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ー光ー 第十章 鬼使神差

第百三十二話 復讐

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 天桜山に着いた。
 ここには既にドロドロの生物たちが大量にいて、ここに逃げたものはほとんど亡くなっているだろう。


「光琳っ!!」


 名前を呼ばれ振り返った。
 するとドロドロの生物に襲われている睿がいた。


「助けてくれ!!頼む!!」

「......」


 天光琳は動かなかった。
 いい気味だ。
 そう思いながら天光琳は細い目で睿を見つめた。


「お願いだ光琳!!」


 すると天光琳は睿の近くまで歩いてきた。
 天李偉の時と同じように、天光琳が近づくとドロドロの生物は睿を襲うのを辞めた。
 睿は全身を震わせながら呼吸を整えている。
 天光琳は睿の近くでしゃがんだ。


「光琳様?......助けるのですか?」


 落暗は心配そうに見つめている。


「はぁ......助かった......って言うと思ったか!」

「!?」


 睿は天光琳の腹部をナイフで刺そうとした。
 ......が、天光琳は睿が刺す前に睿の心臓を針で突き刺した。
 天光琳は睿が攻撃してくることを何となく察していたようだった。


「お前を助けるわけが無い」

「おぉ......安心しました」


 そう言って光琳は立ち上がり落暗の所へ行った。
 睿は苦しそうにしながらも必死に叫んだ。


「光琳!お前が悪いんだろ!!なぜ...俺がこんな目にあわなきゃ行けないんだ、なんで俺がお前に殺されなきゃ行けないんだ!俺は......お前のせいで......人生がめちゃくちゃになった...のに、お前は俺のせいで...人生がめちゃくちゃになった......って......思ってるのかっ!?」


 喋る度血が吹き出してきて、喋りにくくそうにしているが、それでも睿の怒りはおさまらなかった。


「俺の......母さん......は...お前のせいで死んだんだぞっ!?」

「......」


 前の天光琳はそれを聞いて驚き自分を責めるだろう。しかし今の天光琳は表情を少しも変えることは無かった。
「それがどうした」といっているかのようだった。
 睿は下唇を噛んだ。


「......もうお前は皆を殺したんだから俺が今殺しても無罪だよな......」


 睿は血だらけの手でナイフを握りしめ、天光琳に向けた。


「お前を殺してやる!復讐してやるっ!」

「うるさい」


 睿がそうそういい、天光琳に向かって走ってきた。
 しかし天光琳は素早く避ける。
 修行や稽古を何年も続けていた天光琳には叶うわけが無い。

 天光琳は扇を作り素早く右から左へと扇を動かした。
 すると睿の腹部に針が刺さった。


「がはっ......」


 心臓を刺され、腹部も刺され......神とはいえ流石にもう耐えられない。
 睿の手からナイフが落ち、膝から崩れ落ちた。


「...光琳......お前......目を......覚ませよ......」

「......」


 睿はその言葉を最後に息を引き取った。


「しつこいですね、こいつ」

「うん」


 天光琳は神を倒せば倒すほど強くなるのだろうか。
 落暗はあまり手を出さず、遠くで見守っているだけだった。

 天光琳は扇を消し、ため息をついた。


「疲れましたか?」

「うんん。大丈夫」


 別に疲れた訳では無い。しかし何故か胸が痛む。
 神を殺す度、どんどん苦しくなってくる。


 (なんでだろう)


 天光琳は分からなかった。
 何故苦しいのか、何故心が痛むのだろうか。
 皆自分をいじめてきた神だ。自分の人生をめちゃくちゃにした神だ。
 そんなの殺したってなんとも思わないはずなのに......。

 天光琳と落暗は天桜山を歩き回った。
 枯れている桜、転がっている神々......天桜山は随分と変わってしまった。
 ここは修行していた場所だ。
 しかしあの頃に戻りたいなど、ちっとも思わなかった。

 すると頭の中にある一神の姿が浮かんできた。
 よく修行に着いて来てくれた......酒好きで面倒見が良くて兄のような存在の神だ。

 (......殺したっけな...)

 誰を殺したかなんて全く覚えていない。
 もう既に死んでいるかもしれない。誰
 が生きてて誰がもう亡くなっているのか全く分からないのだ。
 しかし桜雲天国は滅びるのだから死からは逃げられないだろう。


 (......ここ...)


 目の前には建物が崩れていた。これは......今まで舞をしていた小屋だ。



「光琳!!」


 天光琳と落暗は振り返った。

  


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