ライゼン通りのお針子さん～新米店長奮闘記～

ライゼン通りのお針子さん４ ～光と影の潜む王国物語～

プロローグ

　厳しい冬も終り春爛漫の暖かな季節がまた訪れた。仕立て屋アイリスも春を告げる女神から貰った永遠に枯れない精霊の花が幸せを運ぶ。

「こんにちは、アイリス殿。仕事の方は順調かね」

「やぁ、子猫ちゃん。今日も可愛いね」

「失礼する。アイリスさんまた服を仕立ててもらえないかね」

開店と共に来客を知らせる鈴の音が鳴り響き、レオが入って来ると続けてルークと侯爵がやって来た。

「アイリスさん、こんにちは。この前作って頂いた仕事着とても気に入りました。館長にふさわしい凛としているのに清潔さもありクールな感じの出来に感嘆の溜息が零れました。それで、今日は普段着を仕立ててもらえないかと思いまして」

「失礼。アイリス元気にしてる？　貴女に作ってもらった服をこの前仕事中に破いてしまってね。仕立て直してもらえないかしら」

ベリルがやって来るとキリも入店する。今日も今日とて仕立て屋アイリスは人がひっきりなしに訪れ大忙しのようだ。

「アイリス、今日もお仕事頑張ろうね」

「はい。……いらっしゃいませ、仕立て屋アイリスへようこそ」

イクトが柔らかく微笑み語るとアイリスは返事をしてお客達の方へと向き直り、向日葵のような温かく優しい満面の笑みで出迎えた。

アイリスは一人一人丁寧に対応していく、そんな彼女を優しい瞳で見守るイクト。

お客はどんなに待たされても文句ひとつ言わず自分の番が来るのを待つ。

そうして今年も優しい街の人達に愛される仕立て屋アイリスで新たな出会いと暖かな物語が紡がれることとなりそうである。