リス獣人の溺愛物語

天羽

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15さい

84話 やってみたい事

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ラディが王都へ行ってーーーー3日が経った。






「あーあ、ラディどうしてるかなぁ」

「ワフーン……」



今日の授業が終わり、只今俺は庭のベンチでボブと空を見上げていた。






「おいリツ、お前こんな所で何サボってんだよ」


「んぉ?ヘレス……今日はもうやること終わったんだよ!今は休憩中なの~」


俺の頭をコツンと優しく叩くヘレスに俺は言い返し、そしてまた空を見上げる。




「休憩中って……どうせお前、ラディアス様は今どうしているだろうーーーーーとかって考えてんだろ?」



「え!!!なんで分かったの!?!?」


俺の考えを見抜いたヘレスに驚き、勢いよく振り向く。


「バーカ、何年一緒にいると思ってんだよ。もう10年だぞ!お前直ぐ顔に出るし、考えてる事なんて全部お見通しなんだよ!」


呆れた口調で言うと、ヘレスは俺の額をツンと突く。



「む……俺そんなに分かりやすいかな?」


「ああ、な!!」


「えぇ、そんなことないと思ーーーーーーーって!ヘレス!ここどうしたの!?血出てるじゃん!!」



俺はすぐさまベンチから立ち上がりヘレスの手を取る。



「あぁ、さっき花の刺で切ったんだよ……こんくらいなんでもねぇから」


「ダメ!!血垂れてるし、放っておいてもっと酷くなったらどうすんだよ!手当してあげるがらここ座って!ほら!!!」


「ちょ……分かったらから押すなって!」


俺はグイグイとヘレスの背中を押し俺が座っていた場所に無理やり座らせる。


「大丈夫、すぐ終わるから……じっとしてて」


そう言ってヘレスの傷口に自身の手を重ねる。





……魔力を集中させて……。





瞬間、ふわっと白い光がヘレスの手を包み込んでいく。
何回も練習して、実習もして頑張ってきた俺の成果。
既にこのくらいの傷なら一瞬で治せる様になった俺は、光が消えるとゆっくり手を離した。


「おぉ~!相変わらず凄いな、お前の魔法は!」


ヘレスは綺麗さっぱり塞がった自身の手を見つめ二カッと笑みを見せる。


「ふふん!まぁね!!俺だってちゃんと頑張ってるもん!ーーーーーーーーーってそんな事より!怪我したんなら直ぐ俺に言ってよ!」


「だからこんな傷大した事じゃないって~、リツは大げさーーーーーーーーーーー」


「へ・レ・ス!!!!」


「あ~はいはい分かりました!すみませんでした!」


俺の気迫に両手を挙げて降参するヘレス。


……確かにヘレスの言う事も分かる。
小さな傷にも過剰に反応してしまう様になったのは、5年前……ラディに深い傷を負わせてしまった時からで、大袈裟だって言われるのも分かる……。

でも俺はもう誰にも傷ついて欲しくないし、怪我をしたら直ぐに治してあげたい。

……それは、俺にしか出来ない事だから。



「……ツーーーーリツ!!!」



「はっ!……え?な、なに?」


「はぁ、お前はまた……そんな深く考えんなって!別に気にする事は悪いことじゃねぇんだし、俺も大袈裟だって言って悪かった。今度からはちゃんとリツに言うから」


ヘレスはそう言って俺の頭をワシャワシャと撫でる。



「うん、ヘレス……ありがとな!!!!」



「お、おう……」


その気持ちが嬉しくて笑みを向けると、少しだけ頬を赤く染めたヘレスがコクコクと頷いた。





。。。。。。。





「それにしても……リツはなんかやりたい事ないの?」



「ん?やりたいこと?」


俺はヘレスの隣に腰掛けるとボブを撫でながら首を傾げる。


「そーそー、毎日勉強勉強勉強でお前疲れないの?たまには自分のやってみたい事やったって誰も文句言わねーよ」


「俺の……やってみたい事……」


確かに……獣人化が遅かった俺は学ぶことも沢山あって、そんな事を考える余裕も無かった。
授業の合間で庭園には来ていたけど、それは気分転換のためで、やりたい事……とはまた違う気がする。


前世ではどうだっただろう……。
深く覚えているわけでは無いけど、サッカーとかバスケとかドッジボールとか……身体を動かす事が好きで、よく友達とやってた気がする。

でも今の俺はリス獣人なわけで……この身体は獣人のくせして運動には向いていないらしく、正直認めたくは無いけど……足は短いしすぐバテるし、そもそも身体を激しく動かす気になれないんだよね……。



……俺のやりたいこと…やりたい……こと。




「あ……料理」



「ん?なんて言った?」



「だから、料理!!俺、料理してみたい!!!」



俺は目を輝かせてヘレスを見上げる。

ここの料理は本っ当に凄く美味しいんだけど、洋食が多いから……たまには和食を食べたくなるのが本音だ。

前世からあまり料理の経験は無いけど、沢山作って腕を磨けば俺の大好きなメニューであるあれやこれやが食べたい時に食べれるわけで……。

それに、好きな相手を振り向かせるにはって言うし……。
俺の作った料理をラディに食べて欲しい。

美味しいって笑って、褒めて欲しい……。



「よぉーっし!!!そうと決まれば行動あるのみ!!!ヘレス、俺ガオルグさんとこ行ってくるから!」



「おいっ!リツ!!ーーーーーはぁ、全く……忙しいやつ」




……待ってろよ!美味しい和食作って……そんでもって、ラディの胃袋をガッシリ掴んでやる!!!



俺はヘレスの声を背にガオルグさんのいる厨房へと走った。






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