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第二章

19.新しい生活(2)

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──王宮へと戻り、早速荷造りをする。
荷造りといっても本当に荷物は少なく、転移時に身につけていた服、ダヴィッドさんから頂いた服と靴、自分で買った薄いパープルのドレスと白いパンプスと、生活に必要なものは王宮が全て用意してくれていたので荷物は衣類ぐらいだった。

経鼻経管栄養法の一般運用に向けた試作品や手技を記載したメモはマーシュ先生が預かっていたが、そちらはこの世界の人のために自由に使って欲しいと伝え譲渡した。(後でこの権利でお金を稼げるのでは?と思った時にはもう遅かった)

ちなみに、メモはマーシュ先生が私の話す内容を代筆したものになる。

私は召喚による影響なのか、何故か会話は通じるし文字は勝手に変換されて読めるが、文字は書けない。
まあこの国文字や言葉について知識が無いし、当然なのではあるが定職としてこの国で仕事をするにはまず文字を覚えることから始めなければいけないし、よく考えたらこの国の貨幣の価値も正直なんとなくでしか分かっていない。

今になって王宮の人々に支えられて生活が成り立っていたことに気がつく。

国王様から報酬を貰う際に、シャルム王国の一般教養と言語の勉強する為の講師を雇ってもらうべきだったと今になって後悔した。

「何かあれば直ぐにご相談を」だなんてダヴィッドさんは言ってくれてるけど、彼はああ見えて魔法使いのエリート集団、第3騎士団の元団長らしく、現在は宮廷魔術師として魔法の研究などでとても忙しい身なので頼むのは申し訳ない。

今になって王宮へ色々お願いしても、要求を通してくれそうではあるが、もうすでに沢山甘えてしまっている。王宮から支給される生活費を貯金して、E〇C英語教室のような大人も入れる学校などを探して通うことにしよう。




「すみれ。いつでも遊びに来て欲しいの。
さみしいけど、おうとはちかいしすぐ会えるの」

翌朝には王宮を出ることになったので、王女様への挨拶に出向いた。

「スミレ様……。出ていかなくても誰も文句はいいませんのに。わたくしも寂しいですぞ」

寝室には王女様に会いに来たダヴィッドさんもいて、私の事を思ってか眉をひそめている。

「これからどうなされるんですか?」
「とりあえず、街に出て仕事を探します。最低限の暮らしができる様に仕事に就いて安定するまでは王宮から生活費が支給されるようですので……」
「そんなに無理をしなくても良いでしょうに」
「大丈夫です。無理はしてないです。
いつまでも王宮ここにお世話になるのは皆様の優しさに甘えている様で自分が嫌なんです」
「そうですか……。しかし、何かありましたら無理せず王宮に戻られますように。ダヴィッドが何とかしてみせます」
「ダヴィッドさん、いつもありがとうございます。王女様にも会いたいですし、おふたりが良いのであれば遊びに来ますよ」

「……すみれ、いつでもきてほしいの。おいしいおかしをもらったらお茶会をひらくの」
「王女様、お茶会だなんて素敵ですね。是非参加させてください。」


ダヴィッドさんと王女様へ挨拶をして、他にもお世話になった侍女さん侍従さん、家臣の方々への挨拶も済ませた。

ルー様を探したが第2騎士団は丁度魔物の討伐に向かったとのことで挨拶はできなかった。

ベットのお礼もあるし、後日また王宮で会えた時に言おう。





──こうして挨拶回りも終えた私は、
翌朝に王宮を出て王都へと移り住むことになったのだった。
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