108 / 120
17さい
104話 朝ごはん
しおりを挟む「む……んん……ふわぁ……」
「おはよう、リツ……」
「むぅ……おはよーーーーーーーーって!なんでラディこっちで寝てるの!?」
寝起き開口一番の俺の驚きは広い部屋に響き渡った。
「なんでって、恋人同士なんだから一緒のベッドで寝るのは当たり前の事でしょ?」
「で、でも折角ベッドふたつあるのに……」
そう、アカデミーの学生寮は全て2人部屋……。
ベッドだって大きいのが2つあるにもかかわらず、目を開くと幸せそうな顔をして俺を見つめるラディと目が合って、寝ぼけた頭なんて直ぐに覚醒したのだった。
「リツは、僕と一緒に寝るの……嫌なの?」
……あーまた出たよこれ。
最近ラディがことある事に使う手口である『〇〇するの嫌?』攻撃……。
タチが悪いのは、これを使う時のラディの表情。
捨てられた犬の様な寂しそうな……でも目が奪われる程綺麗なその表情に俺が勝てるわけなくて……嫌だなんて言える筈もないのだ。
……まぁ、実際嫌じゃないし……寧ろ……。
「い、嫌じゃない……けどーーーーーーーーっむぅ!!!」
頬を染め目を逸らしてそう呟く俺の顎を掬って、ラディは唇を合わせる。
何回か角度を変えて口付けして……最後は音を立てて軽く触れ合うキスをする……。
昔から変わらない朝のルーティンを、どんな時でも確実にこなす目の前のイケメンは俺と視線が絡むと美しく微笑んだ。
それに胸が高鳴る反面……少しだけ憎たらしくも感じた、アカデミー入学2日目の俺なのであった…。
「さぁリツ、起きたなら顔洗って支度しようか……お腹すいたでしょ?」
「ふぇ?……う、うん……」
首を傾げた俺は直ぐに支度を終わらせて、ラディと共に部屋を出たのだった。
「わぁぁぁ!!!」
広い広い学生寮の食堂はどこもかしかも美しく、貴族のダイニングルーム程ではないにしても、前世の学校にある食堂とは似ても似つかない程に煌びやかであった。
横に長いテーブルには間隔を開けてふかふかの椅子が並べられていたり、2人用の丸いテーブルや複数人用の大きめなテーブルにはソファが設置させれいたりとどこを見ても目新しく、俺は目を輝かせた。
……そして……なんと言っても、このいい匂い!!!!
その匂いを吸い読むと俺のお腹がギュルルルと鳴り始める。
「リツ、ここは学生寮の食堂だよ……基本は朝と夜ここで食事をとる。昼は学園にある食堂を使う者が多いけど、食堂には行かずに全て寮にあるキッチンで自炊する者もいるから絶対というわけじゃない……材料はこの近くにあるマーケットで買う事になっているから、明日あたりにそこも案内するよ」
そんなラディの簡単な説明にコクコクと頷き、俺は食堂のメニュー欄を眺める。
やっぱりこの世界の主食はパンの様で、朝食メニューの殆どにパンが付けられている。
……俺としてはやっぱり朝は白米を食べたいと言う気持ちがあるから、学園生活に慣れたら自炊もしていこうと心に決めたのだった。
「う~ん、あ!俺サンドイッチにする!!」
「え?リツそれでいいの?パンケーキとかスコーンとか甘いものもあるけど?」
甘い物好きの俺にラディが驚いた表情でそう聞く。
そんなラディに笑みを向け俺はキュッとラディの制服の袖を握った。
「だって、サンドイッチはラディが俺に初めてくれた食べ物だからさ!なんだか見たら懐かしくって」
「……っっ!!リツ……」
俺のその言葉に一瞬ラディの瞳が潤んだ気がした……でもラディはそれからテキパキと配膳をして俺の分の朝食まで持ってきてくれたのだ。
そんな手際の良い様子はいつものラディと何ら変わりなくて、俺の見間違いだったのかと苦笑したのだった。
「おっ、リツと兄さん!おはよう!!」
「おはようございます」
俺とラディが近くにある2人用席にご飯の乗ったトレーを聞きなれた声が聞こえて振り返る。
「ラオとルータ!!おはよう、よく眠れた?」
ライオネルとルータは朝食の乗ったトレーを手に俺達の前で足を止める。
「眠れた眠れた!学生寮のベッドが想像以上にふかふかで驚いたよ。この間泊まった騎士寮のベッドとは大違いだ」
そう言って笑うライオネルのそばで、ルータは真面目に先輩であるラディへ挨拶をしていた。
少しだけ不機嫌な表情をしているラディを無視して、俺達は複数人用の大きな席へと移動してフカフカなソファに腰を下ろす。
「あーお腹すいたぁ!!じゃあ、いただきまーす!!」
俺は大好きなご飯を目の前にウキウキしながら手を合わせて元気に挨拶すると、サンドイッチを手に取り小さな口を大きく開いたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー瞬間……。
「おはよう、みんな」
俺達の目の前にはアルベール殿下。
そして、その存在を目に入れた瞬間……耳に響く甲高い声が食堂を包んだ。
「きゃぁぁ!!アルベール様おはようございます!!」
「わぁ!珍しくラディアス様もおられる!」
「ラディアス様の弟君であるライオネル様もですわ!」
「ご一緒に居られる方もすごくハンサムで素敵……」
「ぼ、僕達もご一緒してもよろしいでしょうか!」
いつの間にか俺達の周りには、頬を赤く染めた様々な男女の生徒達に囲まれていたのだった。
……な、なんだこれ!!!!!
俺はその衝撃的な光景に驚いて、持っていたサンドイッチをポロッとお皿に落としたのだった。
11
お気に入りに追加
2,464
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる