187 / 237
第3章
3-63決意 ☆
しおりを挟む
「今後のこと、考えてみるね」
昼休み。幸恵さんが油井にそう言うのを廊下で見かけた。
……ええ!? 今後!? 昨日そんなところまで!?
「ああ。それが良い」
分かっていたけど油井はいつも通りだからそういう状態なのか分からないし。
「西沖の様子をお前に伝えようとここに来たわけだが……」
「まさかこうなってるなんてな」
僕の背後から新城が話しかけてきた。木庭もいた。
「昨日天文台に行ったところまでは知っていたけどね……」
「何!? なかなかやるな!」
「その口振りからするに、君島はここまでするとは聴いてなかったわけか」
「うん」
「まあいいじゃん。こんなに早く元気になったんだし」
「それはそうだね」
「世の中は油井みたいなのが巧く立ち回るだろうしな」
「それは……そうかもね」
「なんの話だろうか」
今度は横から油井の声がした。
僕はすぐには油井の方を向けなかった。
木庭は少し首を回して油井の方を向いた。
新城は「うわびっくりした!」と言って体ごと油井の方を向いた。
「……西沖の調子が良さそうだと話していた」
木庭の冷静さがありがたい。
「ああ。おかげ様で」
「それどころか今後の話もしてもらえるようになっちゃって」
「そうだな。どちらを選ぶのだろうか」
僕は背筋が冷たくなった。
え? どちら? まさか油井か僕? 今幸恵さんは油井との今後のことを考えるって言ったんじゃないの?
「天文学か、考古学か」
…………。
もう何も考えられなかった。
「今後って、進路の話なん?」
「それ以外に何か?」
「あ、ああ、いや」
「多くの人のためになる、自分のための選択さ」
冴羅さんの話を聴いていた木庭と新城にとっても驚きだったと思うけど、僕にとってはより多くの要素が繋がる発言だった。
「油井、まず自分の進路の話からお願いできる?」
◇
昨日天文台に行って、福成くんと話して、自分の夢がはっきりした。
さらには思い出せたこともあった。
それは冴羅ちゃんが奏向くんと付き合うって聴いてから抑え込んでいた想い。
私、奏向くんも福成くんも好きなんだ。だけど――
……すごいところ見ちゃった。
幸恵、油井くんと付き合うんだ。
そうだよね。私は優哉も君島も新城くんも好きだけど、いつまでもこうしているわけにはいかないから――
――本当の気持ち、決めなきゃなんだ。
昼休み。幸恵さんが油井にそう言うのを廊下で見かけた。
……ええ!? 今後!? 昨日そんなところまで!?
「ああ。それが良い」
分かっていたけど油井はいつも通りだからそういう状態なのか分からないし。
「西沖の様子をお前に伝えようとここに来たわけだが……」
「まさかこうなってるなんてな」
僕の背後から新城が話しかけてきた。木庭もいた。
「昨日天文台に行ったところまでは知っていたけどね……」
「何!? なかなかやるな!」
「その口振りからするに、君島はここまでするとは聴いてなかったわけか」
「うん」
「まあいいじゃん。こんなに早く元気になったんだし」
「それはそうだね」
「世の中は油井みたいなのが巧く立ち回るだろうしな」
「それは……そうかもね」
「なんの話だろうか」
今度は横から油井の声がした。
僕はすぐには油井の方を向けなかった。
木庭は少し首を回して油井の方を向いた。
新城は「うわびっくりした!」と言って体ごと油井の方を向いた。
「……西沖の調子が良さそうだと話していた」
木庭の冷静さがありがたい。
「ああ。おかげ様で」
「それどころか今後の話もしてもらえるようになっちゃって」
「そうだな。どちらを選ぶのだろうか」
僕は背筋が冷たくなった。
え? どちら? まさか油井か僕? 今幸恵さんは油井との今後のことを考えるって言ったんじゃないの?
「天文学か、考古学か」
…………。
もう何も考えられなかった。
「今後って、進路の話なん?」
「それ以外に何か?」
「あ、ああ、いや」
「多くの人のためになる、自分のための選択さ」
冴羅さんの話を聴いていた木庭と新城にとっても驚きだったと思うけど、僕にとってはより多くの要素が繋がる発言だった。
「油井、まず自分の進路の話からお願いできる?」
◇
昨日天文台に行って、福成くんと話して、自分の夢がはっきりした。
さらには思い出せたこともあった。
それは冴羅ちゃんが奏向くんと付き合うって聴いてから抑え込んでいた想い。
私、奏向くんも福成くんも好きなんだ。だけど――
……すごいところ見ちゃった。
幸恵、油井くんと付き合うんだ。
そうだよね。私は優哉も君島も新城くんも好きだけど、いつまでもこうしているわけにはいかないから――
――本当の気持ち、決めなきゃなんだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
ポンコツ気味の学園のかぐや姫が僕へのラブコールにご熱心な件
鉄人じゅす
恋愛
平凡な男子高校生【山田太陽】にとっての日常は極めて容姿端麗で女性にモテる親友の恋模様を観察することだ。
ある時、太陽はその親友の妹からこんな言葉を隠れて聞くことになる。
「私ね……太陽さんのこと好きになったかもしれない」
親友の妹【神凪月夜】は千回告白されてもYESと言わない学園のかぐや姫と噂される笑顔がとても愛らしい美少女だった。
月夜を親友の妹としか見ていなかった太陽だったがその言葉から始まる月夜の熱烈なラブコールに日常は急変化する。
恋に対して空回り気味でポンコツを露呈する月夜に苦笑いしつつも、柔和で優しい笑顔に太陽はどんどん魅せられていく。
恋に不慣れな2人が互いに最も大切な人になるまでの話。
7月14日 本編完結です。
小説化になろう、カクヨム、マグネット、ノベルアップ+で掲載中。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる