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第1章

1-34動機 ☆

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 その放課後、例の映像部の部室に向かった。僕は既に解錠されていたドアを開け、座っていた櫓に向かって頭を下げた。
「すみませんでした!」

「座れ」

 うわ……いつも通りなのが逆に怖い……。
 僕は速やかに席に着く。と同時に、櫓から話題を切り出された。

「君の家庭について調べた。今日はその確認させてもらう」

「唐突になんで?」

「前にも言っただろ。この私が気になってしまったからだ。今回に関しては君自ら気になることを言ったからな」

「前にも訊いた気がするけど僕たちにプライバシーは無いの?」

「今回の一件を理解するのに必要だと判断したからな。しかし君は単純だ。君の両親は本当に離婚していたんだな」

「あ……はい」

「原因は不倫では無いようだがな。単純に不仲か」

「そうです。いやどうやって調べたんです?」

「割と簡単だったが?」

「そうですか……」

「六、七年前、そうして母子家庭となり、君の母はスーパーで働き始めた。間違いないか?」

「間違いないです」

 恐るべし櫓の探求心と情報網。特に離婚理由は関係者以外は知らないはず……。

「さて、なら今回の件の動機は、好き合った同士仲良く、とでも」

 すごく嫌そうに言う櫓に笑ってしまった。

「まあ結論から言うとそうだけど、どちらかと言うと周りに迷惑かけるなって方が強いかな」

 櫓は一転して興味を持ったらしい。

「別れようと何しようと勝手にしてもらえばいいよ。でもその関係が長かったり深かったりしたら、別れた後、その二人の周りはこれまでとは違う環境で違う生き方を余儀なくされるかもしれない。結構困るんだよ、それって」

「苦労したって言いたいわけか。だが君も含めて高校生だぞ? そのころから付き合った人と一生添い遂げる奴なんてそうそういないだろ。純粋か」

「無いことは無いと思うけど。それに結局不仲で別れる人と付き合うぐらいなら、幸せでいられる人といてほしいと思うし、結果として別れることになっても、好きだと思える人が何人かいたなら次を見つけやすいだろうし」

「そうか。その本当に合っている人っていうのが君だったらどうするつもりだ?」

 いつもの、こちらを見透かしそうな目つきで櫓は言った。

「……また冗談を」

「ああ、冗談だ。注文した物持ってこられないような人間だしな。口止め料とかは免じてやるから、絶対に月曜日はしくじるなよ」

 許されてなかった。まあ、もう一回買ってくるので済むし誰にも言わないでいてくれるならいいか。今改めてこの人の恐ろしさが分かった……。



 夫婦が離婚した場合、その子どもも離婚する可能性が高いと言われる。海外ではその確率も算出されているらしい。
 僕もそうだと思う。
 親が取った行動を僕が取らないと、あのときからずっと否定することができない。
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