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シーン8 ~死亡フラグ発生~
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「それで、要するにミスリード氏は殺人犯でもなさそうだし、不倫もしていないってことですか」
フラグミールが、一部始終を聞き終えてから、言った。
「いや、殺人犯じゃないかどうかは、まだ分からない。ただ、ミスリード氏は凶器の類は一切、持っていなかったし、不審な血痕なんかもなかった。なんとなくだが、殺人犯である可能性は低い印象を受ける」
メイタンテーヌが、事務的に説明した。
「ただひとつ、言えることは」
そこでメイタンテーヌは、きりりとした顔で言った。
「、、、彼は、ど変態だ」
「ど変態、ですか」
フラグミールが、あきれた表情でオウム返しに言った。
「うむ、ドがつく変態、すなわちど変態だ。この件を依頼人である、ミスリード氏の奥方に報告するかどうかは、また考える」
「フラグミール君、女性チームの身体検査結果は、どうだったかね?」
横からボンクラー警部補が、会話をさえぎった。
「そうですね、、、イロケスゴイ夫人は、素晴らしい形とハリです。もしかすると、Gカップはあるかもしれません」
「君は何を言っているんだね、凶器は持っていたのか、いなかったのか」
「あ、そっちの話ですか、もちろん、誰も持ってなかったです」
屋敷には何人か、女性の使用人もいた。フラグミールとイロケスゴイ、それに女性の使用人たちは別室に移動し、相互に監視し合いながら身体検査を完了していた。結果として、誰からも凶器は出てこなかったし、誰の衣服にも血の跡は見られなかった。男性チームも、やはり同じ結果だった。
「全員シロか。となると、やはりフメイナル氏があやしいな。。。」
ボンクラー警部補が、ううむ、と唸りながらいった。
「このあと、どうしますか? もう、夜の12時をまわってます」
フラグミールが尋ねると、ボンクラー警部補は大きな声で言った。
「それでは皆さん! あまり疲れるのもよくない。全員、凶器を持っていないことが分かったところで、皆でこの大広間に集まって就寝しましょう。いや、灯りはつけたままで。椅子やソファ、毛布などをもってきて、ここでめいめいが休むのです」
「冗談じゃない!」
ツギノーギ・セイナル氏がまたしても、大声をあげた。
「凶器がないからといって、この中に犯人がいない保証はないんだろう! こんなところで寝たら、寝首をかかれるかもしれんぞ! 私は、殺人鬼と一緒に寝るのはごめんだ!」
「もちろん、私は一晩中起きています、見張りをします」
ボンクラー警部補の言葉をさえぎり、ツギノーギ氏は言った。
「いいや、だめだ。さきほど屋敷の使用人に聞いたら、客人用の寝室があって、ドアにはちゃんと鍵もかかるそうじゃないか! 私はこんなところは失礼して、そちらで休ませてもらうぞ!」
有無を言わさぬけんまくだ。ボンクラー警部補は、しぶしぶこれを了承した。
「分かりました、、、。単独行動は危険ですが、鍵がかかった部屋であればある程度、安全かもしれません。くれぐれも、お気をつけて。何かあれば知らせて下さい」
他の人間は、やはり一人になるのは心細いということで、大広間にとどまることになった。ツギノーギ氏が、肩をいからせてドスドスと出ていくのを、じっと見つめていた人間がいた。フラグミールだ。
「メイタンテーヌさん、ちょっとちょっと」
「?」
「これ、いかにもなフラグですよ。あの人、やばくないですか? 死亡フラグ立ってます」
フラグミールの牛乳瓶の底のようなメガネが、キラリと光る。
「フラグミール君、君は何を言っているのかね」
「いや、だって、考えてもみて下さいよ。殺人事件があった後に、『こんなところにいるのは嫌だ』と単独行動をする人って、だいたいあとで殺されません? これが『金田一少年の事件簿』なら、死亡確定ですよ、本当に」
「そんな、、、この場が安全か、危険かという状況が、フラグなんかで変わるものじゃないだろう」
「変わりますって!!」
フラグミールが両こぶしを握りしめて、力説した。
「たとえば、あなたが戦場に行ったとしますね。そこで、おもむろにペンダントに入った恋人の写真かなんかを眺めて、『この戦争が終わったら、俺、結婚するんだ』とか言っちゃ、だめでしょう! 絶対に死亡フラグが立って、すぐにそのあとに死ぬでしょう! それと同じで、殺人事件の現場で、『こんなところにいるなんて冗談じゃない、俺は出ていくぞ』とか言ったら、だめなんです。これは常識ですよ!」
メイタンテーヌは、じっと考えこんでいたが、ややあって、口を開いた。
「、、、ごめん、ちょっと意味がわかんない」
「だーかーらー!」
口論する二人をよそに、その場の人間は就寝の準備を始めた。寝心地のよさそうなソファは、女性陣に優先的に割り当てられた。男性陣は、あるものは、どこからか寝やすそうな椅子を持ってきて座り、あるものは、毛布をかぶって雑魚寝するといった具合だった。
しばらくはひそひそとした話し声も聞こえていたが、やがて全員、静かになった。
ボンクラー警部補は全体を見渡せる場所で、椅子にどっかりと座って油断なく周囲に視線を走らせた。しかし、二時間もするとコックリ、コックリと舟をこぎ始めた。
そして数時間が経過し、、、
屋敷にギャッという叫び声がこだました。
とたんに全員が、跳ね起きる。周囲をみわたしながら、ひそひそ声で話し始めた。
「、、、今、何か声がしませんでした?」
「私も聞こえました。何か、悲鳴のような、、、」
「この部屋ではないですね。少し離れた場所です」
たった今、驚いて起きたばかりのボンクラー警部補が眠たい目をこすりながら、いかにも「自分はずっと起きていました」というフリをしながら、コメントする。
「方角的には、ツギノーギ氏の寝ておられる部屋から聞こえた気がしますな。。。何かあったのですかな」
「様子を見に行きますか?」
「全員で見に行くには、およびません。男性何人かで、行くことにしましょう。物陰から何者かが襲ってくる可能性もある、十分に注意してください」
話し合いの末、ボンクラー警部補、メイタンテーヌ、ミスリードの三人が行くことが決まった。ツギノーギ氏が寝ているはずの、客人用寝室までそろそろと移動する。ドアノブを回すと、カギがかかっていた。ガチャガチャと回すが、とても開きそうにない。
「ツギノーギさん! ツギノーギさん、聞こえますか!」
ボンクラー警部補がドンドンと、強くドアを叩いて大声を出す。
それからしばらく待ってみるが、シーンと静まり返っており、返事はない。
「ツギノーギさん! 何か、人の声がしたような気がしますが、大丈夫ですか!」
メイタンテーヌも声を張り上げたが、部屋の中からは物音ひとつしなかった。
「これは、何かあったかもしれない。ドアを壊そう」
ボンクラー警部補はそう言うと、助走をつけて勢いよくドアに体当たりした。
グラ、とドアがゆがむ。
「それもう一回、、、行くぞ!」
ドーンとドアにぶつかると、ドアは破壊された。これで、本日二回目となる。
部屋の中に踏み込んだ三人が見たものは、、、またしても凄惨な光景だった。
ツギノーギ・セイナル氏が、あおむけに倒れている。
心臓のあたりに、大型ナイフが突き刺さっていた。体勢からいって、おそらく、寝ているところをやられたらしかった。
血に染まった胸には、トランプのカードがそっと置いてあった。ボンクラー警部補が、おそるおそる近寄って、手に取る。
ハートの2だ。
「ツ、、、ツギノーギさん!」
「なんてことだ、死んでいるぞ!」
「ツギノーギ・セイナルさんが、次の犠牲になるとは!」
男たちが騒ぎ立てる声は、大広間にいる他の人間たちにも聞こえていた。
屋敷の使用人たちや、イロケスゴイ夫人は皆、一様におびえた表情をしていた。恐ろしい殺人事件が、またしてもこの屋敷の中で起こってしまったのだ。
そんな中で一人、フラグミールだけは、、、
ーーほらみろ、だから言わんこっちゃない。
という、表情をしていた。
フラグミールが、一部始終を聞き終えてから、言った。
「いや、殺人犯じゃないかどうかは、まだ分からない。ただ、ミスリード氏は凶器の類は一切、持っていなかったし、不審な血痕なんかもなかった。なんとなくだが、殺人犯である可能性は低い印象を受ける」
メイタンテーヌが、事務的に説明した。
「ただひとつ、言えることは」
そこでメイタンテーヌは、きりりとした顔で言った。
「、、、彼は、ど変態だ」
「ど変態、ですか」
フラグミールが、あきれた表情でオウム返しに言った。
「うむ、ドがつく変態、すなわちど変態だ。この件を依頼人である、ミスリード氏の奥方に報告するかどうかは、また考える」
「フラグミール君、女性チームの身体検査結果は、どうだったかね?」
横からボンクラー警部補が、会話をさえぎった。
「そうですね、、、イロケスゴイ夫人は、素晴らしい形とハリです。もしかすると、Gカップはあるかもしれません」
「君は何を言っているんだね、凶器は持っていたのか、いなかったのか」
「あ、そっちの話ですか、もちろん、誰も持ってなかったです」
屋敷には何人か、女性の使用人もいた。フラグミールとイロケスゴイ、それに女性の使用人たちは別室に移動し、相互に監視し合いながら身体検査を完了していた。結果として、誰からも凶器は出てこなかったし、誰の衣服にも血の跡は見られなかった。男性チームも、やはり同じ結果だった。
「全員シロか。となると、やはりフメイナル氏があやしいな。。。」
ボンクラー警部補が、ううむ、と唸りながらいった。
「このあと、どうしますか? もう、夜の12時をまわってます」
フラグミールが尋ねると、ボンクラー警部補は大きな声で言った。
「それでは皆さん! あまり疲れるのもよくない。全員、凶器を持っていないことが分かったところで、皆でこの大広間に集まって就寝しましょう。いや、灯りはつけたままで。椅子やソファ、毛布などをもってきて、ここでめいめいが休むのです」
「冗談じゃない!」
ツギノーギ・セイナル氏がまたしても、大声をあげた。
「凶器がないからといって、この中に犯人がいない保証はないんだろう! こんなところで寝たら、寝首をかかれるかもしれんぞ! 私は、殺人鬼と一緒に寝るのはごめんだ!」
「もちろん、私は一晩中起きています、見張りをします」
ボンクラー警部補の言葉をさえぎり、ツギノーギ氏は言った。
「いいや、だめだ。さきほど屋敷の使用人に聞いたら、客人用の寝室があって、ドアにはちゃんと鍵もかかるそうじゃないか! 私はこんなところは失礼して、そちらで休ませてもらうぞ!」
有無を言わさぬけんまくだ。ボンクラー警部補は、しぶしぶこれを了承した。
「分かりました、、、。単独行動は危険ですが、鍵がかかった部屋であればある程度、安全かもしれません。くれぐれも、お気をつけて。何かあれば知らせて下さい」
他の人間は、やはり一人になるのは心細いということで、大広間にとどまることになった。ツギノーギ氏が、肩をいからせてドスドスと出ていくのを、じっと見つめていた人間がいた。フラグミールだ。
「メイタンテーヌさん、ちょっとちょっと」
「?」
「これ、いかにもなフラグですよ。あの人、やばくないですか? 死亡フラグ立ってます」
フラグミールの牛乳瓶の底のようなメガネが、キラリと光る。
「フラグミール君、君は何を言っているのかね」
「いや、だって、考えてもみて下さいよ。殺人事件があった後に、『こんなところにいるのは嫌だ』と単独行動をする人って、だいたいあとで殺されません? これが『金田一少年の事件簿』なら、死亡確定ですよ、本当に」
「そんな、、、この場が安全か、危険かという状況が、フラグなんかで変わるものじゃないだろう」
「変わりますって!!」
フラグミールが両こぶしを握りしめて、力説した。
「たとえば、あなたが戦場に行ったとしますね。そこで、おもむろにペンダントに入った恋人の写真かなんかを眺めて、『この戦争が終わったら、俺、結婚するんだ』とか言っちゃ、だめでしょう! 絶対に死亡フラグが立って、すぐにそのあとに死ぬでしょう! それと同じで、殺人事件の現場で、『こんなところにいるなんて冗談じゃない、俺は出ていくぞ』とか言ったら、だめなんです。これは常識ですよ!」
メイタンテーヌは、じっと考えこんでいたが、ややあって、口を開いた。
「、、、ごめん、ちょっと意味がわかんない」
「だーかーらー!」
口論する二人をよそに、その場の人間は就寝の準備を始めた。寝心地のよさそうなソファは、女性陣に優先的に割り当てられた。男性陣は、あるものは、どこからか寝やすそうな椅子を持ってきて座り、あるものは、毛布をかぶって雑魚寝するといった具合だった。
しばらくはひそひそとした話し声も聞こえていたが、やがて全員、静かになった。
ボンクラー警部補は全体を見渡せる場所で、椅子にどっかりと座って油断なく周囲に視線を走らせた。しかし、二時間もするとコックリ、コックリと舟をこぎ始めた。
そして数時間が経過し、、、
屋敷にギャッという叫び声がこだました。
とたんに全員が、跳ね起きる。周囲をみわたしながら、ひそひそ声で話し始めた。
「、、、今、何か声がしませんでした?」
「私も聞こえました。何か、悲鳴のような、、、」
「この部屋ではないですね。少し離れた場所です」
たった今、驚いて起きたばかりのボンクラー警部補が眠たい目をこすりながら、いかにも「自分はずっと起きていました」というフリをしながら、コメントする。
「方角的には、ツギノーギ氏の寝ておられる部屋から聞こえた気がしますな。。。何かあったのですかな」
「様子を見に行きますか?」
「全員で見に行くには、およびません。男性何人かで、行くことにしましょう。物陰から何者かが襲ってくる可能性もある、十分に注意してください」
話し合いの末、ボンクラー警部補、メイタンテーヌ、ミスリードの三人が行くことが決まった。ツギノーギ氏が寝ているはずの、客人用寝室までそろそろと移動する。ドアノブを回すと、カギがかかっていた。ガチャガチャと回すが、とても開きそうにない。
「ツギノーギさん! ツギノーギさん、聞こえますか!」
ボンクラー警部補がドンドンと、強くドアを叩いて大声を出す。
それからしばらく待ってみるが、シーンと静まり返っており、返事はない。
「ツギノーギさん! 何か、人の声がしたような気がしますが、大丈夫ですか!」
メイタンテーヌも声を張り上げたが、部屋の中からは物音ひとつしなかった。
「これは、何かあったかもしれない。ドアを壊そう」
ボンクラー警部補はそう言うと、助走をつけて勢いよくドアに体当たりした。
グラ、とドアがゆがむ。
「それもう一回、、、行くぞ!」
ドーンとドアにぶつかると、ドアは破壊された。これで、本日二回目となる。
部屋の中に踏み込んだ三人が見たものは、、、またしても凄惨な光景だった。
ツギノーギ・セイナル氏が、あおむけに倒れている。
心臓のあたりに、大型ナイフが突き刺さっていた。体勢からいって、おそらく、寝ているところをやられたらしかった。
血に染まった胸には、トランプのカードがそっと置いてあった。ボンクラー警部補が、おそるおそる近寄って、手に取る。
ハートの2だ。
「ツ、、、ツギノーギさん!」
「なんてことだ、死んでいるぞ!」
「ツギノーギ・セイナルさんが、次の犠牲になるとは!」
男たちが騒ぎ立てる声は、大広間にいる他の人間たちにも聞こえていた。
屋敷の使用人たちや、イロケスゴイ夫人は皆、一様におびえた表情をしていた。恐ろしい殺人事件が、またしてもこの屋敷の中で起こってしまったのだ。
そんな中で一人、フラグミールだけは、、、
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