107 / 184
ー光ー 第八章 佳宵星国
第百六話 ぬいぐるみ
しおりを挟む
朝食を終えたあと、三神は佳宵星国の街を歩いた。
朝食に毒は含まれていなかったようで、二神は安心した。
......ということはおそらく星玉風は悪い神ではないのだろう。
そう思うと逆に、星玉風のことが心配になってきた。
星連杰の邪魔をしたことになる。......重い罰を受けるのではないか?
おそらく、朝食を終えたのに城に帰らないのはそれが理由なのかもしれない。
とはいえ、星玉風は昨日の夜、星連杰と星玉風が話していた内容が、天光琳に聞かれていたなんて知らない。
このことについては何も言わない方が良いだろう。
「光琳さんは好きな物、なにかありますか?」
星玉風は天光琳ばかりに話しかける。天麗華にはあまり目を合わせなかった。
「好きな物......特に......」
「そうですか......うーん......」
行くところがなく、ただ街を歩いているだけだった。
天麗華も気になる店は特に内容で二神の後ろでゆっくりと歩いている。
「あ、あそこのぬいぐるみ専門店、可愛いんですよ。光琳さんに一つプレゼントしたいのですが......」
星玉風が指を指したところを見ると、そのお店の窓からうさぎやくまなどの可愛いぬいぐるみが見えた。
「私の妹たちがこういうぬいぐるみが大好きでして、よく言ってたんです。ぬいぐるみだけではなく、ぬいぐるみの衣装やアクセサリー、小物まで売っているんですよ。よく買ってあげたのを思い出します......」
星玉風は懐かしそうに微笑みながら言った。
......しかし、その笑顔はすぐに消え、暗い顔をした。
「......でも妹は.........あ、すいません。この年齢でぬいぐるみなんていらないですよね」
今は亡き妹のことを思い出してしまい、星玉風は暗い顔をしたのだろう。
天光琳は何となく察した。
「行ってみたいです。僕もぬいぐるみ好きですよ」
天光琳が微笑みながら言うと、星玉風は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「なら良かったです」
三神はぬいぐるみ専門店にはいった。
店は小さな女神が好きそうなぬいぐるみがたくさん並んでいた。
「このぬいぐるみは......夢夢が好きそうね」
「ですね。これとかも......」
天光琳も実はこういう可愛いぬいぐるみが好きで、目を輝かせながらぬいぐるみを眺めた。
そして、天光琳はあるぬいぐるみに目が止まった。
桜が着いたリボンのシュシュを耳につけているクリーム色のクマのぬいぐるみだ。
天光琳はそのぬいぐるみを手に取り、抱き抱えた。
天光琳の顔のサイズぐらいの大きさで少し重いが、ふわふわしていて心地よい。
「可愛い~~っ」
十八歳男神というのに、小さな女神のように微笑んでいる。
......と天光琳は星玉風と目が合った。
星玉風は天光琳をずっと見ていたようだ。
(恥ずかし......)
天光琳はそう思い、ぬいぐるみを元の場所に置こうとしたら、星玉風が「待って」と言って止めた。
「莉莉(リリ)......音音(インイン)......」
「......?」
星玉風はボソッとつぶやき、下を向いた。
「......私の妹たちも......そのぬいぐるみを気に入り、色違いのものをプレゼントしました」
莉莉と音音...はおそらく妹たちのことだろう。
「そうなんですね。......玉風様......?」
星玉風の目は赤くなり涙が溢れていた。
「ごめんなさい突然......。実は...私の妹たちと光琳さん......似ているなって思っていまして......」
「......え?」
星連杰は目を擦りながら言った。
「笑った顔がそっくりなんです......。昨日初めて会った時、驚きました。それで......時々光琳さんを妹のように接しちゃいました」
星玉風の亡くなった家族は全員突然倒れて亡くなったと聞いた。
突然...ということは、亡くなったと聞いてしばらく受け入れられなかっただろう。
この様子からするととても仲が良かったはずだ。
「そのぬいぐるみ、プレゼントさせてください」
「......はい、ありがとうございます」
天光琳は微笑んだ。
妹思いの兄なのだろう。きっと良い兄だったはずだ。
星玉風は天光琳からぬいぐるみを受け取り、涙を浮かべながら微笑んだ。
「ありがとうございます」
✿❀✿❀✿
日が落ちてきて、街で夕食を済ませてきたあと、三神は城に戻ってきた。
天光琳は殺されるのではないか......という不安より、星玉風が大丈夫なのか...という不安の方が大きかった。
朝食も昼食も夕食も全て街で食べてきた。
天光琳は毒の入った料理を食べることは無かったが、計画を全て邪魔した星玉風はどうなってしまうのだろうか。
天光琳は部屋でくまのぬいぐるみを抱きしめた。
「玉風さんは......良い神なのね」
「ですね......疑っていた自分を殴りたいです」
天麗華も心配しているようだ。
湯浴みし、もう寝るだけなのだが、二神はなかなか寝付けなかった。
天光琳はくまのぬいぐるみの服を着替えさせた。
服やアクセサリーも何個かプレゼントしてくれたのだ。
星玉風は「女神扱いして申し訳ない」と何度も謝っていたのだが、天光琳はとても嬉しかった。
「明日......やっと帰れるけれど...玉風様のことが心配で......」
「そうね。......このことも父上に報告しなければ」
昨日の話のことは、既に伝えたそうだ。
先程も天麗華は今日あったことを神の力を使って天宇軒に伝えていた。
何とかならないだろうか。
そしてなぜこんなに佳宵星国の神々は暗いのだろうか。
そこにも何かあるはずだ。
一位の国とはいえ、やはりよい国では無い。
二神はずっと考えていて眠れなかった。
朝食に毒は含まれていなかったようで、二神は安心した。
......ということはおそらく星玉風は悪い神ではないのだろう。
そう思うと逆に、星玉風のことが心配になってきた。
星連杰の邪魔をしたことになる。......重い罰を受けるのではないか?
おそらく、朝食を終えたのに城に帰らないのはそれが理由なのかもしれない。
とはいえ、星玉風は昨日の夜、星連杰と星玉風が話していた内容が、天光琳に聞かれていたなんて知らない。
このことについては何も言わない方が良いだろう。
「光琳さんは好きな物、なにかありますか?」
星玉風は天光琳ばかりに話しかける。天麗華にはあまり目を合わせなかった。
「好きな物......特に......」
「そうですか......うーん......」
行くところがなく、ただ街を歩いているだけだった。
天麗華も気になる店は特に内容で二神の後ろでゆっくりと歩いている。
「あ、あそこのぬいぐるみ専門店、可愛いんですよ。光琳さんに一つプレゼントしたいのですが......」
星玉風が指を指したところを見ると、そのお店の窓からうさぎやくまなどの可愛いぬいぐるみが見えた。
「私の妹たちがこういうぬいぐるみが大好きでして、よく言ってたんです。ぬいぐるみだけではなく、ぬいぐるみの衣装やアクセサリー、小物まで売っているんですよ。よく買ってあげたのを思い出します......」
星玉風は懐かしそうに微笑みながら言った。
......しかし、その笑顔はすぐに消え、暗い顔をした。
「......でも妹は.........あ、すいません。この年齢でぬいぐるみなんていらないですよね」
今は亡き妹のことを思い出してしまい、星玉風は暗い顔をしたのだろう。
天光琳は何となく察した。
「行ってみたいです。僕もぬいぐるみ好きですよ」
天光琳が微笑みながら言うと、星玉風は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「なら良かったです」
三神はぬいぐるみ専門店にはいった。
店は小さな女神が好きそうなぬいぐるみがたくさん並んでいた。
「このぬいぐるみは......夢夢が好きそうね」
「ですね。これとかも......」
天光琳も実はこういう可愛いぬいぐるみが好きで、目を輝かせながらぬいぐるみを眺めた。
そして、天光琳はあるぬいぐるみに目が止まった。
桜が着いたリボンのシュシュを耳につけているクリーム色のクマのぬいぐるみだ。
天光琳はそのぬいぐるみを手に取り、抱き抱えた。
天光琳の顔のサイズぐらいの大きさで少し重いが、ふわふわしていて心地よい。
「可愛い~~っ」
十八歳男神というのに、小さな女神のように微笑んでいる。
......と天光琳は星玉風と目が合った。
星玉風は天光琳をずっと見ていたようだ。
(恥ずかし......)
天光琳はそう思い、ぬいぐるみを元の場所に置こうとしたら、星玉風が「待って」と言って止めた。
「莉莉(リリ)......音音(インイン)......」
「......?」
星玉風はボソッとつぶやき、下を向いた。
「......私の妹たちも......そのぬいぐるみを気に入り、色違いのものをプレゼントしました」
莉莉と音音...はおそらく妹たちのことだろう。
「そうなんですね。......玉風様......?」
星玉風の目は赤くなり涙が溢れていた。
「ごめんなさい突然......。実は...私の妹たちと光琳さん......似ているなって思っていまして......」
「......え?」
星連杰は目を擦りながら言った。
「笑った顔がそっくりなんです......。昨日初めて会った時、驚きました。それで......時々光琳さんを妹のように接しちゃいました」
星玉風の亡くなった家族は全員突然倒れて亡くなったと聞いた。
突然...ということは、亡くなったと聞いてしばらく受け入れられなかっただろう。
この様子からするととても仲が良かったはずだ。
「そのぬいぐるみ、プレゼントさせてください」
「......はい、ありがとうございます」
天光琳は微笑んだ。
妹思いの兄なのだろう。きっと良い兄だったはずだ。
星玉風は天光琳からぬいぐるみを受け取り、涙を浮かべながら微笑んだ。
「ありがとうございます」
✿❀✿❀✿
日が落ちてきて、街で夕食を済ませてきたあと、三神は城に戻ってきた。
天光琳は殺されるのではないか......という不安より、星玉風が大丈夫なのか...という不安の方が大きかった。
朝食も昼食も夕食も全て街で食べてきた。
天光琳は毒の入った料理を食べることは無かったが、計画を全て邪魔した星玉風はどうなってしまうのだろうか。
天光琳は部屋でくまのぬいぐるみを抱きしめた。
「玉風さんは......良い神なのね」
「ですね......疑っていた自分を殴りたいです」
天麗華も心配しているようだ。
湯浴みし、もう寝るだけなのだが、二神はなかなか寝付けなかった。
天光琳はくまのぬいぐるみの服を着替えさせた。
服やアクセサリーも何個かプレゼントしてくれたのだ。
星玉風は「女神扱いして申し訳ない」と何度も謝っていたのだが、天光琳はとても嬉しかった。
「明日......やっと帰れるけれど...玉風様のことが心配で......」
「そうね。......このことも父上に報告しなければ」
昨日の話のことは、既に伝えたそうだ。
先程も天麗華は今日あったことを神の力を使って天宇軒に伝えていた。
何とかならないだろうか。
そしてなぜこんなに佳宵星国の神々は暗いのだろうか。
そこにも何かあるはずだ。
一位の国とはいえ、やはりよい国では無い。
二神はずっと考えていて眠れなかった。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから
真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」
期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。
※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。
※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。
※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。
※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる