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シェリーさんの仲直り雪合戦
しおりを挟む皆さん、こんにちは。シェリーです。
事件発生から1週間が経ちました。あれから嫌がらせ等はなくなり、普通の日々が帰ってきました。ですが、旦那様の表情はいつも悲しげで、それが薄れる時はありません。きっと、レニエスの事を考えているのでしょう。
レニエスの事をだめ執事だと、コテンパンのズタズタにしましたが、旦那様を思う気持ちは一級だと思えました。
「旦那様には、いつも笑顔でいて欲しいですね…」
ぽつりと呟き、私は庭へと向かいました。食堂に飾る花をつもうと思ったのです。冬に咲く花は強さと美しさを兼ね揃えています。綺麗な花を見れば、少しは気持ちが和らぐと思うので…
私が庭へ向かうと、ハーモニカの音が響いてきました。誘われるように足を向けると、お屋敷の窓が空いていることに気がつきました。どうやら、そこから聞こえてくるみたいです。木陰に隠れて、そっと忍び聞きます。
やがて、ハーモニカは止み…
「おい。盗み聞き女、いるんだろ。出てこいよ。」
レニエスは私を呼びました。
「あら。バレていましたか。」
「はっ!隠すつもりなんて微塵もないくせによく言うわ。」
忌々しそうに吐き捨て、ギロりと私を睨みつけました。でも、最初とは違う眼差しで、ほんの少しだけ強がりが入っています。
「あらまあ、お可愛らしい強がりですこと。私に怒られたのがそんなに堪えたのですか?」
「んなわけねーだろ、調子にのんなチビ!」
そう言ってから、ぷいっとそっぽを向かれました。どうやら図星のようですね。
「まったく、一度叱られたくらいで怯えないでください。私はもう怒ってませんし。」
「…許したのかよ?俺を?」
「まさか」
ふっと笑みがこぼれました。
「許すわけがありません。屋敷に巣食う不届き者を、あろうことか利用したのですから。下手をしたら、旦那様の沽券に関わる事ですよ?」
殴られたような顔をする彼に、私は少しだけ安堵しました。私に対してはともかく、旦那様の事を大事に思っているのがわかったからです。だから…
「私は旦那様の帰る場所を守りたい。旦那様の幸福を、安らぎを守りたい。」
突如として出てきた言葉に、レニエスは戸惑ったように私を見ました。
「あなたはどうやら、旦那様にとって大事な人みたいです。ずっと寂しそうな顔をしています。」
あの日から旦那様の表情には、一片の悲しみが潜むようになりました。私はそんな顔をして欲しくない。だから…
「レニエス。仲直りしましょうか。」
「は?」
「いいからいいから。」
「いや、仲直り?別いいけどって…あああああ!!てめえええええええなにしやがる!!」
私は部屋の中にいるレニエスに、雪玉をぶつけました。
「ふふふふ!!!これでおあいこです!」
「くっそが!!嫌いだお前なんて!」
窓枠を飛び越え、瞬時に雪をひっつかんで、私に当ててきました。
「私だって嫌いです!!」
雪玉をぶつけ合う私たち。
たぶん、これがきっと、私達のはじめの一歩。大嫌いな人だけど、旦那様のためならば。
この日、私はレニエスと仲直り??をしました。
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