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ー光ー 第十章 鬼使神差
第百三十六話 焦る他国
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その頃玲瓏美国では。
「桜雲天国が滅びたそうだ!!」
「お、桜雲天国が!?」
「嘘だろ......」
玲瓏美国の街は騒がしくなっている。
桜雲天国が滅びたという情報が入ると、流れる水のように一瞬で広まった。
こちらの国は太陽は沈んでいない。人間界のように太陽と月は一つしかない訳ではなく、不思議なことに各国に一つづつあるのだ。
そのため、元桜雲天国があったアタラヨ鬼神国のずっと太陽が沈んでいても、こちらの国では太陽は登っており明るい。
しかし、皆は鬼神に恐れ青ざめた顔をしている。
昼間でも真夜中のような暗い雰囲気が続いている。
「でも......昨日鬼神が現れたって情報が来たばかりじゃない......」
「まさか一日で天国はやられたのか!?」
「鬼神...どれだけ強いんだ!」
桜雲天国は一日で滅びた。
鬼神と出会ったことがない神々は鬼神の強さが分からない。しかし国の評価による順位は三百八十二位中の五位である桜雲天国が一日で滅びたとなると、かなり強いことだとよく分かる。
城では美梓豪たちは大広間に集まり話し合っている。
「天国が......滅びた......」
美梓豪......いや、皆はいまだに心の整理が出来ておらず、桜雲天国が滅びていないと信じられないのだ。
「姉上からいまだに連絡が取れていません......」
美朝阳は手から光をだし、天万姫と連絡を取ろうとしているのだが、一向に返事がない。取れないのは当たり前だ。死んだのだから。
「お姉様たちは死んじゃったの?」
美夢華は美鈴玉の膝に座り、大粒の涙を流しながら言った。天万姫と仲が良かった美鈴玉も悲しげな表情をしてずっと下を向いている。
「もう光琳様や麗華様、俊熙様には会えないのですか...?」
「会いたい......」
美暁龍と美雪蘭も悲しそうにしている。
皆、天光琳が落暗と共に桜雲天国を滅ぼしたなんて知らないのだろう。
「鬼神が何を企んでいるかは分からないが......玲瓏美国もいつ襲われてもおかしくない。鬼神との戦いに備えて準備をしておくべきだ」
美梓豪が真剣な顔でそう言うと皆は力強く頷いた。特に玲瓏美国は一位の国だ。襲われる可能性が高い。
「それと......鬼神を倒すまで、王の許可がなくても他国への移動を許可しよう」
美梓豪は桜雲天国で、天宇軒が死に多くの神々が他国へ避難できず命を落としたことは知らないのだが、桜雲天国のようなことが起こることを予想した。
狙われやすいのは王だ。王が命を落とせば国の神々も助からないと言っていいだろう。
すると美ルーナが不安そうな顔をした。
「けれど、もし鬼神が現れて多くの神々が他国へ避難してしまったら、美国へ残って戦ってくれる神が減ってしまうのではないかしら......」
「確かに...」と皆は思った。
桜雲天国が一日で滅ぼされたと聞いているため、神々は皆戦うより逃げてしまうだろう。
そのため、自由に行ききできるようにしてしまったら戦う時に神々が少なく、不利になってしまう可能性が高い。
「それも承知の上で言っている。しかし我が国の神々には国を守って命を落とすより、国を捨てて生き残って欲しいんだ。美国の神をこの世から消したくない......だから君たちも国を捨てて逃げても良いぞ」
美梓豪がそう言うと皆は目を丸くした。王一族であると言うのに国を捨てても良いとは......。
しかし美梓豪の狙いは、逃げて生き残れば、再び玲瓏美国を作り直すことが出来る......ということなのだろう。
だが......国王であり神王である美梓豪はどうするのだろうか。
「俺は最後まで残るよ。この愛国を滅ぼさせたりはしない」
美梓豪の目には迷いがなかった。本気なのだろう。天宇軒たちのように逃げずに国を守る。
それが王の役目なのだから。
「私も残るわ。もうこの脚では何も出来ないけれど、王妃としてずっと梓豪さんのそばにいると決めたもの」
美ルーナは残るようだ。
自由に歩くことは出来ないが、愛する神を捨てて逃げたくないのだろう。
「私も残ります。王の息子として、この国を守ります」
美朝阳がそう言うと美鈴玉も言おうとしたが、その前に美梓豪が口を開いた。
「鈴玉、夢夢、雪蘭、暁龍は逃げるんだ」
「えっ!?......私も残ります!」
美鈴玉は反対した。しかし美朝阳は美梓豪に賛成しているようで頷いた。
「父上たちと離れたくない!」
「そうです!僕も役に立ちたいです!」
「逃げたくないです」
美夢華たちも反対しているようだ。
しかし美朝阳は首を振った。
「私たちは国を守るだけ。死ぬわけじゃないよ」
「そうだ。鬼神を倒して国を守る。だから安心するんだぞ!」
本当は勝てないと分かっているのだが、せめて幼い美夢華たちには生きていて欲しいのだ。
美鈴玉たちは納得していない様子だが、王の言うことには逆らえない。
すると、突然、他国から連絡が来たようで、美梓豪は手から光を出した。
美梓豪は光を見て、目を大きく見開いた。
この表情からして良いことでは無さそうだ。
「どうしたの?」と美ルーナが聞くと、美梓豪は美ルーナの両手を包み込んだ。
「......蒼海アジュール国に......」
「......え...?」
それだけでも何となく伝わる。
美ルーナは顔を青ざめた。
皆もこの状況を理解した。
理解していないのは幼い美夢華と美暁龍と美雪蘭だけだ。
「何があったのですか?」
「護衛神たちよ、蒼海アジュール国の神々が避難してくる可能性がある。避難してきた神々をこの大広間に誘導してくれ!」
美雪蘭の質問は美梓豪の声でかき消されてしまった。
しかし先程の美梓豪のセリフを聞いて皆理解した。
恐らく、美ルーナが元々いた国"蒼海アジュール国に鬼神が現れた"という方向だろう。
「はっ」数名の護衛神は返事をすると、立ち上がり、他国へ移動できる結界がある塔へ向かって走っていった。
美ルーナは自分の手を強く握り、皆の無事を祈っている。
蒼海アジュール国が滅びてしまうかもしれないからだ。
「どうか無事でいてほしいわ......」
「桜雲天国が滅びたそうだ!!」
「お、桜雲天国が!?」
「嘘だろ......」
玲瓏美国の街は騒がしくなっている。
桜雲天国が滅びたという情報が入ると、流れる水のように一瞬で広まった。
こちらの国は太陽は沈んでいない。人間界のように太陽と月は一つしかない訳ではなく、不思議なことに各国に一つづつあるのだ。
そのため、元桜雲天国があったアタラヨ鬼神国のずっと太陽が沈んでいても、こちらの国では太陽は登っており明るい。
しかし、皆は鬼神に恐れ青ざめた顔をしている。
昼間でも真夜中のような暗い雰囲気が続いている。
「でも......昨日鬼神が現れたって情報が来たばかりじゃない......」
「まさか一日で天国はやられたのか!?」
「鬼神...どれだけ強いんだ!」
桜雲天国は一日で滅びた。
鬼神と出会ったことがない神々は鬼神の強さが分からない。しかし国の評価による順位は三百八十二位中の五位である桜雲天国が一日で滅びたとなると、かなり強いことだとよく分かる。
城では美梓豪たちは大広間に集まり話し合っている。
「天国が......滅びた......」
美梓豪......いや、皆はいまだに心の整理が出来ておらず、桜雲天国が滅びていないと信じられないのだ。
「姉上からいまだに連絡が取れていません......」
美朝阳は手から光をだし、天万姫と連絡を取ろうとしているのだが、一向に返事がない。取れないのは当たり前だ。死んだのだから。
「お姉様たちは死んじゃったの?」
美夢華は美鈴玉の膝に座り、大粒の涙を流しながら言った。天万姫と仲が良かった美鈴玉も悲しげな表情をしてずっと下を向いている。
「もう光琳様や麗華様、俊熙様には会えないのですか...?」
「会いたい......」
美暁龍と美雪蘭も悲しそうにしている。
皆、天光琳が落暗と共に桜雲天国を滅ぼしたなんて知らないのだろう。
「鬼神が何を企んでいるかは分からないが......玲瓏美国もいつ襲われてもおかしくない。鬼神との戦いに備えて準備をしておくべきだ」
美梓豪が真剣な顔でそう言うと皆は力強く頷いた。特に玲瓏美国は一位の国だ。襲われる可能性が高い。
「それと......鬼神を倒すまで、王の許可がなくても他国への移動を許可しよう」
美梓豪は桜雲天国で、天宇軒が死に多くの神々が他国へ避難できず命を落としたことは知らないのだが、桜雲天国のようなことが起こることを予想した。
狙われやすいのは王だ。王が命を落とせば国の神々も助からないと言っていいだろう。
すると美ルーナが不安そうな顔をした。
「けれど、もし鬼神が現れて多くの神々が他国へ避難してしまったら、美国へ残って戦ってくれる神が減ってしまうのではないかしら......」
「確かに...」と皆は思った。
桜雲天国が一日で滅ぼされたと聞いているため、神々は皆戦うより逃げてしまうだろう。
そのため、自由に行ききできるようにしてしまったら戦う時に神々が少なく、不利になってしまう可能性が高い。
「それも承知の上で言っている。しかし我が国の神々には国を守って命を落とすより、国を捨てて生き残って欲しいんだ。美国の神をこの世から消したくない......だから君たちも国を捨てて逃げても良いぞ」
美梓豪がそう言うと皆は目を丸くした。王一族であると言うのに国を捨てても良いとは......。
しかし美梓豪の狙いは、逃げて生き残れば、再び玲瓏美国を作り直すことが出来る......ということなのだろう。
だが......国王であり神王である美梓豪はどうするのだろうか。
「俺は最後まで残るよ。この愛国を滅ぼさせたりはしない」
美梓豪の目には迷いがなかった。本気なのだろう。天宇軒たちのように逃げずに国を守る。
それが王の役目なのだから。
「私も残るわ。もうこの脚では何も出来ないけれど、王妃としてずっと梓豪さんのそばにいると決めたもの」
美ルーナは残るようだ。
自由に歩くことは出来ないが、愛する神を捨てて逃げたくないのだろう。
「私も残ります。王の息子として、この国を守ります」
美朝阳がそう言うと美鈴玉も言おうとしたが、その前に美梓豪が口を開いた。
「鈴玉、夢夢、雪蘭、暁龍は逃げるんだ」
「えっ!?......私も残ります!」
美鈴玉は反対した。しかし美朝阳は美梓豪に賛成しているようで頷いた。
「父上たちと離れたくない!」
「そうです!僕も役に立ちたいです!」
「逃げたくないです」
美夢華たちも反対しているようだ。
しかし美朝阳は首を振った。
「私たちは国を守るだけ。死ぬわけじゃないよ」
「そうだ。鬼神を倒して国を守る。だから安心するんだぞ!」
本当は勝てないと分かっているのだが、せめて幼い美夢華たちには生きていて欲しいのだ。
美鈴玉たちは納得していない様子だが、王の言うことには逆らえない。
すると、突然、他国から連絡が来たようで、美梓豪は手から光を出した。
美梓豪は光を見て、目を大きく見開いた。
この表情からして良いことでは無さそうだ。
「どうしたの?」と美ルーナが聞くと、美梓豪は美ルーナの両手を包み込んだ。
「......蒼海アジュール国に......」
「......え...?」
それだけでも何となく伝わる。
美ルーナは顔を青ざめた。
皆もこの状況を理解した。
理解していないのは幼い美夢華と美暁龍と美雪蘭だけだ。
「何があったのですか?」
「護衛神たちよ、蒼海アジュール国の神々が避難してくる可能性がある。避難してきた神々をこの大広間に誘導してくれ!」
美雪蘭の質問は美梓豪の声でかき消されてしまった。
しかし先程の美梓豪のセリフを聞いて皆理解した。
恐らく、美ルーナが元々いた国"蒼海アジュール国に鬼神が現れた"という方向だろう。
「はっ」数名の護衛神は返事をすると、立ち上がり、他国へ移動できる結界がある塔へ向かって走っていった。
美ルーナは自分の手を強く握り、皆の無事を祈っている。
蒼海アジュール国が滅びてしまうかもしれないからだ。
「どうか無事でいてほしいわ......」
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