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ー光ー 第三章 旅の後
第五十二話 義務
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今日の朝食は和食だった。
ご飯に味噌汁、焼き魚。小鉢に漬物やだし巻き玉子など、だしの効いた食べ物ばかりだ。
朝から甘いフレンチトーストやパンケーキなども良いけれど、寒くなってきた時期に味噌汁はとても温まる。
朝食を食べ終わったあと、天光琳と天俊熙は天宇軒に呼び止められた。
「光琳、怪我の治り具合はどうだ?」
「もうほとんど治っています。もう修行とか舞とか......激しい動きもできるぐらいです」
天宇軒は顎に手を当て、ふむふむ...と小さく頷いた。
「なら今週は人間の願いを叶えられるか?」
「あー...はい......」
天光琳は小さく返事をした。
「分かった。では」
そう言って天宇軒はその場を去った。
さすがに二週間連続、神界のルールを破ることは出来ない。大怪我をしていたとはいえ、神は治りが早いため、言い訳が出来ない。
それに神界のルールを決めている、神王星連杰はちょっと......いやかなりめんどくさい神だ。
天宇軒に『天国の三神はまだ治らないのか?そろそろ治る頃だろう。治ったら、先週俺が作ったルールを破ったのだから、きちんとやらせるように』
と文字を送って連絡をしてきた。
...ちなみに連絡は、よく使われている連絡方法だと、神の力を使い、水晶玉のような小さく透明な丸い光を出して、声を録音したり文字を映したりする。
そして送った神の近くに現れ、その光から声が聞こえたり、文字が浮かんでいたりする...という方法だ。
この連絡方法は神の力がないと使えないため、天光琳は使えない。
とても楽なのだが、天光琳は使ったことがないのだ。
...話を戻そう。
星連杰は口数は少ないが文字だけでもかなり面倒くささが伝わってくる。
...自分が一番偉いからと調子に乗っている感じがする。正直、いつか暗殺されるのではないか...と言うほどめんどくさい。
天光琳と天俊熙はまだあったことは無いが、星連杰はそういう神なのだと理解しているほど、めんどくさい神王として有名なのだ。
そのため、二神は先程天宇軒があんなことを言ったのも、星連杰から何か言われたのだと何となく分かっていた。
「今日......やるか...」
「うん...。頑張る......」
天光琳の顔は魂が抜けたかのように顔色が悪いが、やらなければいけない。
二神は人間の願いを叶えるため、いつものような軽い服ではなく正装にし、扇を持ってそのまま塔へ向かった。
「麗華様はもう終わったのかな?」
「姉上は昨日今週の分...先週の分も終わらせたって言っていた気がする......」
ということは、昨日六回以上人間の願いを叶えたということになる。
しかし、天麗華は毎週十回以上は必ず人間の願いを叶えるため、まだまだやるのだろう。
二神は塔の中に入ると、立ち止まった。
「なぁ......ここって一部屋に一神しか入れないんだよな...?」
「うん。そうだけど......どうしたの?」
天俊熙は困った顔をしている。
「さすがにないと思うけど......これからお前は一神になるだろ?悪神がこの機会を狙って襲ってきたりしないかな...って思って」
「あー...」
確かに、悪神は天光琳が一神の時を狙っている可能性は高く、ここで別れるのは危険な気がする。
しかし、各部屋へ行くには、階段を使って自力で行ける訳ではなく、陣の上に立ち、塔に込められている神の力を使って行くのだ。
これは、塔に込められている神の力で行けるため、陣の上に立つ神は、神の力を使わなくても良い。
だが、必ず、一部屋の前に一神運ばれるようにしてあるため、絶対に二神一緒の部屋に運ばれることはない。
「でも、この塔には桜雲天国の神しか入れないはず......」
「あー、そっか!なら安心だな」
入口には結界が張ってある。
そのため、他国の神が入ろうとすると、結界が現れ、跳ね返ってしまい入れないのだ。
それに、よく良く考えれば、一部屋に一神しか行けない...ということは、もし悪神が結界を壊し入ってきたとしても、きっと天光琳とは別の部屋に運ばれるだろう。
また、陣も、桜雲天国の神が上に立った時にしか反応しない仕組みになっている。
「先にどっちが終わるか分からないけど、塔の中で待ってような」
「りょーかい!」
天光琳は頷いた。
そして、天光琳は陣の上まで小走りで向かった。
「無理はするなよ。無理そうだったら明日でもいいんだからな」
「うん。無理はしないよ。俊熙も頑張ってね」
天光琳は手を振り、二回振ったところで、足元の陣が光り、桜の花びらが舞った。
その花びらは天光琳を包み込み、あたりは眩しくなった。
そして光がおさまったな...ってところで目を開けると、天光琳の姿は見えなくなっていた。
続けて天俊熙も陣の上に立ち、同じように花びらに包まれ、部屋の前まで運ばれた。
天光琳は目を開けると部屋の前に立っていた。
(緊張する...)
扉を開け、天光琳はゆっくりと部屋の中へ入っていった。
いつものように鏡の前にたち、人間の姿を見る。
二十代ぐらいの女性だった。
この人は僕なんかに当たっちゃって、残念だろうな......と天光琳は思った。
『山に行ったっきり、帰ってこない私の旦那さんが......帰ってくるようにお祈りします。どうか...どうか、無事であって欲しいです』
「......っ」
また命に関わる事だった。
失敗したくない。
天光琳は首をブンブンと横にふり、頬を二回叩いたあと、扇を開き舞い始めた。
✿❀✿❀✿
「......」
結局失敗してしまった。
この後の二回も失敗で終わった。
一週間に必ず三回人間の願いを叶えなければいけないというルールがなければ良いのに...と天光琳は思った。
失敗してしまったことは変えられない。
もし叶えるのが天光琳じゃなければ、助かった命だってある。
神は医者ではない。しかし......
(僕が命を奪ってしまったことになる......)
天光琳はそう思い、自分を責めてしまう。
また笑われることを覚悟して、天光琳は部屋を出た。
塔の出入口付近にある柱に隠れて、天俊熙を待つことにした。
「天光琳、また失敗したみたいだな」
「本当にやめて欲しいよな...」
「な。そろそろいい加減にして欲しい」
(全部聞こえてる...)
まさか本人が近くにいるとは思っていないだろう。塔に出入りする神々は天光琳の悪口を言っている神ばかりだった。
「あっ、天麗華様だぞ!」
「本当だ!天麗華様ー!!」
(姉上?!)
突然、一神が外に向かって手を振った。
天光琳はそっと外を見ると、天麗華の姿が見えた。
天麗華もきちんとした服を着て、扇を持っているため、今から人間の願いを叶えるのだろう。
「こんにちは。...ねぇ、光琳は見なかった?」
(姉上は...僕を探している...?)
天麗華は出入口付近にいる男神二神、女神二神に聞いた。
天光琳は今すぐ、天麗華のところへ走って行きたい...ところだが、今行くと、周りにいる神に笑われてしまうだろう。
そのため、天光琳は一歩足を前に出したところで気づき、また1歩戻した。
「見てないですよ」
「失敗して恥ずかしかったから城に逃げたんじゃないですかねぇ」
「また失敗したもんな。本当に天麗華様の弟かって疑っちゃいますよ。いやそもそも神なのかって」
「おいやめろって、天麗華様の前で!」
ある神が天光琳をバカにした言い方をすると、天麗華の表情は曇った。
しかし、またすぐにいつもの笑顔に戻った。
「光琳は頑張っているから、責めないであげてね。......教えてくれてありがとう。またね」
いつもの笑顔だが、声のトーンは少し低かった。天麗華はそう言うと、三神に手を振って、塔の中へ入ってきた。
三神は天麗華に一礼をして、天麗華に変なことを言ってしまったと焦って、小走りで塔から出ていってしまった。
ご飯に味噌汁、焼き魚。小鉢に漬物やだし巻き玉子など、だしの効いた食べ物ばかりだ。
朝から甘いフレンチトーストやパンケーキなども良いけれど、寒くなってきた時期に味噌汁はとても温まる。
朝食を食べ終わったあと、天光琳と天俊熙は天宇軒に呼び止められた。
「光琳、怪我の治り具合はどうだ?」
「もうほとんど治っています。もう修行とか舞とか......激しい動きもできるぐらいです」
天宇軒は顎に手を当て、ふむふむ...と小さく頷いた。
「なら今週は人間の願いを叶えられるか?」
「あー...はい......」
天光琳は小さく返事をした。
「分かった。では」
そう言って天宇軒はその場を去った。
さすがに二週間連続、神界のルールを破ることは出来ない。大怪我をしていたとはいえ、神は治りが早いため、言い訳が出来ない。
それに神界のルールを決めている、神王星連杰はちょっと......いやかなりめんどくさい神だ。
天宇軒に『天国の三神はまだ治らないのか?そろそろ治る頃だろう。治ったら、先週俺が作ったルールを破ったのだから、きちんとやらせるように』
と文字を送って連絡をしてきた。
...ちなみに連絡は、よく使われている連絡方法だと、神の力を使い、水晶玉のような小さく透明な丸い光を出して、声を録音したり文字を映したりする。
そして送った神の近くに現れ、その光から声が聞こえたり、文字が浮かんでいたりする...という方法だ。
この連絡方法は神の力がないと使えないため、天光琳は使えない。
とても楽なのだが、天光琳は使ったことがないのだ。
...話を戻そう。
星連杰は口数は少ないが文字だけでもかなり面倒くささが伝わってくる。
...自分が一番偉いからと調子に乗っている感じがする。正直、いつか暗殺されるのではないか...と言うほどめんどくさい。
天光琳と天俊熙はまだあったことは無いが、星連杰はそういう神なのだと理解しているほど、めんどくさい神王として有名なのだ。
そのため、二神は先程天宇軒があんなことを言ったのも、星連杰から何か言われたのだと何となく分かっていた。
「今日......やるか...」
「うん...。頑張る......」
天光琳の顔は魂が抜けたかのように顔色が悪いが、やらなければいけない。
二神は人間の願いを叶えるため、いつものような軽い服ではなく正装にし、扇を持ってそのまま塔へ向かった。
「麗華様はもう終わったのかな?」
「姉上は昨日今週の分...先週の分も終わらせたって言っていた気がする......」
ということは、昨日六回以上人間の願いを叶えたということになる。
しかし、天麗華は毎週十回以上は必ず人間の願いを叶えるため、まだまだやるのだろう。
二神は塔の中に入ると、立ち止まった。
「なぁ......ここって一部屋に一神しか入れないんだよな...?」
「うん。そうだけど......どうしたの?」
天俊熙は困った顔をしている。
「さすがにないと思うけど......これからお前は一神になるだろ?悪神がこの機会を狙って襲ってきたりしないかな...って思って」
「あー...」
確かに、悪神は天光琳が一神の時を狙っている可能性は高く、ここで別れるのは危険な気がする。
しかし、各部屋へ行くには、階段を使って自力で行ける訳ではなく、陣の上に立ち、塔に込められている神の力を使って行くのだ。
これは、塔に込められている神の力で行けるため、陣の上に立つ神は、神の力を使わなくても良い。
だが、必ず、一部屋の前に一神運ばれるようにしてあるため、絶対に二神一緒の部屋に運ばれることはない。
「でも、この塔には桜雲天国の神しか入れないはず......」
「あー、そっか!なら安心だな」
入口には結界が張ってある。
そのため、他国の神が入ろうとすると、結界が現れ、跳ね返ってしまい入れないのだ。
それに、よく良く考えれば、一部屋に一神しか行けない...ということは、もし悪神が結界を壊し入ってきたとしても、きっと天光琳とは別の部屋に運ばれるだろう。
また、陣も、桜雲天国の神が上に立った時にしか反応しない仕組みになっている。
「先にどっちが終わるか分からないけど、塔の中で待ってような」
「りょーかい!」
天光琳は頷いた。
そして、天光琳は陣の上まで小走りで向かった。
「無理はするなよ。無理そうだったら明日でもいいんだからな」
「うん。無理はしないよ。俊熙も頑張ってね」
天光琳は手を振り、二回振ったところで、足元の陣が光り、桜の花びらが舞った。
その花びらは天光琳を包み込み、あたりは眩しくなった。
そして光がおさまったな...ってところで目を開けると、天光琳の姿は見えなくなっていた。
続けて天俊熙も陣の上に立ち、同じように花びらに包まれ、部屋の前まで運ばれた。
天光琳は目を開けると部屋の前に立っていた。
(緊張する...)
扉を開け、天光琳はゆっくりと部屋の中へ入っていった。
いつものように鏡の前にたち、人間の姿を見る。
二十代ぐらいの女性だった。
この人は僕なんかに当たっちゃって、残念だろうな......と天光琳は思った。
『山に行ったっきり、帰ってこない私の旦那さんが......帰ってくるようにお祈りします。どうか...どうか、無事であって欲しいです』
「......っ」
また命に関わる事だった。
失敗したくない。
天光琳は首をブンブンと横にふり、頬を二回叩いたあと、扇を開き舞い始めた。
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「......」
結局失敗してしまった。
この後の二回も失敗で終わった。
一週間に必ず三回人間の願いを叶えなければいけないというルールがなければ良いのに...と天光琳は思った。
失敗してしまったことは変えられない。
もし叶えるのが天光琳じゃなければ、助かった命だってある。
神は医者ではない。しかし......
(僕が命を奪ってしまったことになる......)
天光琳はそう思い、自分を責めてしまう。
また笑われることを覚悟して、天光琳は部屋を出た。
塔の出入口付近にある柱に隠れて、天俊熙を待つことにした。
「天光琳、また失敗したみたいだな」
「本当にやめて欲しいよな...」
「な。そろそろいい加減にして欲しい」
(全部聞こえてる...)
まさか本人が近くにいるとは思っていないだろう。塔に出入りする神々は天光琳の悪口を言っている神ばかりだった。
「あっ、天麗華様だぞ!」
「本当だ!天麗華様ー!!」
(姉上?!)
突然、一神が外に向かって手を振った。
天光琳はそっと外を見ると、天麗華の姿が見えた。
天麗華もきちんとした服を着て、扇を持っているため、今から人間の願いを叶えるのだろう。
「こんにちは。...ねぇ、光琳は見なかった?」
(姉上は...僕を探している...?)
天麗華は出入口付近にいる男神二神、女神二神に聞いた。
天光琳は今すぐ、天麗華のところへ走って行きたい...ところだが、今行くと、周りにいる神に笑われてしまうだろう。
そのため、天光琳は一歩足を前に出したところで気づき、また1歩戻した。
「見てないですよ」
「失敗して恥ずかしかったから城に逃げたんじゃないですかねぇ」
「また失敗したもんな。本当に天麗華様の弟かって疑っちゃいますよ。いやそもそも神なのかって」
「おいやめろって、天麗華様の前で!」
ある神が天光琳をバカにした言い方をすると、天麗華の表情は曇った。
しかし、またすぐにいつもの笑顔に戻った。
「光琳は頑張っているから、責めないであげてね。......教えてくれてありがとう。またね」
いつもの笑顔だが、声のトーンは少し低かった。天麗華はそう言うと、三神に手を振って、塔の中へ入ってきた。
三神は天麗華に一礼をして、天麗華に変なことを言ってしまったと焦って、小走りで塔から出ていってしまった。
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