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第八章 『ブルージェット』
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しおりを挟む「ねぇ篝さん、いよりのことも、一緒に転勤先に連れて行ってあげて下さいよ」
「えっちょっと、尚美」
何という事を言うのか、と尚美を見ると、すぐに篝さんの笑い声が聞こえてきた。
「ハハ、連れて行っていいならば、俺も着いて来てほしいですよ」
篝さんは、こんな風に言ってくれている。
夫婦岩に行ってから、篝さんにちゃんと返事してないな……。
私は高校の時の元カレとも、駿ちゃんともちゃんと恋愛してきた。
だから、恋愛できないわけじゃないのに、自分の目に自信がなく、でも他人の意見さえも聞けなくなって、殻に閉じこもったままだった。
けれど、本当にこのままでいいのか。
このまま篝さんと離れてしまっていいのか……。何度も、自分に問う。
「四人で集まるのは最後になるだろうけどさ、また篝こっちに帰ってきた時にでも、このメンバーで集まろう」
「もちろん、また誘ってもらえると嬉しいなぁ」
篝さんはずっと楽しそうに笑っている。
私と目が合っても、自然な笑顔で、話を振ってくれる。
「この後さ、もう一軒って言いたい所だけど、俺も尚美も明日また仕事だから、篝といよりさん、二人で行って来たら?」
「……篝さんと、二人で……」
「ね、行ってきな! いより」
何だか周りから押された形になった感はあったが、まだ自分も篝さんとゆっくり話をしたいことはあり、私達はこのお店で暫く四人で食事をした後、尚美と英木さんと別れることになった。
会計を済ませ外に出ると、真夏に比べると少しだけ暑さは和らいだ。
「じゃあね、いより、気を付けて……と言いたい所だけれど、篝さんが一緒なら大丈夫か」
「うん……ありがとう。尚美、また近々お茶でも」
「連絡待ってるね」
腕を組んで歩いていく尚美と英木さんと見送ると、私は横にいる篝さんを見上げた。
「……あの、篝さん、今からどこに……」
「少し、ゆっくりできる所に行きましょうか」
ゆっくりできる所、と言われても、それがホテルなんかもうちっとも思わなかった。
それはきっと篝さんだからこそであり、やはり彼は私と適度な距離を空けて歩きながら、ビルの五階にあるお店の中に入って行った。
「ここのお店、英木とたまに来てるんですよ」
「へぇ……そうなんだ」
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