リス獣人の溺愛物語

天羽

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15さい

91話 ライオネルの気持ち

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発情期のピークは5日前のだったらしく、次の日からは何ともなく過ごし、満月の日はちょっと熱っぽくなっただけで終わった。

獣人の発情期って満月の日にピッタリ来るのかと思っていたけど……実際はそうでもなかったみたいだ。



「リツは発情期が来たばっかりだし、平均よりも少し始まるのが早かったからきっとそういう事もあるんだよ」



ラディはアカデミーの制服に着替えながら俺にそう言った。
5日前のあの日から毎日欠かさず俺の元へ来てくれていたラディ。
俺は最初の発情の熱が鎮まった時にもう大丈夫だって伝えたんだけど、心配だからって言って直ぐに拒否されてしまったのだ。

まぁ、この5日間毎日ラディと一緒に寝れて、ラディの匂いと温もりを感じられて俺は嬉しかったけど……きっとラディは魔力を沢山使って疲れているよね……?


「リーツ」


「え?な、なに……?」


いきなり名前を呼ばれて顔を上げるとベッドに腰掛けたラディが至近距離にいて驚き、俺の小さなリスの耳がピンと立ち上がる。


「リツって本当に顔に出やすいよね?」


そう言って俺の頬をスルリと撫でるラディはクスクスと笑う。


「心配しなくても移動魔法を使ったくらいじゃ何ともないから、そんな顔しないで」


「で、でも……あれは魔力沢山使うって……」


「うん、そうだね。でも僕の魔力量はかなり多いみたいで、それこそ5回や10回連続で使ったくらいでどうこうなったりしないから……」


その俺を気遣う様な優しい言葉に、身体の力が抜けていく。


「ほ、本当に?無理……してない?」


「うん、してない。だからこれからも遠慮なく呼ぶんだよ。発情期じゃ無くても寂しい時だって呼んで……勿論僕だってリツに会いに行くから……ね?」


「……っ…うん、うん!……ラディ…大好き」


「ふっ…可愛い……僕もだよ、リツ」



優しい瞳と目が合って、吸い寄せられる様に顔が近付いて行く……。

軽くキスをして、見つめ合って、笑い合うと……食む様なキスを何度も繰り返して、また見つめ合って、ギュッと温もりを感じる様に抱きしめ合った。



「また来るからね……」


「うん、待ってるからな!」



そうしてもう一度軽くキスをすると、ラディは転移魔法を唱えて学園寮へ戻って行ったのだった。







。。。。。。。。。




ラディを見送った後、この5日間食欲が落ちていたせいもあってお腹の悲鳴を耳にした俺は、着替えをして部屋を出る。



「あ、ラオ……」



部屋のドアを開けると、俺の事を待っていたのか……向かいの壁に背を預けしゃがみこんでいるライオネルと目が合い、5日前の事もあって少し気まずい雰囲気が2人を包み込んだ。

ーーでもこのままではダメだ……。
あの時は余裕が無くて、理性を保つのに精一杯だったかもしれない……でもだからって俺を心配して来てくれたラオを傷付けていい理由にはならない。



俺はすぅと息を吸い込むとラオに向き直り口を開く。



「あの!ラオーーーーーーーーーーーーー」


「ーーーリツ!ごめん!!!!!!!!」


「……え?」



許してもらえないかもしれない……そう思って覚悟を決めて謝ろうとした瞬間、先にライオネルに謝られてしまうという想定外の事が起きてしまい、その状況に俺は大きく目を見開く。

開いた口をそのままに硬直する俺に向かってラオは直角に腰を曲げて、苦悶の表情で言葉を続けたーー。



「リツ苦しくて辛かった筈なのに……俺、獣人の事も発情期の事も何も知らないで、その場の感情に流されて後先考ず発情期のリツに近付いた……」


「で、でもそれは俺を心配してくれたからでーーーーーー」


「違うんだ」


ラオの苦しむ様な声に俺は動揺する。
でも、それでもライオネルの瞳は覚悟を決めたかの様にしっかりと俺を見据えていた。
 


「リツ……俺はリツが好きだった……恋愛的な意味で」



真剣な目付きで告げるラオの言葉にーーーー瞬間、俺の思考が停止する。



「ーーーーえ?…えと……ラオ…ど、どう言う……」




ーーーーラオが俺を好き?


思ってもみなかった言葉に……驚きを隠せなかった。
もちろん俺だってラオが好きだけど、それは兄弟に感じる親愛の様なもので恋とか愛の類ではなかった。



「俺はずっと、リツの一番になりたかった…兄さんに向ける表情を俺に向けて欲しかった。
でもリツの一番はずっと兄さんで、俺に勝ち目が無い事なんて初めから分かってたんだ……」


俺に向かってそう強く吐き出すと……それからライオネルはポツポツと静かに話し始めたのだった。


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