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第五章 『キスが落ちる』

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「ホントに喜んでる? そういう風には見えないなぁ」

「有難いとは思ってるよ」

 まともに話したのは初めてなのに、風上さんは緊張している様子は全くなく、緊張は自分もしていないのだが、頭に浮かんだ鳰さんとは正反対の態度。

「奈古君はどんな人が好きなの? どういう系がタイプ?」

「タイプ……あんまり考えたことなかった」

「え、マジ? 奈古君って恋愛は興味ない感じなの?」

「そういうわけじゃないけど」

 授業を聞くつもりがないのか、風上さんは俺がノートにホワイトボードの文字を写している間にも、隣からコソコソ声をかけてくる。

「彼女は? 今まで何人いた?」

「……いたことないかな」

「え、一人も?」

「うん」

「へぇ、すごく意外かも。何人もいるのかと思っちゃってた」

 ──俺って、一体どんなイメージだったんだ。

「だって奈古君、すっごくカッコ良いじゃん。誰だってそんな風に思っちゃうよ」

「褒めてもらえるのは嬉しいけど」

 風上さんって、思っている以上にお喋りなんだな……。

 それが苦手なわけではないが、話のテンポについていけない。

 中高とエスカレーター式の男子校だったため、“女子の会話”というやつがよく分からない。

「ちょっとそこ、さっきから何お喋りしてるの」

 気付けば前に立つ老教授がこちらを見ており、辺りがシンと静まる。

「「すみません」」

 しかし、風上さんと一緒に謝りながらも、彼女は俺の方をチラッと見て、反省している様子なくクスクス笑った。

「怒られちゃったね」

「授業、集中した方がいいかもね」

「だって、奈古君と話せる機会って、あんまりないから」

 見るからに反省ゼロだ。






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