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第二章

24.お礼周りとパーンケーキ(3)

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「──るぅ、このお花はなんてなまえなの」
「んと……これはチューリップだった気がするな」
「るぅ、あそこにいる鳥さんはなんというなまえなの」
「あれはたぶん鳩だな……。王宮にもたまに居るぞ」

アパートを出発し、まずは商人ギルドへ向かう。

目に入るもの全てに対して疑問を持ち、ルー様へ質問する王女様の姿はなんとも愛らしい。

「るぅ、あの女の子が食べてるのってあいす??  おいしそうなの」
「そうだ。あれは冷たくてかなりうまい。でも今日はパーンケーキを食べに行くし、帰りに食べれそうなら買ってやる。無理そうならまた街に来た時にでも食べよう」

こうして見ていると、2人は仲が良く本当の兄弟のようであるし、それを見て微笑んでいるダヴィッドさんは父親のようだった。

ダヴィッドさんは何をしているかと言うと、そんな2人を見守りつつ、事前に買い込んできたと思われる菓子折りを持ち両手をパンパンにさせていた。





「これはこれは王女さ……ではなくアンジェ様に第2騎士団のルー様!!!ダヴィッドの旦那もご一緒で!!!それにスミレ様もお久しぶりですねで!!こんなに大勢で本日はどんな御用ですかぃ?」

ハリのある元気な声が懐かしい。
職人さんとは初めて会った時以外にも何度か経管栄養の物品について打ち合わせをする機会があったが、商品ギルドの方に会うのはあの日以来かもしれない。

「実は大変遅くなってしまい申し訳ないのですが、先日のお礼に来まして……。こちら、ほんの少しの気持ちですが受け取ってください」

ダヴィッドさんが菓子折をギルドの方へ渡した。

「これはなんとわざわざ……。報酬は国から頂いているというのに……」
「これはわたくしたちからのお礼です。本当にありがとうございました。貴方が居なければ、アンジェ様を救うことは出来ませんでした」
「そんな大袈裟ですよダヴィッドの旦那。私は出来ることをしただけですぜぃ」
「あとわたしからもお礼を言わせてください。あの時はありがとうございました。協力がなければ私の考えを実現するのことは不可能でした」
「いやいや、あの時できる私の最善を尽くしただけですって……頭をあげてくださいお2人とも」

「ぎるど長。ありがとうなの」
「……俺様からも礼をいう。ありがとう。今度第2騎士団に何かオススメの酒でも流してくれ。しっかり買い取らせて頂く」

王女様とルー様もサングラスを外して、ぺこりと頭を下げた。

「うわあああ!!止めてくだせぇ!!!一国の王女様と公爵家の長男坊がタダの町人に頭を下げるだなんて!!!しかも私はギルド長なんかじゃないですよ!!こんなの聞かれたらクビになりますよ!勘弁してください!」
「ふふ。くびになんかならないの」
「そうですよ!!そんなことしたら逆にギルド長のクビが危ないです」

ふためくギルドの方に皆の頬が緩む。


──その後、職人さん達へのお礼周りも終えて王女様お目当てのパンケーキ屋さんへと向かうことになった。
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