34 / 45
【第3部】序章 単独公務
2
しおりを挟む
初めての単独公務についてクレイン殿下から知らされた日の翌日に、私は王妃様から正式に王母様に贈り物を贈る任を仰せつかった。
「マーレット、贈り物を選ぶに際して、2つ守らなければならない事があります」
私は、王妃様の言葉を聞き漏らさないように集中する。
「1つ、王母様の事を想い、真心を込めて贈り物を選ぶこと」
私は、心の中で王妃様の言葉を復唱する。
「1つ、贈り物を何にするかは、あなた自身で決めること。この2つを守れば、あなたの贈り物について、誰も咎めたりすることはないわ」
王妃様は、私に一枚の紙を差し出した。
「参考として、これを渡しておくわ。王母様が、今まで受け取られた贈り物の一覧よ」
私は、過去の贈り物が記された一覧表を王妃様から受け取る。
「マーレット、あなたが王母様のことを想い、心を込めて贈った贈り物であれば、誰もあなたを咎めたりしないわ。だから、王母様のことを想い、心を込めた贈り物を準備するのよ」
離宮に戻った私は、王妃様から頂いた一覧表を改めて見る。
一覧表には、食べ物、衣類、宝石などの様々なものが記されていたが、贈り主の名前については書かれていない。
私は、一覧表に記載された贈り物の数を見て、毎年違う贈り物が王母様に贈られていることを知る。
贈り主が皆、王母様のことを想って、自分が選んだ結果、毎年違う贈り物になっているのだろう。
私は、クレイン殿下が何を贈られたのか気になったが、今は王母様への贈り物を何にするか考える事を優先することにした。
いざ、何を贈ろうかと考えると、なかなか決めることは出来なかった。
私は、贈り物の一覧表を見ながら、贈り物に何が相応しいか考え込んでいた。
「祝祭までは、まだ日がある。焦って決めることはない」
私は、クレイン殿下の声に驚き振り返る。
「すまない、驚かせたようだな。でも、今私が言った通り、ゆっくり考えればいい。前にも言った通り、マーレットが心を込めた贈り物ならば、おばあ様は喜んでくれるはずだ」
私は、離宮に帰ってからずっと一覧表とにらめっこをしていたらしい。
侍女が、食事の準備ができたことを告げに来る。
「さあ、気分転換に食事にしよう。満腹になれば、何か良い品が思い浮かぶかもしれないぞ」
クレイン殿下が、微笑みながら言う。
私は、食堂から漂って来る匂いに、「食べ物でも良いかな」と思い、再び贈り物について考え始める。
「マーレット、腹ペコだ。まずは食事にしよう」
いたずらっ子のような笑顔を見せるクレイン殿下が、右手で私を食堂へと促すような素振りをする。
私は、贈り物が記された一覧表を片付けて、クレイン殿下といっしょに食堂へと向かった。
「マーレット、贈り物を選ぶに際して、2つ守らなければならない事があります」
私は、王妃様の言葉を聞き漏らさないように集中する。
「1つ、王母様の事を想い、真心を込めて贈り物を選ぶこと」
私は、心の中で王妃様の言葉を復唱する。
「1つ、贈り物を何にするかは、あなた自身で決めること。この2つを守れば、あなたの贈り物について、誰も咎めたりすることはないわ」
王妃様は、私に一枚の紙を差し出した。
「参考として、これを渡しておくわ。王母様が、今まで受け取られた贈り物の一覧よ」
私は、過去の贈り物が記された一覧表を王妃様から受け取る。
「マーレット、あなたが王母様のことを想い、心を込めて贈った贈り物であれば、誰もあなたを咎めたりしないわ。だから、王母様のことを想い、心を込めた贈り物を準備するのよ」
離宮に戻った私は、王妃様から頂いた一覧表を改めて見る。
一覧表には、食べ物、衣類、宝石などの様々なものが記されていたが、贈り主の名前については書かれていない。
私は、一覧表に記載された贈り物の数を見て、毎年違う贈り物が王母様に贈られていることを知る。
贈り主が皆、王母様のことを想って、自分が選んだ結果、毎年違う贈り物になっているのだろう。
私は、クレイン殿下が何を贈られたのか気になったが、今は王母様への贈り物を何にするか考える事を優先することにした。
いざ、何を贈ろうかと考えると、なかなか決めることは出来なかった。
私は、贈り物の一覧表を見ながら、贈り物に何が相応しいか考え込んでいた。
「祝祭までは、まだ日がある。焦って決めることはない」
私は、クレイン殿下の声に驚き振り返る。
「すまない、驚かせたようだな。でも、今私が言った通り、ゆっくり考えればいい。前にも言った通り、マーレットが心を込めた贈り物ならば、おばあ様は喜んでくれるはずだ」
私は、離宮に帰ってからずっと一覧表とにらめっこをしていたらしい。
侍女が、食事の準備ができたことを告げに来る。
「さあ、気分転換に食事にしよう。満腹になれば、何か良い品が思い浮かぶかもしれないぞ」
クレイン殿下が、微笑みながら言う。
私は、食堂から漂って来る匂いに、「食べ物でも良いかな」と思い、再び贈り物について考え始める。
「マーレット、腹ペコだ。まずは食事にしよう」
いたずらっ子のような笑顔を見せるクレイン殿下が、右手で私を食堂へと促すような素振りをする。
私は、贈り物が記された一覧表を片付けて、クレイン殿下といっしょに食堂へと向かった。
1
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
不要なモノを全て切り捨てた節約令嬢は、冷徹宰相に溺愛される~NTRもモラハラいりません~
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
皆様のお陰で、ホットランク一位を獲得しましたーーーーー。御礼申し上げます。
我が家はいつでも妹が中心に回っていた。ふわふわブロンドの髪に、青い瞳。まるでお人形さんのような妹シーラを溺愛する両親。
ブラウンの髪に緑の瞳で、特に平凡で地味な私。両親はいつでも妹優先であり、そして妹はなぜか私のものばかりを欲しがった。
大好きだった人形。誕生日に買ってもらったアクセサリー。そして今度は私の婚約者。
幼い頃より家との繋がりで婚約していたアレン様を妹が寝取り、私との結婚を次の秋に控えていたのにも関わらず、アレン様の子を身ごもった。
勝ち誇ったようなシーラは、いつものように婚約者を譲るように迫る。
事態が事態だけに、アレン様の両親も婚約者の差し替えにすぐ同意。
ただ妹たちは知らない。アレン様がご自身の領地運営管理を全て私に任せていたことを。
そしてその領地が私が運営し、ギリギリもっていただけで破綻寸前だったことも。
そう。彼の持つ資産も、その性格も全てにおいて不良債権でしかなかった。
今更いらないと言われても、モラハラ不良債権なんてお断りいたします♡
さぁ、自由自適な生活を領地でこっそり行うぞーと思っていたのに、なぜか冷徹と呼ばれる幼馴染の宰相に婚約を申し込まれて? あれ、私の計画はどうなるの……
※この物語はフィクションであり、ご都合主義な部分もあるかもしれません。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
夫に離縁が切り出せません
えんどう
恋愛
初めて会った時から無口で無愛想な上に、夫婦となってからもまともな会話は無く身体を重ねてもそれは変わらない。挙げ句の果てに外に女までいるらしい。
妊娠した日にお腹の子供が産まれたら離縁して好きなことをしようと思っていたのだが──。
私より美しく女装した弟に、婚約者が私だと勘違いして一目惚れしてしまいました
奏音 美都
恋愛
地元の名士であるジェントリの娘であるジュリエッタは18歳になり、子爵の爵士であるアーロンと婚約を交わし、初めて両家の顔合わせを迎えることとなった。
容姿に自信がなく、今までずっと縁談にも恋愛にも縁がなかったジュリエッタは、美貌と噂されるアーロンとの初対面を楽しみにしていた。
パブリックスクールで虐めにあって以来引きこもりになった弟のミッチェルもその場に出ることになっていたのだが、あろうことか彼は女装して登場した。
そして、あろうことかアーロンはミッチェルを婚約者だと勘違いし、一目惚れしてしまうのであった。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。
鈴木べにこ
恋愛
幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。
突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。
ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。
カクヨム、小説家になろうでも連載中。
※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。
初投稿です。
勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و
気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。
【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】
という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。
すべてが嫌になったので死んだふりをしたら、いつの間にか全部解決していました
小倉みち
恋愛
公爵令嬢へテーゼは、苦労人だった。
周囲の人々は、なぜか彼女にひたすら迷惑をかけまくる。
婚約者の第二王子は数々の問題を引き起こし、挙句の果てに彼女の妹のフィリアと浮気をする。
家族は家族で、せっかく祖父の遺してくれた遺産を湯水のように使い、豪遊する。
どう考えても彼らが悪いのに、へテーゼの味方はゼロ。
代わりに、彼らの味方をする者は大勢。
へテーゼは、彼らの尻拭いをするために毎日奔走していた。
そんなある日、ふと思った。
もう嫌だ。
すべてが嫌になった。
何もかも投げ出したくなった彼女は、仲の良い妖精たちの力を使って、身体から魂を抜き取ってもらう。
表向き、へテーゼが「死んだ」ことにしようと考えたのだ。
当然そんなことは露知らず、完全にへテーゼが死んでしまったと慌てる人々。
誰が悪い、これからどうするのか揉めるうちに、自爆していく連中もいれば、人知れず彼女を想っていた者の復讐によって失脚していく連中も現れる。
こうして彼女が手を出すまでもなく、すべての問題は綺麗さっぱり解決していき――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる