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17さい
114話 安心出来る場所sideラディアス
しおりを挟む「ラディアス様、おはようございます!!」
「グラニード様少し教えて頂けます?」
「明後日の学科会の件で話が……」
「今日の合同鍛錬は……」
「ラディアス様!!」
「グラニード様ーーーーーー」
「グラニードくんーーーーーー」
「グラニードーーーーーー」
「ラディアスくんっーーーーーー」
……あぁ、本当に……本当に……イライラする。
学園で僕の心が休まる場所はなかった。
教室も、廊下も、食堂や中庭だって……どこへ行っても誰かが近寄ってくる。
唯一僕の心が休まる場所……恋人であるリツの居る場所へは、最近殆ど帰れていないようなもので、話すらまともに出来ない毎日にイライラは増していくばかりだった。
ーーーその日の昼、僕は中庭にあるベンチへと腰掛けた。
昼時で日差しの強い時間だからか、生徒は誰一人として見当たらず、そこはとても静かでほんの少し居心地が良かった…。
だが僕が腰掛けてから数分と経たずに生徒達がわらわらと近付き始めると、いつもと同じ様に口々に僕へと話しかけた。
ほんの少し前まで静かだったのが嘘の様に、その場所は騒々しく居心地の悪い場所へと早変わりしたのだった。
うるさくてうるさくて……俺に話しかけてくる奴ら全員の口を一生涯開けなくしてしまいたい衝動に駆られ、掌を強く握りしめる。
……こいつらが居なければ、僕はもっとリツとの時間を増やせるのに。
こいつらが居るから、僕はリツとの時間を削られるのだ。
そんな子供じみた考えが過ぎるのも仕方が無い。
もう何日もリツに触れていない。
大好きな恋人には毎日でも触れたい、もっと先に進みたいと考えるし誰にも見せたくない。
ましてや僕の恋人は日に日に綺麗に成長するし、その見た目に華奢な身体は庇護欲がそそられ、目を離すと誰かに攫われてしまいそうで僕は心配が尽きないのだ。
……リツ、リツに会いたい。
沢山話をして、抱きしめて……キスをして……僕の手で感じて欲しい。
ーー僕だって年頃の男子だ。
大好きな恋人がいたらそれ以上だって考えてしまってもおかしくないでしょ?
まぁ、顔には出さないけど。
よくリツやライオネルにもう少し笑えだの無表情がすぎるだの言われるけど、正直楽しくも無いのに笑う事など出来るはずも無い。
そんな事を考え、僕の周りを囲むうるさい連中達の話をいつも通り無表情で聞き流し、そろそろこの場所から移動しようかと脚に力を入れた時だったーーーー。
「ーーーーラディ!!」
少し高めの可愛らしいその声は……僕の求めていた声で、
僕の耳へ心地よく入ってくる。
周りでザワザワと騒ぐその他の奴らとは圧倒的に違う、唯一落ち着くその声に、僕は視線を向ける。
「リツ……どうしたの?何かあった?」
少し怒ったような顔つきで僕を見つめ、ずんずんと近付いてくるリツを不思議に思う反面、目の前にリツが居るという事実にただただ喜びを覚え、一気に気分が上昇する。
「ラディ……何かあるのはラディの方じゃん」
「俺だってラディの力になりたい……どんなに小さな事でも全部俺に言って欲しい、ラディは俺の恋人でしょ?」
リツは背伸びをして僕の頬に小さな手を添えると、眉を下げて呟いた。
……そして、そのまま僕の額へと手を滑らし、難しい表情をする。
何をしているのか……僕には分からなかったけど、リツがそばにいて、リツの温もりを感じる事が出来るこの時間が、僕にとっては最高に気分の良い時間なのだと改めて感じていたーーーーーーーーー瞬間。
ぐいっ!!とリツに制服を掴まれ、されるがままにリツの顔が鼻と鼻が触れ合うほどに近付く。
周りからは男女の小さな悲鳴やざわめく声が聞こえたものの……そんなのどうでもよかった。
……キスしたい。
目の前のブロンドの綺麗な瞳に見つめられ、ドクリと心臓が脈を打つ。
……欲しい、僕のリツ。
今すぐ触れたい。
自分の中の欲が出始め、リツへと手を伸ばしかけたその時ーーーー。
「ラディ……今日!絶対早く帰ってこいよ!!!!」
「……え?」
予想外の言葉が帰ってきて、僕は目を丸くする。
それと同時にチャイムが鳴り響く。
「あ!やばっ俺次移動だから!!じゃあラディ、約束だからなー!!!」
リツはそう言ってニカッと歯を見せて懐っこい笑みを浮かべながら僕へと手を振り走って戻っていく。
太陽の様で嵐の様な元気なリツを見ていると、心が温かくなる。
ふわっと心も身体も軽くなるみたいだった。
「……はは、全くリツは……」
きっと今回もリツの中で何か考えがあるのだろう。
思いついたら直ぐ行動。
いつも突然で、全力。
でも……そんなところが本当に愛おしい。
ーーー今日は何がなんでも早く帰ろう。
相変わらず可愛い僕の恋人に少しだけ呆れながらも……心からの笑みを浮かべたのだった。
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