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旦那様は妄想か現実か本気で迷う

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なんて事だ!僕の嫁が可愛すぎる!
帰らないとか、もったいないことした!
時間よ戻れ、一ヶ月前に!

もんもんとした後悔に苛まれながら、高速で仕事を終わらせていく。あの食事から、制御出来ない思いが暴れ回っている。

もっと彼女と話がしたい。彼女の話が聞きたい。他愛のない話をしたい…もっと、たくさんの表情が見たい。


「旦那様、奥様がお見えになっています。」

「っ…!?通せ!」

シェリーが何か後ろ手に隠し、部屋に入ってきた。ちょっと顔が赤くて、可愛い。

「どうしたのですか?何かありましたか?」

勢いよく、シェリーが手に持っていたものを差し出してきた。

「あ、あのっ!これ!どうぞ!」

ハンカチだった。とても綺麗に仕上がっていて、私のイニシャルと公爵家の紋章が描かれた刺繍がある。

「…これを、貴方が?」

「はいっ!作りました!」

すごい…料理も裁縫も、明らかに通常以上に上手い。しかも、この刺繍。細部までよく出来ていて、手間がかかっているのがわかる。

「ありがとう…大事にします。」

自分のために。暖かいものが広がり、思わず笑みが零れた。ふと、目を上げると、シェリーがこちらを見て、固まっている。そして、

「あ、えと、そろそろ部屋に戻りますね!旦那様も、あまりご無理をなさらぬよう!失礼します!」

と、脱兎のごとく、部屋を出て行ってしまった。

「これは…本当に妄想の中なのかも。」


その頬が林檎のように真っ赤に見えたから。

その姿が、まるで…
恋する乙女のように、見えたから。


「よし」

なんで忘れてたんだろ。僕は決めていたんだ。君を幸せにするって。ずっと前から。

明日、話そう。あがり症で君の隣に立つことさえ出来なかったかっこ悪い自分の事を。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
明日からシェリーさんに戻ります。
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