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あなたと共に。

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さて、隣国が攻めてきて(?)一ヶ月が経ちました。色々忙しい日が続きましたが、ようやく全てが落ち着いてきました。また平和な日々が戻ってくる。そう思うと心が弾みます。

隣国はメルリア王国の属国として再スタートを切りました。暴れに暴れた王…(今は先王ですね)が消えたと聞き、隣国の国民は拍手喝采。まあ、当たり前ですね。新たに王位につくのは、メルリア王国の第二王子が就任しました。第二王子は聡明で腹黒いらしいです。でも、前よりはいいでしょう。

後から私を追いかけてきたお爺様は、私と旦那様を見て何かを悟ったらしく、微かな寂しそうな笑みを浮かべて帰って行きました。


「さて、シェリー。全部終わったね。」

旦那様の私室にて、のんびりお茶を飲んでいます。

「ええはい。全て終わりましたね」

あれ?旦那様がちょっともじもじしています。

「旦那様?どうしました?」

「ん!?い、いやなんでも…お茶が美味しいなって!!」

目が泳いでいます。何かあるのでしょう。

「旦那様。夫婦の間に秘密は迂闊に明かさない方が上手くいく時もある、と聞きます。旦那様の隠し事は…」

「あー!待って、ちょっと待って!そんな深刻なことでもないから!」

焦ったように私の言葉を止め、慌てふためく旦那様。それから、少し迷ってから、私を夜の庭園へと連れて行ってくれました。そこには…

「わ…綺麗…」

この地にはないはずの、私の愛する花が咲いていました。夜風に揺れ、月明かりに照らされたその花は…

「デイジー。好きでしょう?」

「…はい。大好きです。」

白い花弁にそっと触れると、ふわりと懐かしい香りがします。

「シェリー、ごめん。」

いきなり謝られ、面食らってしまいました。

「え、え?いきなりどうしたんです?」

「君を結婚した後に一人にしてしまったり、他にも身勝手なことをしてしまった。」

髪に隠れて表情が見えません。覗き込むと、水に濡れた子犬の様な表情をしていました。

「もう…なんて顔してるんですか。」

ちょっと笑ってしまいました。

「…君はもうちょい怒ってもいい気がする。」

あ、ちょっと不服そう。可愛い。旦那様は少し驚いたようでしたが、構わずそっと抱きしめました。

「大丈夫です。貴方がどれだけ私を愛してくれているか、心配しているか。わかっていますから。その結果なのでしょう?でも、私たちは夫婦です。これからは、一緒に考えましょう。」

「うん…ありがとう。」

デイジーが咲く庭園。それは旦那様の精一杯のごめんなさいと、愛の形。咲き誇る花々と照らす月はどこまでも美しい。

私達は手を繋ぎ、歩き出した。どこまでも続く未来へと。



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