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4話 「クラレンス家」
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──後で聞いた話だが、ルタ様はクラレンス家の長男で魔法騎士として非常に有能で有名なお方だそうだ。
ルタ様は侯爵家の中では高い位というだけではなく、高い魔力を保有し優秀な人物であることやその美しい外見から幾度となく求婚をされたそうだが断り続けていたらしい。
そして彼の騎士としての仕事ぶりは血も涙もないとの事で、付けられた異名は“冷血の騎士“。
噂では彼は人の血が通っておらず、妻を娶るつもりもないのだろうと言われていたそうだ。
「とても豪華な御屋敷ですね……!」
ルタ様から婚約の申し出から2日後。
実家になんの未練もない私は早速クラレンス家で暮らすこととなった。
「お気に召していただけましたか? 挨拶が遅れましたが、本日からケイ様のお世話係をさせて頂きますアンと申します。宜しく御願いします」
「宜しく御願いします。しかし、お世話係など付けて頂かなくても私は実家では1人で出来ることは全てしていたので社交界でのドレス着用の際だけ手伝ってくれれば大丈夫ですよ……?」
「ケイ様は今までその様にしていたとルタ様から伺っておりますので、ルタ様は敢えて世話係を付けられたかと」
今まで一人で出来ることは一人でしてきたし、ドレスの着脱を手伝ってもらう以外で世話係なんて要らないのにルタ様はどういうつもりなのだろうか。
「さてケイ様。早速ですが旦那様と奥様に挨拶をして頂くとのことで、お着替えをしましょう。ドレスは既にお持ちの者を数着預からせていただいて同じサイズのものをご用意させて頂いております」
そういってアンに案内された部屋にはズラリとドレスが並んでいた。
……数日で用意したとは思えないぐらい種類があり、20着はありそうだ。そして、どれを着ていいか分からない。
思えば私はドレスは数着しかもっていなかったな。それに対してロージュは数え切れないほどのドレスを持っていたと思う。ラインハルト様の言う通り、私は身だしなみにも気を使えず地味な女だったのかもしれない。
「アン。私、どれを着たらいいかわからないの。……選んでくれる?」
「ええ勿論ですよ。ケイ様にピッタリなドレスを選び抜いて見せます!」
アンは物凄い手際の良さでドレス、それに合わせた靴とアクセサリーを選び抜いた。
「ケイ様はとてもサラサラで艶のある茶髪で瞳の色も若草のようなライトグリーンで美しいです。ドレスは瞳の色に合わせて淡いライトグリーンの物にしましょう。このドレスはスラっとしたAラインが美しいですね。それに、ドレスの裾の部分にはシルバーのラメが編み込んであって光沢感があり動いて揺れるととても美しいと思います。パンプスは裾にシルバーがあるのでシルバーにしてみましょうか。アクセサリーも同系統で揃えますね」
アンはテキパキとドレスを着付け、ヘアメイクを施してくれた。
「──さあケイ様。鏡をご覧下さい」
鏡を見ると、そこには地味な自分は居なかった。
淡いライトグリーンのドレスは控えめかと思ったが、その控えめな印象が上品さを感じさせ、アンの言うように少し動くと揺れて煌めく光沢感のあるドレスの裾がとても美しかった。派手すぎないかと少し不安になっていたシルバーのパンプスもドレスとの色合いが絶妙で足元を美しく魅せてくれていた。
ヘアメイクも見事なもので、地味と言われた私の顔から上品さを醸し出している。
「……これが私ですか?」
「何を仰っていますか。ケイ様はケイ様ですよ」
「今まで地味だ地味だと言われ続けていたので、自分が自分じゃないみたいです」
「ケイ様は地味なんかじゃないですよ。目鼻立ちも優しげですがハッキリしていますし、髪の毛もサラサラツヤツヤです。美人じゃないですか」
「そんなに褒めてもらったの初めてです」
「……今までどんなところにいらっしゃったのですか!まあいいです。旦那様奥様がお待ちですので急いでダイニングへ向かいましょう」
ルタ様は侯爵家の中では高い位というだけではなく、高い魔力を保有し優秀な人物であることやその美しい外見から幾度となく求婚をされたそうだが断り続けていたらしい。
そして彼の騎士としての仕事ぶりは血も涙もないとの事で、付けられた異名は“冷血の騎士“。
噂では彼は人の血が通っておらず、妻を娶るつもりもないのだろうと言われていたそうだ。
「とても豪華な御屋敷ですね……!」
ルタ様から婚約の申し出から2日後。
実家になんの未練もない私は早速クラレンス家で暮らすこととなった。
「お気に召していただけましたか? 挨拶が遅れましたが、本日からケイ様のお世話係をさせて頂きますアンと申します。宜しく御願いします」
「宜しく御願いします。しかし、お世話係など付けて頂かなくても私は実家では1人で出来ることは全てしていたので社交界でのドレス着用の際だけ手伝ってくれれば大丈夫ですよ……?」
「ケイ様は今までその様にしていたとルタ様から伺っておりますので、ルタ様は敢えて世話係を付けられたかと」
今まで一人で出来ることは一人でしてきたし、ドレスの着脱を手伝ってもらう以外で世話係なんて要らないのにルタ様はどういうつもりなのだろうか。
「さてケイ様。早速ですが旦那様と奥様に挨拶をして頂くとのことで、お着替えをしましょう。ドレスは既にお持ちの者を数着預からせていただいて同じサイズのものをご用意させて頂いております」
そういってアンに案内された部屋にはズラリとドレスが並んでいた。
……数日で用意したとは思えないぐらい種類があり、20着はありそうだ。そして、どれを着ていいか分からない。
思えば私はドレスは数着しかもっていなかったな。それに対してロージュは数え切れないほどのドレスを持っていたと思う。ラインハルト様の言う通り、私は身だしなみにも気を使えず地味な女だったのかもしれない。
「アン。私、どれを着たらいいかわからないの。……選んでくれる?」
「ええ勿論ですよ。ケイ様にピッタリなドレスを選び抜いて見せます!」
アンは物凄い手際の良さでドレス、それに合わせた靴とアクセサリーを選び抜いた。
「ケイ様はとてもサラサラで艶のある茶髪で瞳の色も若草のようなライトグリーンで美しいです。ドレスは瞳の色に合わせて淡いライトグリーンの物にしましょう。このドレスはスラっとしたAラインが美しいですね。それに、ドレスの裾の部分にはシルバーのラメが編み込んであって光沢感があり動いて揺れるととても美しいと思います。パンプスは裾にシルバーがあるのでシルバーにしてみましょうか。アクセサリーも同系統で揃えますね」
アンはテキパキとドレスを着付け、ヘアメイクを施してくれた。
「──さあケイ様。鏡をご覧下さい」
鏡を見ると、そこには地味な自分は居なかった。
淡いライトグリーンのドレスは控えめかと思ったが、その控えめな印象が上品さを感じさせ、アンの言うように少し動くと揺れて煌めく光沢感のあるドレスの裾がとても美しかった。派手すぎないかと少し不安になっていたシルバーのパンプスもドレスとの色合いが絶妙で足元を美しく魅せてくれていた。
ヘアメイクも見事なもので、地味と言われた私の顔から上品さを醸し出している。
「……これが私ですか?」
「何を仰っていますか。ケイ様はケイ様ですよ」
「今まで地味だ地味だと言われ続けていたので、自分が自分じゃないみたいです」
「ケイ様は地味なんかじゃないですよ。目鼻立ちも優しげですがハッキリしていますし、髪の毛もサラサラツヤツヤです。美人じゃないですか」
「そんなに褒めてもらったの初めてです」
「……今までどんなところにいらっしゃったのですか!まあいいです。旦那様奥様がお待ちですので急いでダイニングへ向かいましょう」
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