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第三章 『笑った方がいい?』
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しおりを挟むあ、い、う、え、お。母音は出づらいから、希望のウーロン茶は無理。オレンジジュースも、アップルジュースも言えない。
そしたら、ドキドキしながらメニュー表をを見ていると、視界に一本の指が表れて、ウーロン茶を差した。
「俺、ウーロン茶頼もうと思ってるんですけど、鳰さんも一緒でいいですか?」
助け舟を出してくれた奈古君にコクコク頷くと、店員さんは笑顔で去っていき、私ははぁ、と大きく息をついてしまった。
「な……奈古君、ごめんなさい」
「すみません、言い辛かったですよね。ウーロン茶で良かったですか?」
「は、はい、第一希望だったので」
「鳰さんは、いつもウーロン茶頼まれるんですか?」
そうですね、と苦しながら言うと、覚えておこう、と奈古君は言った。
「次食事に行った時、すぐ頼めるように、ですね」
「……次」
「もしあれば、ですけどね」
お肉や野菜を決めた後は、奈古君が注文をしてくれて、私達はウーロン茶の入ったグラスで乾杯した。
「め、迷惑かけてしまって、すみません。私、の、方が、年上なのに」
「別にいいですよ。注文くらい、何も減るもんじゃないし」
「……す、すみません」
「いえいえ」
そういえば奈古君って、まだアルコールが飲めない年なんだ。
「な、奈古君は、19歳……でしたっけ」
「そうですよ、鳰さんから見たらガキですよね」
「わ、若いな」
まだピチピチの十代。今年25になったアラサーの私とは大違いだ。
「鳰さんは、今年25でしたっけ」
「……で、ですね」
「……あ、今更ですが、お酒じゃなくて良かったですか?」
「お、お酒は普段飲まないので、も、問題ないです」
ウーロン茶をチビチビ飲みながら、奈古君をチラリと見ると、あちらも私を見ていたようで、目が合う。
しかし、両者何も言わず、静かに沈黙が流れた。
「お待たせしました、こちら盛り合わせですね」
そこでちょうど大皿のお肉と野菜を持ってこられ、鉄板の横に置かれる。
思っていたより量が多いが、奈古君はやや嬉しそうな顔を見せた。
「美味そう」
「じゃ、じゃあ、焼きましょうか」
「鳰さんは、何肉が一番好きなんですか?」
「……うーん。と、鶏肉ですかね」
「一緒だ」
奈古君は鉄板にお肉を並べると、ウーロン茶を一口飲む。
目を伏せている表情も正直カッコ良く、よくよく見ると恥ずかしくなってくる。
「……何ですか」
「あっいえ……な、奈古君は身長何センチなんですか」
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