エタニティ・イエロー

宝ひかり

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第七章 『心の聲』

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 暑い日は続くが、仕事はいつも通り、私生活はたまに篝さんや、尚美と英木さんと会う日もあり、以前よりも賑やかな生活を送るようになっていき、八月に突入。

 四人の休日が合うのが意外と先にしかなかったものだからか、その前に篝さんからどこかへ行こうと誘いを受けた。

 仕事帰りにご飯へ行くことはたまにあったが、出かけようと言われたのは初めてで少し身構えてしまったが、篝さんとならば……おそらくきっと大丈夫。

 相変わらず、ほんの少しずつ、少しずつしか心を開くことはできない。

 それでも、篝さんはいつも笑顔で話を聞いてくれて、私は今回とても良い友人を持ったのかもしれない。

「幸さーん、こっちです」

「あっ……篝さん、こんにちはっ……」

 お盆を過ぎた平日、私は篝さんと二人で、B島付近をドライブすることになっていた。

 レンタカーを借りて、C街の駅前まで迎えに来てくれた篝さんが、車の窓の奥から手を振っている。

「今日は……よ、宜しくお願いします」

「え、そんなに硬くならないで。さ、行きましょう」

 笑顔の篝さんに、恐る恐る青い扉を開いて、助手席に腰を掛ける。

 何とも慣れない状況で、私は運転席の篝さんを見上げた。

「運転、久しぶりですか?」

「そうなりますね。事故らないよう気を付けます」

 駅前の大通りは、バスやタクシーなども沢山通るため、道が混み中々進まない。

 車内はラジオが流れており、DJの明るい声が聞こえてくる。

「俺、今日すごい楽しみにしてたんです」

「私も……遠出は久々なので」

 真っ青な空が広がる晴天、今日は一日晴れが続くようで、お出かけ日和だ。

「クーラー寒くないですか? 大丈夫?」

「私は大丈夫です」

B島は離島ではなく、B島という地名で、ここから車で一時間くらい離れている場所にある。

 付近にはこの街で一番頭の良い大学が立っており、海も近く自然豊かな場所だ。

 今日は海辺をドライブしながら、海の中にある夫婦岩を見に行く予定であり、街を抜けた車は都市高速を走る。

「……篝さんは、大学を卒業してからずっと、ウェディングプランナーのお仕事をされているんですか?」

「そうですね、もう五年なので、さすがに転勤にもなりそうで」

「えっ、転勤……?」

「大体三年単位で移動なんですけれど、何とか今までは。でも、次は九月頃に発表があるようで、上の方で自分の名前が出てるみたいです」

 篝さんが転勤……。

 やっと、少しずつ仲良くなれていたのに、ここからいなくなってしまうのは悲しいかも……。

「転勤にならないといいですね……」

「ホントですよ。俺もまだここにいたいので」

 嫌だな……転勤か……。






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