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第七章 『小暑の夕に』
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しおりを挟む~奈古千隼~
「ってことで、麻友ちゃん、お誕生日おめでとぉっ」
桃園と林田、風上さんに、彼女の二人の友人、六人で集まった今日は、風上さんの誕生日祝いを兼ねて、大学近くのレストランで昼食を食べていた。
午前授業を終え気分は楽だが、夕方からはバイトが入っている。明日も明後日もバイトだ……。
先日、風上さんの隣で授業を受けた時、彼女は途中一人講義室を出ていき、あの時は多少気まずかったが、今目の前にいる風上さんはもう笑っている。
「こんな風にお祝いしてもらえて、すごく嬉しい。ありがとう」
「桃園がお店調べて、予約もしてくれたんだよな」
林田に言われ、桃園は二へッと頬を緩ませ、前に座る風上さんも嬉しそう。
結局二人でお祝いをしなかったのは、俺の風上さんの気持ちに対する答えでもあった。
「うっま、このピザすげー美味い」
「このパスタも、もちもちで味付けも美味しいね」
楽しそうなメンツを見ながら食べる食事は、俺も美味しかった。
梅雨はすっかり明け、窓の奥に植わる木々は晴れやかな太陽に照らされている。
食事会は意外と長引き、風上さんがサプライズで運ばれてきたケーキのロウソクの火を消して暫くすると、俺は外の空気を吸いに一旦店を出た。
外にあった木製のベンチに座り、ぼんやり車道や走る車を眺める。平日だし、鳰さんは午後の仕事中だろうか。
鳰さんのことは、よく考える。ちゃんと告白……したいな。
もうすぐこの街の海辺で花火大会があるし、海とかプールも一緒に行ってみたい。それに遊園地とかも、さ。
あ……でも、鳰さん人混み苦手だったな。
てか、いや、そもそもまだ付き合ってないし。
「奈古君、何してるの?」
考え事をしていると話しかけられ、隣に座ったのは本日の主役の風上さんだった。
「ちょっと色々考えてた」
「何だろー、私のこと?」
「……違うかな」
風上さんはスラリと伸びた足をブラつかせ、俺の方をじっと見てくる。
「今日、皆と待ち合わせる前に、鳰さんと会ってきた」
「え?」
「鳰さんって、大変なんだね。私酷いこと言っちゃった」
「何か言ったの?」
黙っていられず口に出すと、風上さんはやや声のトーンを落として、ここに来る前に何があったのかを話し始めた。
「……だからね、ただ気を引きたいがために、あんな話し方してるのかと思ってた」
「違う」
「うん、違ってた。……聞いて、ビックリした」
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