11 / 30
シェリーさんと新しい日々
しおりを挟む
お久しぶりです、皆さん!シェリーです!
あの日より、旦那様は毎日帰ってくるようになりました。一人で食事をとり、一人で庭を散歩する事は無くなり、代わりに旦那様との幸せな日々が続いています。
旦那様が私の料理をいたく気に入ってくれたので、夕食の一品を任されるようになりました。もちろん冷え性が辛いので、料理長やルルリアの補助が入ります。
今日は、シチューにします。
まずは野菜や肉などを刻み…あれ?
「包丁と、踏み台が、無い?」
ルルリアと料理長が用意してくれた、私専用の包丁と、踏み台がなくなっています。いつも収納されている場所にもありません。
「おかしいですね…先刻まであったのに…」
「誰かが誤って移動させた?」
「いえ、そんなはずないです。奥様がこの時間に来るのは周知の事実ですから。」
二人の視線と表情が厳しくなっていきます。
誰かが意図的に移動させた、もしくは隠したと考えているのでしょう。
「ルルリア。リッテに一報入れなさい。旦那様に伝えるかはリッテに任せる。あと、理由がわかり次第、私に教えて。料理長、この事は出来るだけ伏せなさい。」
「「承りました」」
そう言いつつも、微かに不安げな表情をする二人。公爵家の女主人の前では、使用人の命さえ吹き飛ぶ可能性があるからです。私は二人を安心させたくて、微笑みかけました。
「何もしませんよ。ですが、私はここの女主人で、家を守る義務がある。誰がなぜこの様な事をしたのかを知り、対策を練らねばなりません。それに悪意や害意は一瞬にして広がります。それを防ぐためにも。」
ここは公爵家。旦那様が帰ってくる場所。
だから私は、安心と安全を約束したい。
「いいですね?」
今度こそはっきりと頷き、ルルリアはリッテの元へ駆けていきました。
料理長は果物が入っていた箱と小さめのナイフを持ってきてくれました。これで料理をする事ができます。消えた包丁と踏み台の事は一旦忘れて、私は料理へと意識を向けました。
「シェリー!!ただいまー!」
旦那様は、玄関で出迎えた私を、ぎゅっと抱きしめてくれました。私は小さいので、旦那様の腕の中にぽすんと収まります。
「お帰りなさいませ、旦那様!お夕飯はもう出来ているので、支度が出来ましたら食堂へいらして下さい!」
と言っても、旦那様の腕の中が心地よくて離れられません。そのまま抱きしめ合う私達を、メイド達が生暖かい目で見てきます。
「はいはい、仲がいいのはわかりましたから、旦那様は早く着替えて下さい。」
べりべりぃっ!と引き剥がされた私達。
「シェリィィィ!すぐ食堂行くからねええええええ!!!」
旦那様はリッテに引きずられていきました。
その姿を見送り…
「シチュー、美味しいって言ってくれますかね。」
シチューを頬張る旦那様の姿が目に浮かび、ふっと笑みが零れます。軽い足取りで鼻歌交じりに食堂へと向かいました。
…そんな私を後ろからじっとりとした視線で睨む影に気付かずに。
あの日より、旦那様は毎日帰ってくるようになりました。一人で食事をとり、一人で庭を散歩する事は無くなり、代わりに旦那様との幸せな日々が続いています。
旦那様が私の料理をいたく気に入ってくれたので、夕食の一品を任されるようになりました。もちろん冷え性が辛いので、料理長やルルリアの補助が入ります。
今日は、シチューにします。
まずは野菜や肉などを刻み…あれ?
「包丁と、踏み台が、無い?」
ルルリアと料理長が用意してくれた、私専用の包丁と、踏み台がなくなっています。いつも収納されている場所にもありません。
「おかしいですね…先刻まであったのに…」
「誰かが誤って移動させた?」
「いえ、そんなはずないです。奥様がこの時間に来るのは周知の事実ですから。」
二人の視線と表情が厳しくなっていきます。
誰かが意図的に移動させた、もしくは隠したと考えているのでしょう。
「ルルリア。リッテに一報入れなさい。旦那様に伝えるかはリッテに任せる。あと、理由がわかり次第、私に教えて。料理長、この事は出来るだけ伏せなさい。」
「「承りました」」
そう言いつつも、微かに不安げな表情をする二人。公爵家の女主人の前では、使用人の命さえ吹き飛ぶ可能性があるからです。私は二人を安心させたくて、微笑みかけました。
「何もしませんよ。ですが、私はここの女主人で、家を守る義務がある。誰がなぜこの様な事をしたのかを知り、対策を練らねばなりません。それに悪意や害意は一瞬にして広がります。それを防ぐためにも。」
ここは公爵家。旦那様が帰ってくる場所。
だから私は、安心と安全を約束したい。
「いいですね?」
今度こそはっきりと頷き、ルルリアはリッテの元へ駆けていきました。
料理長は果物が入っていた箱と小さめのナイフを持ってきてくれました。これで料理をする事ができます。消えた包丁と踏み台の事は一旦忘れて、私は料理へと意識を向けました。
「シェリー!!ただいまー!」
旦那様は、玄関で出迎えた私を、ぎゅっと抱きしめてくれました。私は小さいので、旦那様の腕の中にぽすんと収まります。
「お帰りなさいませ、旦那様!お夕飯はもう出来ているので、支度が出来ましたら食堂へいらして下さい!」
と言っても、旦那様の腕の中が心地よくて離れられません。そのまま抱きしめ合う私達を、メイド達が生暖かい目で見てきます。
「はいはい、仲がいいのはわかりましたから、旦那様は早く着替えて下さい。」
べりべりぃっ!と引き剥がされた私達。
「シェリィィィ!すぐ食堂行くからねええええええ!!!」
旦那様はリッテに引きずられていきました。
その姿を見送り…
「シチュー、美味しいって言ってくれますかね。」
シチューを頬張る旦那様の姿が目に浮かび、ふっと笑みが零れます。軽い足取りで鼻歌交じりに食堂へと向かいました。
…そんな私を後ろからじっとりとした視線で睨む影に気付かずに。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
ミラベルは無難に暮らしたい
カギカッコ「」
恋愛
乙女ゲーム「魔女ミラベルは逃走中」のミラベルに転生したあたし。ヒロインのミラベルが結ばれる本来の相手ギルバートとは無難に距離を置きたいと思い過ごしていたけど、何故か男装して彼の「夫」をやるはめに。世間とギルバートを欺いて、尚且つ敵組織たる魔女教の追跡を回避するあたしの苦労物語。本来のキャラと異なる性格のギルバートがおかしいので大変だったり、本編にいないイケメンが出てきたりして、エンディング後には逃げたいのに、逃げられない予感しかない。
他サイト様の中編コンテスト用の話です。
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。
[本編完結]彼氏がハーレムで困ってます
はな
BL
佐藤雪には恋人がいる。だが、その恋人はどうやら周りに女の子がたくさんいるハーレム状態らしい…どうにか、自分だけを見てくれるように頑張る雪。
果たして恋人とはどうなるのか?
主人公 佐藤雪…高校2年生
攻め1 西山慎二…高校2年生
攻め2 七瀬亮…高校2年生
攻め3 西山健斗…中学2年生
初めて書いた作品です!誤字脱字も沢山あるので教えてくれると助かります!
愛玩犬は、銀狼に愛される
きりか
BL
《漆黒の魔女》の呪いにより、 僕は、昼に小型犬(愛玩犬?)の姿になり、夜は人に戻れるが、ニコラスは逆に、夜は狼(銀狼)、そして陽のあるうちには人に戻る。
そして僕らが人として会えるのは、朝日の昇るときと、陽が沈む一瞬だけ。
呪いがとけると言われた石、ユリスを求めて旅に出るが…
嫌われ者の僕
みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈
学園イチの嫌われ者が総愛される話。
嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。
※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。
とびきりのクズに一目惚れし人生が変わった俺のこと
未瑠
BL
端正な容姿と圧倒的なオーラをもつタクトに一目惚れしたミコト。ただタクトは金にも女にも男にもだらしがないクズだった。それでも惹かれてしまうタクトに唐突に「付き合おう」と言われたミコト。付き合い出してもタクトはクズのまま。そして付き合って初めての誕生日にミコトは冷たい言葉で振られてしまう。
それなのにどうして連絡してくるの……?
異世界に転生したら野獣さんに溺愛された!
はやしかわともえ
恋愛
ある日の夜、仲間たちと肝試しに来ていた夕夏は見たこともない屋敷に迷い込んでしまった。
そこにいたのは巨大な野獣で?!
ゆるっと書いていきます。
気楽な気持ちで読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる