2 / 65
2話 「モラハラ婚約者」
しおりを挟む──婚約破棄されてから数日が経過した。
妹のロージュはというと、お腹の子供の名前はどうしようだとかラインハルト様は夜は情熱的で激しくて~だとか聞いてもいないのに私に話続けている。
しまいにはラインハルト様の話題は聞いていると辛いので聞き流していると、「地味なお姉様に華やかなラインハルト様は釣り合わないからこうなって良かったわね」とまで言ってきた。
私は婚約破棄のショックから部屋に籠り、ラインハルト様との記憶を遡っていた。
しかし思い返してみれば彼との思い出と呼べる記憶は殆どなく、一緒に出かける約束は殆どがすっぽかされていたし、毎年こちらは誕生日にプレゼントを送っていたが送り返して貰ったことは1度もない。
そういえば、彼に会う度に「お前は本当に地味だな。妹のロージュを見習ってみろ。美しい桃色の髪はいつも綺麗に手入れされていて、ドレスだって煌びやかで美しい。それに比べてお前は地味な茶髪に地味なドレス。本当に姉妹か?」みたいな事を言われていた。
確かにロージュは私と違ってとても華やかで美人だし、私の薄い茶髪と違って桃色の綺麗な髪の毛をいつも縦巻きロールにして巻いて身だしなみにも気を使っている。
私だって身だしなみに気を使っていない訳では無いが、妹と比べてしまえばラインハルト様の言うようにとても地味だと思う。
「……何もいい思い出がないじゃない」
……振り返れば振り返るほど彼との記憶はろくな事が無く、思い返すほどに胸の奥でのモヤモヤが増幅する。18歳というこの国での結婚適齢期に婚約を破棄され傷物にまでされて私は彼に何を執着する必要があるのだろうと思う。
しかし、頭では直ぐに切り替えた方がいいと理解していて、ラインハルト様がどんなに酷い相手と分かっていても私は彼と一生を添い遂げる覚悟を幼い頃に決めていたので立ち直るには少し時間がかかりそうだった。
無理をしなくていい。
少しずつ彼のことは忘れることにしよう……。
そう思っていた時、
「──ケイお嬢様。お嬢様にお会いしたいという方がいらっしゃっています」
と突然執事が自室の扉を開けて私への来客の存在を告げた。
42
お気に入りに追加
3,795
あなたにおすすめの小説
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
夫には愛する人がいるそうです。それで私が悪者ですか?
希猫 ゆうみ
恋愛
親の決めた相手と結婚したラヴィニアだったが初夜に残酷な事実を告げられる。
夫ヒューバートには長年愛し合っているローザという人妻がいるとのこと。
「子どもを産み義務を果たせ」
冷酷で身勝手な夫の支配下で泣き暮らすようなラヴィニアではなかった。
なんとかベッドを分け暮らしていたある日のこと、夫の愛人サモンズ伯爵夫人ローザの晩餐会に招かれる。
そこには恐ろしい罠と運命の相手が待ち受けていた。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる