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17さい
105話 綺麗な兎獣人
しおりを挟む「はぁー、疲れた……」
朝から深い溜息を吐く俺……。
つい先程ラディ達と別れた俺は、疲弊した身体で壁に手を付き1人で自分のクラスへ向かっている途中であった。
俺の学園生活初めての優雅な朝食は、ラディやアルベール殿下そしてライオネルやルータのイケメン集団に群がる生徒達によって壊されたのだった。
普段は比較的静かと言われていた食堂が大騒ぎになった事により、生活指導の先生である騎士科の先生まで来てしまって想像していた優雅な朝食とは程遠い朝食時間を味わったのだった……。
それからラディは俺を文学魔法科の校舎まで送ってくれたんだけど、別れる際に「本当に大丈夫?」「1人で怖くない?」何て言って全然離してくれないし、文学科の生徒達はそんなラディを見てまた声を上げて取り巻くしで……本当に大変だったのだ。
騎士科と文学科は校舎こそ別だが、渡り廊下で繋がっているためいつでも行き来可能だ。
だから、そんなに心配する事はないし俺だって1人になって不安がる事無い……。
でもライオネルやルータも騎士科だし、文学科で俺の知り合いと言ったらアルベール殿下しか居ない。
アルベール殿下に頼ったらそれこそ後で何言われるか分かったもんじゃないし、そもそも2人でいるのは気まずい。
……ラディにも何されるか想像できるし……。
だから!!だから俺は!!!
一刻も早く友達を作るのだ!!!
そうしたらきっと、この寂しさも……不安も……拭える筈だし、楽しい学園ライフを送れるはずだから!!!
俺は両腕を上げて気合いを新たにふんっ!と息を吐く。
そんな時だったーーーー。
「おい!お前今俺の事見てたろ!!その気持ちわりぃ目で見んじゃねぇよ!!!」
「小型獣人の癖して俺達人間様に楯突くんじゃねぇよ!!」
「や、やめてくださいっ!いたいっっ」
微かだがそんな声が聞こえて俺の耳はピクピクと動く。
……なんだ?
俺は咄嗟に声の聞こえる方向を振り向く。
耳のいい俺にだって微かに聞こえる程度だから、きっとここから少し距離が離れているだろう。
でも助けを必要とする声が聞こえた……。
ーーーーそれに、小型獣人の癖にって聞こえた。
俺達小型獣人を馬鹿にする声が……。
……ぜってぇ、許さねぇ……。
俺は握りしめた拳を震わせ、声の方へと走り出したのだった。
。。。。。。。。
「や、やだ…痛いっ!やめてください!!」
「うるせぇ!お前みたいな礼儀のなってないヤツには仕置が必要だよな」
「確か、小型獣人はセックスが大好きって聞いたことあるぜ!!」
そう言って気持ち悪い笑みを浮かべる2人の男子生徒は大きな手を伸ばす。
「や、やめ……やめて……」
「ーーーーーーーーーーーおい!!!!!何やってんだよ!!離れろっ!!!!!!」
少し離れた場所……体術館の倉庫を勢いよく開けると、そこには長身で体格もいい男子生徒2人と、入学式で目の合った綺麗な兎獣人君が居た。
男子生徒2人組が先輩である事は胸元のブローチの色で直ぐに分かった。
先輩は兎獣人君の耳を引っ張り、制服を脱がそうとしていた様で、その光景を見て一気に頭に血が上る。
「っっ!!……早くその手を離せよ!嫌がってるだろ!!!」
俺はすぐさま兎獣人君の耳を掴んでいる先輩の手を両手で掴み強く引っ張る。
でも、非力な俺がたった1人で掴みかかっただけでは相手はビクともしなかった。
……くそっ!俺だって毎日ボブと走り回ってたのに!!
今更ながらに華奢で非力な自分自身を悔やんで歯を食いしばる。
そんな時、掴みかかった先輩が俺へと顔を向けニヤリと笑い短く口笛を吹いた。
「ヒュー、もう1匹自分から犯されに来たぜ。流石は小型獣人、そういう事が好きなんだもんなぁ!!!」
がはははと笑う2人から少し距離をとると、しゃがみこみ震える兎獣人君の前に立ち目の前の2人をブロンドの瞳で睨みつける。
「ギャアギャアうるさい!!!ここから直ぐに出ていかないと俺が許さないからなぁっっ!!!」
明らかな体格差に身体が震える……。
でも、でもっ!!この子だけは絶対に守らないと。
俺は両手を広げる……兎獣人君を守るために……。
「へぇー威勢だけはいいんだな、俺そういう子見ると燃えるんだよねぇ。顔も可愛いし睨まれると尚興奮する」
「へへへ、許さなかたら……どうするんだぁ?そんなに大きな目うるうるさせてさ」
ねっとりとクソ気持ち悪い事を口にした目の前の2人組はゆっくりと近づいて来る。
怖い…でもここで泣いたら相手の思う壷だと身体に力を入れる。
ーーーーそして、俺へと手が伸ばされた……その時……。
「あれ、ちょっとまて」
2人組の先輩の内、1人がそう呟いて静止する。
ギュッと目を瞑っていた俺は、なかなか来ない衝撃にゆっくり目を開けると、先程呟いた先輩が俺の目の前でブルブルと身体を震わせていた。
「な、なあぁ……こいつ」
「な、なんだよ!!こいつになにかーーーーーーあっ」
もう1人の先輩も俺の顔をまじまじと見てから、次第に顔から血の気が引いたように青白くなり、悲鳴に似た声と共に身体をブルブルと震わす。
「こ、こいつって……うううううう噂の……」
「あ、ああそうだ……きっと……いやっ絶対っそうだぁ!!!」
ガチガチと歯音が鳴り、先輩達の額からは冷や汗がブワッと流れ出す。
俺達に乱暴しようとしていた人達だが、その変わり様に少しだけ心配になった俺は恐る恐る口を開く。
「あ、あの……だいーーーーーーーーーー」
「「すっ!すみませんでしたぁぁぁぁぁ!!!!!」」
俺が手を伸ばしかけた瞬間、先輩達は勢いよく体術館倉庫から出て行ってしまった。
その様子に呆気にとられる俺とーーーーー兎獣人君。
「な、なんだ?」
訳の分からない状況に俺と兎獣人君はコテンと首を傾げたのだった。
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