リス獣人の溺愛物語

天羽

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17さい

106話 友達

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「な、なんだったんだ……?」



俺は男子生徒が逃げる様に走り去った方向を呆然と見つめる。





「あ、あの……」


「……っっ!!あ、そうだった!!だいじょーーーー」



背後から弱々しい声が聞こえハッと我に返った俺は勢いよく振り返る。



ーーーーパチリと潤んだ赤い瞳と目が合った。

遠目で見た時よりもハッキリ見えるその姿に……ほぉ…と見とれてしまう。



「「綺麗……」」



ぽつりと無意識に出た言葉にハッと気付いて、慌てて俺と兎獣人君は両手で自身の口を塞ぐ。



……こ、声被ったっっ……声も可愛かった……。



そう思いながら仄かに頬を赤らめる俺。
よく見ると兎獣人君も白い肌が赤くなっていてソワソワしていた。




「そうだ!怪我はない?大丈夫?」


「あ、あの……大丈夫…です。ありがとうございます、助けてくれて」


兎獣人君は慌ててそう言うと垂れ下がった白い耳がユラユラと揺れた。



「ほっ……良かった……はぁ全くアイツら、俺達のことなんだと思ってんだか」



な?と俺が兎獣人君へ問うと、それを聞いて俯きぽつりと呟いた。


「しょうがない……って思った方がいいのかな……」


「……え?」


小さく呟い兎獣人君を見ると、何処か諦めている様な表情をしていて、その綺麗な顔からは辛さが滲み出ていた。



「あ、ごめんなさい……僕はこんな見た目なので、ここに来る前もよく揶揄われてたので……」


「そ、そう…だったのか……」


……やっぱり、どこへ行っても小型獣人の扱いはいいものとは言えないのか。

国王様だって小型獣人の王妃様と婚約された時は他の貴族たちと一悶着あったみたいだし……。


俺だって、母ちゃんと暮らしていた時……あの時は何でこんなにも無下にされるか分からなかったけど、今ならその理由が分かるから。



ーーーでもさ。
そんな人達と同じくらい、優しい人だっている。
愛してくれて、甘やかしてくれる人だっている。

……俺はそれを知っているから……。




「ねぇ、君!!」


「ふひゃ!!は、はい!!」




俺は兎獣人君の肩をガシッと掴み、顔を近付ける。
突然縮んだ距離に驚く兎獣人君は綺麗な赤の瞳を見開いた。




「お、俺と!友達になってくれませんか!!」



「…えぇ!?」



いきなりの俺の言葉に垂れ下がっていた耳が立ち上がる。



「確かに、俺も小型獣人だからって揶揄れた事…何度もあった!でも、でもね!それ以上に俺を受け入れてくれる人達だって沢山いた。知ってる?この国の王妃様だって小型獣人なんだよ?」


「え?そ、そうなの?」


「うん!でも王妃様は国王様にいっぱい愛されてる!!だから……小型獣人だからしょうがないって諦めないで……君は凄く綺麗だから、きっと君自身を理解してくれる人が沢山出来るよ!!」


「そう……かな?」


「うん!絶対!!俺が保証する!……だから先ずは、俺と友達になろう?そんで小型獣人同士、助け合えたらいいなって……思ってるん、だけど……」



……あれ?俺ってばお節介過ぎたかな?
でもでも!友達になりたかったんだし……。


勢いで言ったことを後になって後悔して、最後は自信なさげに声が小さくなってしまった俺は、兎獣人君から視線を逸らす。



「……ぷっ、くふふふ」


「え!?な、なんで笑うの!?」


「あ、ごめんなさい…貴方を見ていると元気が出て、つい」



口元を押さえて笑う姿はやっぱり綺麗で可愛くて、俺はその兎獣人君に見とれてしまった。

そんな俺の両手を兎獣人君がキュッと両手で包み込む。



「ありがとう。その、僕で良かったら是非友達にしてください!」



「……っっ!!」



ニッコリと笑った兎獣人君の表情は清々しく晴れていて、俺もニカッと笑う。



「俺はリツ!よろしくな!!」


「リツ君!僕の名前はミロット……よろしくね」





学園での初めての友達……ミロット。
これからも小型獣人である俺達が揶揄われる事はあるだろう……でも、これからミロットと一緒に楽しい学園生活を送れると思うと、ワクワクが止まらなかった。




「そう言えば、入学式の時も目が合ったよね?」


「あ、覚えててくれたのか!!」


「もちろん!リツ君みたいな綺麗で可愛い子、僕今まで見たこと無かったから、あの時驚いて見とれちゃってたんだよね」


ミロットの何気なく言ったその言葉に俺は目を見開く。



「俺も、ミロットの事綺麗だなって見とれてた」


「え……そう、なの?」



俺達はお互いを見つめてーーーーー「ぷっ!!」と吹き出した。



「あはははっ!俺達似たもの同士かもな!!」


「ふふふ、そうだねきっとそう!」





キーンコーンカーンコーン



2人で体術館倉庫で笑い合っていると、予鈴が鳴り響く。



「やばっ!授業始まっちゃう、早く行こう!!」


「そうだね、初日から2人揃って遅刻は避けないと」


「だな……よぉーし!ミロット!ダッシュだぁ!!」


「ちょ、ちょっと待ってリツ君!!!」



俺達は勢いよく体術館倉庫から出ると、教室まで全力疾走で向かったのだった。
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