、私の願いを聞くと、にこやかに微笑んだ。
「アプリコット公爵令嬢、すまない、そなたを試させてもらった。その侍女には、私が紅茶を掛けるように命じたのだ。そなたの、反応や態度を試すためにな」
侍女は、ポカンとしている。
私は、ペリウィンクル殿下が侍女を不問に処すために嘘を付いているのだと思ったが、私も侍女を責める気はないので何も言わなかった。
これで、令嬢たちの争いに巻き込まれた侍女も、大丈夫だろう。
ペリウィンクル殿下が、自ら命じたと言ったことで、侍女頭等からも叱られることはないであろう。
私は、ペリウィンクル殿下の優しさに感謝した。
「アプリコット公爵令嬢のこともあるし、ここで、お開きにしても良いが……」
「ペリウィンクル殿下、殿下さえよろしければ、このまま食事会を続けて頂ければ」
私は、汚れたドレスで最後まで食事会に参加し続けた。
食事会が終わり、散会になった時に、先ほどの侍女が私のところにきた。
「ありがとうございます、アプリコット公爵令嬢様、本当に、ありがとうございます」
何度も頭を下げる侍女に、私は笑って言う。
「大丈夫よ、それに、あなたはペリウィンクル殿下の命令でやっただけでしょ。気にしないで」
侍女は、もう一度頭を下げて私の前から去っていく。
侍女は、去り際に小声で私に告げた。
「ペリウィンクル殿下が、少しここで待つようにと仰せでございます」
私は、他の令嬢が皆帰った後も、食事会の会場に残ってペリウィンクル殿下を待っていた。
ペリウィンクル殿下の挨拶で、食事会は始まった。
大きなテーブルに、私たちは座席を1席づつ空けて座っている。
乾杯を終えると、侍女たちが料理を運んできた。
テーブルの上には、豪華な料理が並ぶ。
ペリウィンクル殿下は、端に座っている令嬢から順に話し掛けている。
私は、他の令嬢が手を出さないテーブルの上の料理に、遠慮をせずに手を付けていく。
「アプリコット公爵令嬢は、私と会っても緊張しないみたいだな」
ペリウィンクル殿下が、笑って言う。
「私も、変に畏まられない方が楽でいい。アプリコット公爵令嬢、そのままでいてくれ」
ペリウィンクル殿下は、ホークとナイフを置こうとした私に微笑む。
私との話を終えたペリウィンクル殿下は、次の令嬢に話し掛ける。
ペリウィンクル殿下との食事会は、何事もなく進んでいた。
侍女たちが、デザートの準備を始める。
私たちの前に、パイが置かれた。
それぞれのカップに、侍女が紅茶を注いでいく。
私の横に、ティーポットを持った侍女が近付いてきた。
「きゃっ、……も、申し訳ありません」
侍女がつまずいたことにより、私のドレスに紅茶が掛かる。
私の横にいた令嬢が、にやけた口許を手で隠している。
私の白いドレスが、紅茶の色に汚れた。
幸い、隣の令嬢と1席空けて私たちは座っていたので、紅茶は私にしか掛からなかった。
私に紅茶を掛けさせられた侍女は、泣きそうな顔で、何度も私に謝ってくる。
「大丈夫、何か拭くものをもらえる?」
私は、出来るだけ侍女を怖がらせないように、優しく言った。
他の侍女たちも、慌ててテーブルや床にこぼれた紅茶を拭いていた。
「気にしなくてもいいわ、大丈夫だから」
私は、とうとう涙を流し始めた侍女を慰める。
「ペリウィンクル殿下、私は大丈夫ですので、この侍女を罰したりしないで下さい。お願いでございます」
ペリウィンクル殿下は、私の願いを聞くと、にこやかに微笑んだ。
「アプリコット公爵令嬢、すまない、そなたを試させてもらった。その侍女には、私が紅茶を掛けるように命じたのだ。そなたの、反応や態度を試すためにな」
侍女は、ポカンとしている。
私は、ペリウィンクル殿下が侍女を不問に処すために嘘を付いているのだと思ったが、私も侍女を責める気はないので何も言わなかった。
これで、令嬢たちの争いに巻き込まれた侍女も、大丈夫だろう。
ペリウィンクル殿下が、自ら命じたと言ったことで、侍女頭等からも叱られることはないであろう。
私は、ペリウィンクル殿下の優しさに感謝した。
「アプリコット公爵令嬢のこともあるし、ここで、お開きにしても良いが……」
「ペリウィンクル殿下、殿下さえよろしければ、このまま食事会を続けて頂ければ」
私は、汚れたドレスで最後まで食事会に参加し続けた。
食事会が終わり、散会になった時に、先ほどの侍女が私のところにきた。
「ありがとうございます、アプリコット公爵令嬢様、本当に、ありがとうございます」
何度も頭を下げる侍女に、私は笑って言う。
「大丈夫よ、それに、あなたはペリウィンクル殿下の命令でやっただけでしょ。気にしないで」
侍女は、もう一度頭を下げて私の前から去っていく。
侍女は、去り際に小声で私に告げた。
「ペリウィンクル殿下が、少しここで待つようにと仰せでございます」
私は、他の令嬢が皆帰った後も、食事会の会場に残ってペリウィンクル殿下を待っていた。
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