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第八章 『ブルージェット』
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しおりを挟むこじんまりした隠れ家バーのような所で、店内は薄暗く、カウンターが五席、テーブル席が二席。
店内は落ち着いたジャズが流れており、ゆっくり時が過ぎているようだ。
お客は少なく、奥の席にテーブル席に案内された私達は、それぞれカクテルを注文した。
「こうやって幸さんと二人で出かけたのは、B島に行ったっきりですね」
「……そうなりますね」
「あの時は楽しかったなぁ」
自然と笑っている篝さんだが、告白後の帰り道は気まずくて仕方がなかったし、気を使ってもらっているのが分かって、申し訳なかった。
「……もう、二人でも出かけられなくなっちゃいますね」
「暫くはそうなりますね」
「……や……だな」
呟いた声は、静かなメロディーに掻き消され、私は黙り込む。
チラリと前を見ると篝さんと目が合い、彼はじっと私の顔を見た後に口を開いた。
「幸さん、ずっと一人は勿体無いですよ」
「……え」
「俺はダメだったけれど、幸さんが本当に好きだと思える人にまた出会えたら、その人と前を向いて歩いて行けるといいですね」
告白をして振られたような立場の篝さんだが、自分的にはまだ返事をしておらず、それを伝えるために二人になりたかったわけで……。
「あの、篝さ……」
「お待たせ致しました」
タイミング悪くカクテルが運ばれてきて、私は味もわからずゴクッと喉の奥に流し込んだ。
「幸さん、良い飲みっぷりですね。珍しい」
「あの、私、お話したいことがあって」
「何ですか? 俺で良ければ、何でも聞きますよ」
アルコールを含んだからか、やや顔が赤い篝さんだが、態度はいつもと変わらない。
こんな風にお酒の勢いに任せて真面目な話はどうかと思うものの、いつもの自分じゃあ切り出せそうもなかった。
「告白……本当に、ありがとうございました」
「素直な気持ちなので、お礼なんていいですよ」
「私……篝さんのこと、もっと知りたいです」
「俺のことをですか?」
「知りたいん……です」
言うと、篝さんは優しく微笑んで、ありがとう、と言った。
「じゃあ、良ければ遠く行っても、またたまに連絡してもいいですか」
「……」
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